司法書士法人 宮田総合法務事務所

新人が辞めない事業所作りのポイントとは

21.07.06
業種別【介護業】
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入社したばかりのスタッフに「話があります」と持ち掛けられると、もしかして退職の申し出ではないかと、内心びくっとしてしまう介護関連の経営者も多いのではないでしょうか。
介護事業所では、労働環境や条件が折り合わず、働き始めて間もない時期でも退職してしまうスタッフが多く、勤続してもらうことが一つの課題となっています。
今回は、スタッフに長く勤めてもらうための対策についてお伝えします。
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勤続してもらうことが課題

『三日・三月・三年』という言葉があります。
本来なら『3日我慢すれば3カ月は耐えられる。3カ月耐えられれば3年は頑張れる。3年耐えられれば一生頑張れる』という意味ですが、最近は新入社員が辞めたくなる時期という意味で使われるようになってしまいました。

介護労働安定センターの『介護労働実態調査(令和元年度)』では、介護事業所における1年間(2018年10月1日~2019年9月30日)の介護職員等の離職動向を調査しています。
該当期間の離職者を勤務年数別にみると、

●1年未満……37.8%
●1年以上3年未満……25.7%
●3年以上……36.5%

となっており、特に1年未満の離職率の高さには目を見張るものがあります。
また、労働者側に前職を辞めた理由を尋ねる調査では、『結婚・妊娠・出産・育児のため』(26.0%)の回答が最も多く、『職場の人間関係に問題があったため』(16.3%)、『将来の見込みが立たなかったため』(15.6%)、『収入が少なかったため』(12.3%)、『他に良い仕事・職場があったため』(11.5%)と続きます。

一方、事業所が早期離職防止や定着促進のために行った方策について聞くと、最も効果があったのが

●本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善……21.6%
●残業を少なくする、有給休暇をとりやすくする等の労働条件の改善……16.3%
●賃金水準の向上……10.7%
●職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化……7.2%

など、労働条件の改善が効果的だったという回答が目立ちます。
しかし、職員側が離職の理由としてあげている人間関係の問題に対し、事業所側では人間関係についての回答が少なかったため、対応が進んでいないか、対応をしても、効果が実感できていない可能性があるといえます。


定着率の高い事業所の新人指導とは

労働条件の改善は、もともと、労働条件だけに不満を持っていた労働者には効果がある対策です。
しかし、先ほどのアンケートでも『人間関係』の問題を指摘していた離職者が多かったことから、中長期的な視野に立って考えると、新人時代からコミュニケーションを強化し、職場になじんでいけるように指導していくことが、離職率の低下に近づくポイントになるかもしれません。

次にあげるのは、実際に定着率の高い会社が取り組んでいる、新人指導事例の一部です。
参考にしてみてはいかがでしょうか。
 
【定着率を高めるための対策例】
(1)内定時から新入社員時までのフォロー担当を決める
採用するだけではなく、採用後のフォローを行う制度を作る
(2)内定者研修を早い段階で実施する
早期にミスマッチを防止する
(3)積極的にジョブローテーション(人事異動やグループ異動)を実施する
色々な仕事をひととおり経験することで、全体が見えない不安を取り除く
(4)メンター制度を導入する
職場での相談できる相手(メンター)を任命することで、不安を取り除く
(5)チーム、部署ごとに目標を与え、達成を評価する
同じ目標を共有することで、仲間意識を作る
(6)目標達成時に、実際に表彰する
成功経験を与え、モチベーションアップに繋げる
(7)新入社員にアンケートを実施し、経営者・管理者が情報を共有する
新入社員が不安に感じていることや問題点を事前に把握する
(8)管理職の数を増やす
新入社員への目が届きやすい環境にし、新入社員の教育を充実させる
(9)時代にあわせて会社の取り組み方も変えていくように意識する
法改正、社会情勢、若者の意識などを考慮して、スタッフ全員が違和感なく仕事できるように環境を整備する
 
このように、労働条件の改善だけではなく、職場内の人間関係を円滑にするために上司・先輩とのコミュニケーションを活性化させる仕組みづくりや、将来の不安を取り除くための研修制度、評価制度を設けて、各人の努力と成果が報われるシステムを構築することが必要です。

新入社員の定着率を高めることは、介護事業所の基盤を固め、利用者へのサービス向上に繋がる重要なポイントとなります。
職員の求めていることを知り、対応していくことで、職員と共に事業所自体も成長することができるのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。