家族信託の「受益者代理人」とは 年老いた受益者に代わって受託者に要望を伝える
家族信託では、受益者(親)に代わって受託者(子)に資産の管理運用や財産給付について指示できる「受益者代理人」を設置することができます。成年後見人のような強い権限を持つだけに、かえってトラブルを招かないよう設置の検討は慎重に進める必要がありそうです。宮田が執筆担当する『相続会議』のコラムで詳しく解説します。
元々は商事信託を想定した制度
信託法には、「受益者代理人」という制度が用意されています。
元々は、受益者が多数いる「商事信託」(信託銀行等が受託者として個人から金銭を預かり資産運用する信託の仕組み)で迅速かつ適切な意思決定が困難な場合に、信託契約書において受益者代理人を定め、意思決定権を集約することを想定したものです。
この代理人制度は、以下の通り家族信託においても活用の余地があります。
強力な権限を持つ、家族信託における「成年後見人」?
「受益者代理人」は、文字通り受益者に代わって権利を代理する立場の者ですので、判断能力の低下・喪失のおそれのある高齢の親世代が受益者になる家族信託においても、大いに活用可能な制度です。
ただし、受益者代理人は、受益者に関する一切の裁判上または裁判外の権限を有するうえに、受益者代理人がいる場合は原則として受益者自身がその権利を行使することができない(信託法139条4項)という、強力かつ排他的な権限を有することを認識する必要があります。
言うなれば、「成年後見人」と同じような立場であり、受益者そのもの(受益者の分身)の立場ということがいえます。