司法書士法人 宮田総合法務事務所

2018年に法制化された介護医療院とは? 従来との違いを解説!

21.11.30
業種別【医業】
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高齢者の生活を支えながら医療を提供する施設、『介護医療院』は、平成30年(2018年)に創設されました。
高齢になれば身体が弱るため、長期的な医療と介護の両方を必要とする人が多くなります。
したがって、日常的な医学管理から、終末期医療(ターミナルケア)といった医療機能と、生活施設としての機能を併せ持つ施設のニーズは、これからますます大きくなっていくでしょう。
今回は、今後数十年にわたる急激な高齢人口の増加に備え、新たに広がりつつある介護医療院について、基本的なポイントを解説します。
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これまでの療養病床との違いはなにか

これまでの療養病床は、医療保険の対象となる『療養型病院(医療療養型病床)』と、介護保険の対象となる『介護療養型医療施設(介護療養病床)』に分類されていました。

療養型病院(医療療養型病床)とは、長期に渡って医療処置が必要な患者を対象とした病床で、介護療養型医療施設(介護療養病床)は、医療よりも介護に重点が置かれた病床です

しかし、厚生労働省の調査によって、各療養病床には医療処置の必要性が高い患者と低い患者が混在していることがわかりました。
国家財政を圧迫している医療費や介護費、スタッフの人手不足などは年々深刻さを増しており、医療ケアの必要性が低い高齢者による療養型病院の利用が増えると、現場の負荷が増えることになりかねません。
そのため、『医療の必要性が高いか・低いか』ごとに患者を受け入れる施設を分け、適切に振り分けるために、新しい受け皿となる、介護医療院が創設されました。

医療処置の必要性が高い患者は医療療養型病床へ、医療処置の必要性が低く、介護の必要性が高い患者は介護医療院などの介護施設が受け入れることになったのです。

国は、この施策によって患者の状態に応じた適切な医療が提供でき、高齢者の長期入院によって圧迫されていた社会福祉費の財政負担を減らすことにもつながるとしています。

現在は介護療養病床から、介護医療院を含む介護施設への移行期間で、廃止の期限は2024年の3月です。


介護医療院における人員や設備等の基準

廃止される介護療養病床患者の受け皿には、『介護医療院Ⅰ型』『介護医療院Ⅱ型』『医療外付け型』の3種類があります。
それぞれの施設の特徴や人員配置要件について見ていきましょう。

介護医療院はⅠ型もⅡ型も、長期間にわたる介護が必要な患者を受け入れる施設ですが、Ⅰ型は重篤な身体疾患を有する患者や身体合併症を有する認知症高齢者を、Ⅱ型は比較的病状が安定している患者を受け入れるという違いがあります。

Ⅰ型が廃止された介護療養病床に相当し、Ⅱ型が在宅復帰を目指すための介護老人保健施設に相当する施設だと考えることができます。

Ⅰ型は入所者48人に対して1名の医師が必要で、Ⅱ型は入所者100人に対して1名の医師が必要になります。

医療外付け型は、住居スペースに医療機関が併設された施設で、比較的容体の安定している患者を想定しています。

さらに、介護医療院では面積や施設、設備の基準なども設けられおり、療養室は、入所者1人当たりの床面積が8平方メートル以上で、プライバシーが十分に守られる療養床を備えている必要があります。
食堂や浴室、レクリエーションルームなども必要で、長期療養に適した生活環境を提供するという目的が読み取れます。
その他の基準については、厚生労働省ホームページ内にある『介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準』で詳細を確認することができます。

この介護医療院は、創設以来、2020年時点で全国に562施設、35,005療養床にまで増えています。

介護医療院へは、介護療養病床からの移行のほかに、医療療養病床からの転換も可能です。
また、転換は法人が原則ですが、個人で営んでいる診療所であっても例外的に転換が認められています。

従来の病院や診療所の名称は引き継げますし、転換することで病院のニーズが高くなることも期待できますが、建物によっては大規模な改修が必要になる場合もあるでしょう。
転換を考えるのであれば、専門家などの意見も聞きながら十分な検討を重ねる必要があります。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。