宮田総合法務事務所

信託財産の管理方法① 受託者と委託者の口座は明確に区分を

20.03.05
相続会議(朝日新聞)
家族信託のコンサルタントとして実績がある宮田浩志司法書士が、初めて家族信託を考える読者にも分かりやすく制度について解説します。今回からは、信託財産の管理方法について2回に分けてお伝えします。

管理は信託口口座が理想

家族信託の受託者には「分別管理義務」(信託法34条)があるため、受託者固有の財産と委託者から託された信託財産は、明確に分けて管理する必要があります。不動産であれば登記簿に受託者の名前が記載されるので、分別管理は明快です。しかし、お金となるとそう簡単ではありません。

もし、親から託された現金を受託者が普段使っている銀行口座に入金したら、親と子の資産が区別できなくなるうえ、場合によっては贈与や貸付、横領だと指摘されかねません。

現金は、手提げ金庫等に入れて現金出納帳で分別管理することも可能です。しかし、家族信託に基づく金銭管理は、親を看取るまでの長期にわたるケースも多くみられます。加えて、金額ベースで百万円単位、不動産の売却が絡めば数千万もの現金を管理することもあるため、手提げ金庫での管理は現実的ではありません。

最も堅実な管理は、金融機関に預貯金として預けておくことです。この場合、信託財産であることが分かる「信託口口座」で管理するのが理想です。この「信託口口座」とは、信託契約を根拠に、信託財産である金銭が預けられている口座であり、管理を担う受託者が印鑑を届け出ている口座になります。