悪質な身元保証や財産管理の事業者にご注意を!
2023年9月4日付朝日新聞の一面記事に『身寄りのない高齢者 身元保証トラブル』との見出しがありました。
身寄りのない高齢者(※)、いわゆる高齢の“お一人様”の増加に伴い、入院・入所時の身元保証を引き受ける民間事業者のサービスにおいて、トラブルが相次いでいるとのことです。
※「身寄りのない高齢者」とは、独身の方やお子さんのいない夫婦で配偶者を亡くした方など、純粋に家族・親族がいない方はもちろんのこと、家族や親族はいるが疎遠になっていて、頼れる身内がいない方も含まれます。
身寄りのない高齢者(※)、いわゆる高齢の“お一人様”の増加に伴い、入院・入所時の身元保証を引き受ける民間事業者のサービスにおいて、トラブルが相次いでいるとのことです。
※「身寄りのない高齢者」とは、独身の方やお子さんのいない夫婦で配偶者を亡くした方など、純粋に家族・親族がいない方はもちろんのこと、家族や親族はいるが疎遠になっていて、頼れる身内がいない方も含まれます。
トラブルが多発しているのは、身元保証に関するサービスだけではなく、老後の財産管理や死後の葬儀・納骨などの手続きを代行するサービスにおいても同様のようです。
利用する側である身寄りのない高齢者からみて、悪質な事業者を見極めることは難しく、また、本人の判断能力が低下してくれば、悪質なサービスであること自体が発覚しない可能性もあります。
つまり、悪質な業者とのトラブルをどのように未然に防ぐかは、非常に悩ましい問題といえます。
一般論としては、信頼できる方からのご紹介が安心ですが、必ずしも大手企業と業務提携をしている事業者だから安心できるという訳でもないですし、悪質業者を取り締まったり優良業者を認定するような業界の仕組みも存在しないので、その点も問題を複雑にしています。
本稿では、身寄りのない高齢者がこの先も安心して暮すために取り得る施策をご紹介すると共に、各施策についての問題点・注意点をご紹介したいと思います。
身寄りのない高齢者が老後とその先の相続を考え、老い支度をする場合に、法的な手段として考えられる施策は、下記のものです。
(1)見守り契約
(2)財産管理委任契約(管理委託契約、任意代理契約、金銭管理契約、金銭預託契約)
(3)任意後見契約
(4)死後事務委任契約
(5)身元保証契約
(6)家賃保証契約
(7)遺言
「(1)見守り契約」とは、毎月1回など定期的に、電話をしたり自宅訪問をしたりして、高齢者が自宅で元気に独居生活ができているかを第三者(法律専門職や民間事業者)が定期的にチェックする(見守る)サービスの契約です。
「(2)財産管理委任契約」は、本人に代わって、不動産や金銭の管理を行うサービスの契約です。賃貸不動産や空き家については、不動産業者に管理委託契約を交わして管理を任せるケースは少なくありません。金銭については、任意代理契約や金銭管理契約、金銭預託契約といった名称の契約を交わすケースがあります。本人名義の預貯金口座は、本人の判断能力が低下すると下ろせなくなるリスクがありますので、あらかじめ金銭を第三者に預けて預金凍結対策を図りつつ、将来想定される各種の支払いをあらかじめ依頼しておくものです。
「(3)任意後見契約」は、本人が元気なうちに信頼できる後見人候補者(「任意後見受任者」といいます。法律専門職が多いですが理論上はNPOや民間事業者も可能。)との間で将来の後見人就任を契約でお願いをしておくものです。本人の判断能力が低下した後、必要なタイミングで家庭裁判所の手続きをすることにより、受任者が正式に任意後見人として本人の財産管理や法律行為の代理、身上保護に関する権限を行使することができます。
「(4)死後事務委任契約」とは、家族・親族に代わって、葬儀・火葬・納骨・永代供養を執り行ったり、親友等に訃報の連絡などを第三者に依頼しておくものです。
「(5)身元保証契約」とは、入院や介護施設への入居手続きに際して求められる身元引受人を引き受ける契約です。本来は、家族・親族が身元引受人として転院・退院・退所に伴う手続きを行いますが、家族・親族に代わって民間事業者が身元引受人の立場を担うものです。
「(6)家賃保証契約」とは、賃貸アパートの新規入居や契約更新にあたり、入居者が家賃を滞納した際に入居者に代わって家賃を立替払いする連帯保証人の立場を民間事業者にお願いする契約です。
「(7)遺言」は、自分の死後、自分の財産を誰にどのように遺すかを指定するものです。遺言内容を実現する業務を担う遺言執行者を遺言書の中で指定しておくのが一般的です。
(1)見守り契約
見守り契約と言っても、その目的・役割は大きく2つに分かれるといえます。
一つ目は、任意後見契約を適切なタイミングで発動できるように、定期的に本人の健康状態・判断能力の有無をチェックするという目的です。主に認知症が発症・進行して健康面・衛生面・財産管理等に支障が出ないかをチェックするという役割を果たします。つまり、この目的で締結する見守り契約は、任意後見契約とセットで行うことが多いです。
二つ目は、独居で生活する高齢者が、居室内で倒れて発見が遅れるようなリスクに備える目的です。直接的な生命の危機に対処できるような備えの役割です。
後者の目的で見守り契約を締結する場合、毎月1回から数回程度の見守りで適時適切な対応に繋げられるかどうかは疑わしい問題となります。本人の生命の危機にしっかりと対処することを考えますと、人感センサーをトイレ等に設置して、24時間365日の異常事態に対応できる警備会社等の見守りサービスも選択肢に入れるべきかもしれません。
(2)財産管理委任契約(管理委託契約、任意代理契約、金銭管理契約、金銭預託契約)
不動産の管理委託契約を締結しても、賃借人とのトラブル対応(家賃滞納などに対する法的手段の実行)については、不動産所有者でないと対応できないことが多いです。管理委託契約で何ができて何ができないのか、そのための委託報酬(費用対効果)は適正かどうかを検証することも必要です。
金銭管理についての契約においては、適切な支出、適切な管理がなされているかは本人がチェックすることになります。本人がチェックできないような健康状態になれば、本来は速やかに任意後見に移行した上で金銭管理の契約を終了する必要があります。この点において、悪質な業者ですと、本人の判断能力が低下しているのを把握しておきながら、意図的に任意後見を発動させずに敢えてこの金銭管理の契約を継続させ、チェック機能の働かないブラックボックスの中でずさんな金銭管理(使途不明な支出や金銭の流用など)を実行するケースがあると聞きます。
(3)任意後見契約
前述のとおり、本人の判断能力の低下を受け、必要なタイミングで家庭裁判所に申立てをして、任意後見を発動させることになります。
独居生活している方は、任意後見の発動時期を見誤らないように、見守り契約とセットで契約することが多いです。また、もし体調不良・判断能力の低下など本人に生じた異常を介護ヘルパーやお友達が気付いた場合に、その方からスムーズに任意後見受任者に連絡が入るような仕組み作りは必須です。
(4)死後事務委任契約
納骨については、死後事務を担う第三者が存在していても、祭祀・墓地使用権を引き継ぐ親族(承継者)がいない場合には、納骨を拒むお寺・墓地があります。したがいまして、あらかじめ死後事務の受任者が納骨・永代供養の手続きをすることが可能かどうかを確認しておくことは重要です。
なお、死後事務委任契約に基づく報酬や実費の支払については、本来は遺産の中から、実際に仕事をした後において、遺言執行業務の中で支払い・精算をすべきと言えます。将来の死後事務に関する報酬や実費を今から事業者が預かっておくという事業者も多いですが、その事業者の倒産リスクや持ち逃げリスクを考えると要注意です。
(5)身元保証契約
身元引受人となった民間事業者が適時適切な対応をしなければ、本人が希望する施設への入所・転所手続きができなくなる可能性がありますし、スムーズな入院・転院・退院の手続きが滞る可能性もあります。また、病院を転院したり施設を移転する度に、身元保証料を追加で支払わなければならなくなるリスクもあります。
任意後見契約を締結しないで、身元保証契約だけをするというケースは、将来のリスク対策としては不十分といえますので、お勧めできません。民間事業者と身元保証契約をする場合は、必ず任意後見とセットで検討すべきです。
なお、法律専門職である小職は、任意後見契約を締結して任意後見受任者となった場合、任意後見を発動する前に身元引受人のニーズが発生した際には、別途身元保証契約を締結しなくても、任意後見受任者の立場で身元引受人になっております。つまり、後見人業務に精通した適切な法律専門職との間で任意後見契約を締結しておけば、民間事業者との間での身元保証契約を締結する必要はありませんので、身元保証契約の費用を節約することができます。
反対に、NPOや民間業者との間で任意後見契約を締結したとしても、任意後見を発動させる前であれば身元引受人になることはありませんので、必要に応じて別途身元保証契約を締結する必要があります。その場合は、身元保証に関する費用も発生してしまいますので、注意が必要です。
(6)家賃保証契約
家賃保証契約は、不動産オーナーの立場では、家賃を滞納しても、家賃保証会社が代わりに払ってくれるので、家賃収入を確保できるという安心感はあります。
ただし、賃借人の立場では、家賃保証会社から立替金の支払いの請求をされますので、結局家賃の支払義務を逃れることはできません。場合によっては、家賃保証会社から執拗な督促状が届いたり、家賃保証会社との間で訴訟トラブルに発展する可能性もあります。
(7)遺言
遺言執行者は、理論上、個人・法人が誰でもなることができます。したがって、信託銀行等の金融機関は、金融機関自らが遺言執行者に就任するという「遺言信託サービス」を積極的に営業しております。
しかし、金融機関が遺言書の作成サポートをしたり遺言執行者に就任する場合、金融機関として遺言内容や執行業務に制約を受けること(遺留分に抵触する遺言書を作成することは許されないという制約や相続人・受遺者全員が遺言執行者に金融機関が就任することについて同意しないと遺言執行業務に着手しないことがあり得る、など)はあまり知られておりません。
信頼できる法律専門職(司法書士・弁護士・行政書士などの士業)を見つけることができれば、法律専門職に遺言執行者を任せる方が、制約などを受けずに希望どおりの遺言を作成し遺言内容を確実に実行(遺言執行)してもらえて安心であるといえます。
以上のように、身寄りのない高齢者が取るべき施策はいくつもありますし、それぞれに問題点・注意点が存在します。
これらを包括的に対応できる相談先を探すことは大変な作業かもしれませんが、セカンドオピニオンをもらう目的も含め、複数の法律専門職や民間事業者から話を聞いてみることも必要でしょう。
宮田総合法務事務所では、身寄りのない高齢者の老い支度のご相談を多数承っておりますので、本稿に関連する内容でご不明な点・ご不安な点・お困りな点等ございましたら、どうぞお気軽に弊所までお問合せ下さいませ。
利用する側である身寄りのない高齢者からみて、悪質な事業者を見極めることは難しく、また、本人の判断能力が低下してくれば、悪質なサービスであること自体が発覚しない可能性もあります。
つまり、悪質な業者とのトラブルをどのように未然に防ぐかは、非常に悩ましい問題といえます。
一般論としては、信頼できる方からのご紹介が安心ですが、必ずしも大手企業と業務提携をしている事業者だから安心できるという訳でもないですし、悪質業者を取り締まったり優良業者を認定するような業界の仕組みも存在しないので、その点も問題を複雑にしています。
本稿では、身寄りのない高齢者がこの先も安心して暮すために取り得る施策をご紹介すると共に、各施策についての問題点・注意点をご紹介したいと思います。
◆身寄りのない高齢者が取り得る代表的施策7つ
身寄りのない高齢者が老後とその先の相続を考え、老い支度をする場合に、法的な手段として考えられる施策は、下記のものです。
(1)見守り契約
(2)財産管理委任契約(管理委託契約、任意代理契約、金銭管理契約、金銭預託契約)
(3)任意後見契約
(4)死後事務委任契約
(5)身元保証契約
(6)家賃保証契約
(7)遺言
「(1)見守り契約」とは、毎月1回など定期的に、電話をしたり自宅訪問をしたりして、高齢者が自宅で元気に独居生活ができているかを第三者(法律専門職や民間事業者)が定期的にチェックする(見守る)サービスの契約です。
「(2)財産管理委任契約」は、本人に代わって、不動産や金銭の管理を行うサービスの契約です。賃貸不動産や空き家については、不動産業者に管理委託契約を交わして管理を任せるケースは少なくありません。金銭については、任意代理契約や金銭管理契約、金銭預託契約といった名称の契約を交わすケースがあります。本人名義の預貯金口座は、本人の判断能力が低下すると下ろせなくなるリスクがありますので、あらかじめ金銭を第三者に預けて預金凍結対策を図りつつ、将来想定される各種の支払いをあらかじめ依頼しておくものです。
「(3)任意後見契約」は、本人が元気なうちに信頼できる後見人候補者(「任意後見受任者」といいます。法律専門職が多いですが理論上はNPOや民間事業者も可能。)との間で将来の後見人就任を契約でお願いをしておくものです。本人の判断能力が低下した後、必要なタイミングで家庭裁判所の手続きをすることにより、受任者が正式に任意後見人として本人の財産管理や法律行為の代理、身上保護に関する権限を行使することができます。
「(4)死後事務委任契約」とは、家族・親族に代わって、葬儀・火葬・納骨・永代供養を執り行ったり、親友等に訃報の連絡などを第三者に依頼しておくものです。
「(5)身元保証契約」とは、入院や介護施設への入居手続きに際して求められる身元引受人を引き受ける契約です。本来は、家族・親族が身元引受人として転院・退院・退所に伴う手続きを行いますが、家族・親族に代わって民間事業者が身元引受人の立場を担うものです。
「(6)家賃保証契約」とは、賃貸アパートの新規入居や契約更新にあたり、入居者が家賃を滞納した際に入居者に代わって家賃を立替払いする連帯保証人の立場を民間事業者にお願いする契約です。
「(7)遺言」は、自分の死後、自分の財産を誰にどのように遺すかを指定するものです。遺言内容を実現する業務を担う遺言執行者を遺言書の中で指定しておくのが一般的です。
◆代表的施策7つに潜む注意点・リスクとは
下記に各契約を民間事業者に任せた場合の注意点・リスクをご紹介します。(1)見守り契約
見守り契約と言っても、その目的・役割は大きく2つに分かれるといえます。
一つ目は、任意後見契約を適切なタイミングで発動できるように、定期的に本人の健康状態・判断能力の有無をチェックするという目的です。主に認知症が発症・進行して健康面・衛生面・財産管理等に支障が出ないかをチェックするという役割を果たします。つまり、この目的で締結する見守り契約は、任意後見契約とセットで行うことが多いです。
二つ目は、独居で生活する高齢者が、居室内で倒れて発見が遅れるようなリスクに備える目的です。直接的な生命の危機に対処できるような備えの役割です。
後者の目的で見守り契約を締結する場合、毎月1回から数回程度の見守りで適時適切な対応に繋げられるかどうかは疑わしい問題となります。本人の生命の危機にしっかりと対処することを考えますと、人感センサーをトイレ等に設置して、24時間365日の異常事態に対応できる警備会社等の見守りサービスも選択肢に入れるべきかもしれません。
(2)財産管理委任契約(管理委託契約、任意代理契約、金銭管理契約、金銭預託契約)
不動産の管理委託契約を締結しても、賃借人とのトラブル対応(家賃滞納などに対する法的手段の実行)については、不動産所有者でないと対応できないことが多いです。管理委託契約で何ができて何ができないのか、そのための委託報酬(費用対効果)は適正かどうかを検証することも必要です。
金銭管理についての契約においては、適切な支出、適切な管理がなされているかは本人がチェックすることになります。本人がチェックできないような健康状態になれば、本来は速やかに任意後見に移行した上で金銭管理の契約を終了する必要があります。この点において、悪質な業者ですと、本人の判断能力が低下しているのを把握しておきながら、意図的に任意後見を発動させずに敢えてこの金銭管理の契約を継続させ、チェック機能の働かないブラックボックスの中でずさんな金銭管理(使途不明な支出や金銭の流用など)を実行するケースがあると聞きます。
(3)任意後見契約
前述のとおり、本人の判断能力の低下を受け、必要なタイミングで家庭裁判所に申立てをして、任意後見を発動させることになります。
独居生活している方は、任意後見の発動時期を見誤らないように、見守り契約とセットで契約することが多いです。また、もし体調不良・判断能力の低下など本人に生じた異常を介護ヘルパーやお友達が気付いた場合に、その方からスムーズに任意後見受任者に連絡が入るような仕組み作りは必須です。
(4)死後事務委任契約
納骨については、死後事務を担う第三者が存在していても、祭祀・墓地使用権を引き継ぐ親族(承継者)がいない場合には、納骨を拒むお寺・墓地があります。したがいまして、あらかじめ死後事務の受任者が納骨・永代供養の手続きをすることが可能かどうかを確認しておくことは重要です。
なお、死後事務委任契約に基づく報酬や実費の支払については、本来は遺産の中から、実際に仕事をした後において、遺言執行業務の中で支払い・精算をすべきと言えます。将来の死後事務に関する報酬や実費を今から事業者が預かっておくという事業者も多いですが、その事業者の倒産リスクや持ち逃げリスクを考えると要注意です。
(5)身元保証契約
身元引受人となった民間事業者が適時適切な対応をしなければ、本人が希望する施設への入所・転所手続きができなくなる可能性がありますし、スムーズな入院・転院・退院の手続きが滞る可能性もあります。また、病院を転院したり施設を移転する度に、身元保証料を追加で支払わなければならなくなるリスクもあります。
任意後見契約を締結しないで、身元保証契約だけをするというケースは、将来のリスク対策としては不十分といえますので、お勧めできません。民間事業者と身元保証契約をする場合は、必ず任意後見とセットで検討すべきです。
なお、法律専門職である小職は、任意後見契約を締結して任意後見受任者となった場合、任意後見を発動する前に身元引受人のニーズが発生した際には、別途身元保証契約を締結しなくても、任意後見受任者の立場で身元引受人になっております。つまり、後見人業務に精通した適切な法律専門職との間で任意後見契約を締結しておけば、民間事業者との間での身元保証契約を締結する必要はありませんので、身元保証契約の費用を節約することができます。
反対に、NPOや民間業者との間で任意後見契約を締結したとしても、任意後見を発動させる前であれば身元引受人になることはありませんので、必要に応じて別途身元保証契約を締結する必要があります。その場合は、身元保証に関する費用も発生してしまいますので、注意が必要です。
(6)家賃保証契約
家賃保証契約は、不動産オーナーの立場では、家賃を滞納しても、家賃保証会社が代わりに払ってくれるので、家賃収入を確保できるという安心感はあります。
ただし、賃借人の立場では、家賃保証会社から立替金の支払いの請求をされますので、結局家賃の支払義務を逃れることはできません。場合によっては、家賃保証会社から執拗な督促状が届いたり、家賃保証会社との間で訴訟トラブルに発展する可能性もあります。
(7)遺言
遺言執行者は、理論上、個人・法人が誰でもなることができます。したがって、信託銀行等の金融機関は、金融機関自らが遺言執行者に就任するという「遺言信託サービス」を積極的に営業しております。
しかし、金融機関が遺言書の作成サポートをしたり遺言執行者に就任する場合、金融機関として遺言内容や執行業務に制約を受けること(遺留分に抵触する遺言書を作成することは許されないという制約や相続人・受遺者全員が遺言執行者に金融機関が就任することについて同意しないと遺言執行業務に着手しないことがあり得る、など)はあまり知られておりません。
信頼できる法律専門職(司法書士・弁護士・行政書士などの士業)を見つけることができれば、法律専門職に遺言執行者を任せる方が、制約などを受けずに希望どおりの遺言を作成し遺言内容を確実に実行(遺言執行)してもらえて安心であるといえます。
以上のように、身寄りのない高齢者が取るべき施策はいくつもありますし、それぞれに問題点・注意点が存在します。
これらを包括的に対応できる相談先を探すことは大変な作業かもしれませんが、セカンドオピニオンをもらう目的も含め、複数の法律専門職や民間事業者から話を聞いてみることも必要でしょう。
宮田総合法務事務所では、身寄りのない高齢者の老い支度のご相談を多数承っておりますので、本稿に関連する内容でご不明な点・ご不安な点・お困りな点等ございましたら、どうぞお気軽に弊所までお問合せ下さいませ。