緊急事態宣言下の相続・認知症対策でのリスク・注意点とは?
(1)老親が入院・入所することによるリスク
今は元気で自宅で生活している老親が、判断能力の低下や大病により入院や入所を余儀なくされた場合、緊急事態宣言発令中は勿論のこと、コロナ禍においては、家族・親族であっても直接病院や施設に訪問しての面会ができないことが多分に想定されます。
そうなると、老親の認知症対策・相続(争族)対策をするための「家族会議」を開くことが現実的に難しくなります。
「家族会議」には、老親とそれを支える子世代だけではなく、法律専門職(場合によっては税務や不動産の専門職も)の同席もすべきと言えますので、家族ですら複数の者が一度に面会することを制限・禁止されている中で、家族以外の関係者が面会をすること・家族会議をすることは、非常に高いハードルになります。
「家族会議」ができないばかりか、入院・入所している老親は、信託契約公正証書や遺言公正証書の作成のために公証役場等に外出することもできなくなります。一方で、公証人が出張で病院や施設に来て公正証書を作成することも、家族以外の面会が制限・禁止されている状況では困難です。
つまり、今元気に自宅で生活している老親、あるいは自宅での生活がギリギリでそろそろ入所を検討している段階の老親については、入院・入所に至る前に、家族信託や遺言・生前贈与・生命保険の加入など、認知症対策・相続(争族)対策を検討・実行しておくことが最善の策と言えます。
(2)認知症・相続(争族)対策に時間がかかるリスク
前述の通り、老親の認知症対策・相続(争族)対策を検討・実行するためには、家族と専門職が一堂に会する「家族会議」を何度も開催をするのを理想とします。
平常時でも、働き盛り・子育て盛りの30~50歳代の子世代の日程を調整して、家族会議を開くのが難航することもある中で、緊急事態宣言下において、「家族会議」を何度も開催するためのスケジュール調整がより難航することがあり得ます。
もちろん、ZoomやSkype、LINEといったツールを使ったリモート会議も可能ですので、在宅勤務が多くなれば、かえって家族間の日程調整がしやすくなる可能性もありますので、このタイミングを好機ととらえられる方もいるかもしれません。
今後の社会情勢が読めない中で、家族で話し合いができるうちに、老親の体調・保有資産状況・月次の収支状況などを家族みんなが共通認識できる場(家族会議)を設けることはとても大切です。
(3)老親の認知症が進行するリスク
コロナ禍において、入院・入所中の老親の面会・外出が制限されたことにより、日々の刺激・楽しみが減り、認知機能が低下したという話は、枚挙にいとまがありません。
また、在宅介護の方でも、訪問介護・訪問看護の方が訪問を自粛するなどで、支障が出ているケースも頻出しています。
遺言も信託契約も生前贈与も含め、すべての認知症対策・相続対策は「法律行為」ですので、老親自身の判断能力が著しく低下又は喪失してしまえば法律行為をすることが不能になります。つまり、その時点でこれらの対策は“時間切れ”となり、計画はとん挫します。
やはり、対策の検討・実行は、まだ早いと思えるくらいのタイミングから始めるという、“初動”を早くすることはとても重要です。
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