司法書士法人 宮田総合法務事務所

「第三者管理方式」がマンション管理を変える?

22.10.18
暮らし・人生にお役に立つ情報
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マンションの管理会社が理事会に代わってマンションを維持管理する「第三者管理方式」の導入が広がっている。
今後のマンション管理の在り方を変えるかもしれない、「第三者管理方式」についてご紹介する。

★ほとんどのマンションは「理事会方式」を採用


共同住宅であるマンションは、各居室はもちろん、エントランスホール・エレベーター・廊下・ベランダなどの共用部も含めて、適切に維持管理していくことが必要不可欠である。

一般的には、マンションには各区分所有者を構成員とする管理組合が存在し、その管理組合において選任された理事で構成する理事会が管理組合の運営(マンション全体の維持管理)を担う「理事会方式」を採用している。

「理事会方式」の場合、管理組合の理事長は、区分所有法上の「管理者」とされ、区分所有者全員の代表者として、建物及び敷地等の管理を実行する者とされる。実際に理事長が、マンション管理会社や工事施工会社に対して交渉・発注をすることになる。

「理事会方式」を採用するマンションにおいては、区分所有者の高齢化や役員のなり手不足など、管理組合の運営には様々な問題があり、理事や理事長の担い手確保が大きな課題となっているケースも多い。
理事の担い手不足の問題については、立候補制にすれば、一部の区分所有者が長期の独裁政権をしき、マンション管理を牛耳るリスクがある一方、自動的に理事の順番が回ってくる輪番制を採用すると、理事としての責任感や能力が不足した者が管理業務に携わることになり、適切な運営に支障が出ることもある。

★「第三者管理方式」とは

一方の「第三者管理方式」は、管理組合の運営を理事長に代わって、マンション管理会社やマンション管理士などの第三者に委ね、管理会社の社員やマンション管理士が理事長(管理者)としてマンションの維持管理に責任を負う形態。

この方式では、区分所有者による理事会運営方式とは異なり、マンション管理会社等の専門家が理事や理事長に就任し、マンション管理に長けた者がマンションの維持管理を担うというメリットの他、理事会の開催回数を削減したり、理事会そのものを廃止することで、理事の担い手不足の問題について根本的な解消につなげることも可能となる。

第三者の専門家としては、管理会社の社員やマンション管理士、弁護士、税理士、司法書士、建築士などが挙げられる。

組合総会の開催や修繕計画の策定、修繕積立金の管理、居住者への報告といった理事会のすべての業務を実質的に第三者が担うことになる。住民は第三者が適切に業務を進めているかを監督し、組合総会などで管理会社の提案に賛否を示すだけで済むので、各区分所有者の負担も軽減できる。

「第三者管理方式」は、もともと、マンション管理に無関心な購入者が多いリゾートマンションや投資用マンションの管理手法として活用されてきたが、近年は一般的な分譲マンションでも導入する物件が増えているそうだ。

共働き世帯が一般的になるなか、休日が活動の中心となる理事会業務を負担に感じる人は多く、マンション販売業者にとっても、理事が回ってくるという負担がない「第三者管理方式」は、売り文句の一つになるようだ。


★「第三者管理方式」が適していると思われるマンション

マンション管理において、「第三者管理方式」に移行することを検討する価値があるマンションは、下記に該当するような理事の担い手不足の問題が顕在化しているマンションや管理不全深刻化しているマンションといえる。

●区分所有者の高齢化が進んでいるマンション
●投資用物件としてのオーナーが多く、区分所有者が居住している戸数が少ないマンション
●理事の担い手が固定化され、一部の区分所有者が長期にわたり理事を担っているマンション
●管理組合が形骸化して、管理業務が停滞しているマンション

★「第三者管理方式」の導入は慎重に


とはいえ、「第三者管理方式」を採用すれば、必ず明るい未来が約束される訳ではない。

管理を委ねる第三者の選別に細心の注意を払わなければならないし、そのコストもしっかりと見極めなければならない。

また、この方式を導入するには、当然、管理規約の変更や総会決議も必要になる。

住民の高齢化や価値観の多様化などが進む今日において、煩雑な理事業務から解放されるというメリットがある一方で、維持管理への関心低下や第三者の管理業務に対する監視の目が行き届かなくなるリスクも存在するので、導入については慎重に検討する必要があると言える。