“怪しい家族信託コンサルタント”を見分ける7つの質問
民間の資産コンサルティング会社などにも、お客様に不幸・不安をもたらしかねない“怪しい家族信託コンサルタント”(※)がはびこり始めた今日。
お客様からみて、どうやって“怪しい家族信託コンサルタント”に引っかからないようにするか、その見極め方の一助になるような7つの質問をご紹介いたします。
(※)「“怪しい家族信託コンサルタント”」とは、信託法・民法・不動産登記法・税法等の法的知識や家族信託・成年後見制度等の実務知識が乏しいのにもかかわらず、この分野に精通した専門職であることをお客様に誤認させ、お客様家族のニーズに合っていない家族信託の契約を組成して、その後のアフターフォローもせずに逃げてしまうような専門職を指しております。
個人のお客様は、是非参考になさり、下記1.~7.のいずれか1つでも、相談する専門職に質問を投げかけてみてください。
各質問についての解説で触れたようなコメントが返ってきたら、その方への正式な依頼は考え直した方が無難かもしれません。
家族信託は、一度実行したら安易に変更することは想定せずに何十年と継続する仕組みとなり得ますし、老親の体調次第で契約内容の変更・修正(家族信託の再設計)をすることができなくなるかもしれません。
「心臓の外科手術をどの医者に頼むのか」、というくらいの感覚で、慎重に選ぶべきだと考えます。
反対に、これをお読みになっている士業やコンサルタントなどの専門職の方々は、これらの質問を受けたときにどのように対処すべきかを知って頂き、下記に該当するような受け答えをしていたとすれば猛省をして頂きたいと思います。
そして、学び直すことの必要性を感じた専門職の方、まだまだ学びが足らないと思った専門職の方は、是非、一般社団法人家族信託普及協会の専門職向けの研修(家族信託専門士®研修・家族信託コーディネーター®研修)を受講されることをお勧めします。
なお、コンサルティング報酬は、専門職の対応レベルを逸脱した高額な報酬をとる者もいれば、逆に安価を謳い受注をもくろむ者もいるので、報酬の高い安いという問題ではありません。
1.「任意後見と家族信託は何が違うのですか?」
⇒『・・・』と説明に窮したり、あるいは要領を得ない返事が来たら要注意です。
この質問は、この業務を行っている専門職からすれば、イロハのイですので、この違いを端的に理論的に分かりやすくご説明できないと、老後の備えとしての話が始まりません。
2.「認知症になったら信託契約を発動するようにしたいのですが?」
⇒『分かりました。』という返事が来たら要注意です。
お客様のご要望を鵜呑みにして、「認知症になったら契約が発動する」という条件付き契約ができるという方は、恐らく家族信託の実務をやったことがない方でしょう。
実際のところ「認知症」と診断されても契約する能力がある方は沢山いらっしゃいますので、安易に「認知症になったら」「認知症と診断されたら」「判断能力が低下したら」というような曖昧な基準によって契約の効力発生日を定めることは、法律上避けなければなりません。
また、判断能力が低下・喪失してしまうと、そもそも信託登記手続きの依頼ができるのか、また、信託金銭となる預金を移動できるのかという実務上の大きな問題が多数生じます。
3.「信託の仕組みの中で受託者が暦年贈与できますか?」
⇒『受託者だけで贈与ができますよ。』という返事が来たら要注意です。
受託者が信託財産として管理している財産を受益者ではない方に給付すれば、それは「忠実義務違反」として法律上も税務上も問題になりかねません。
それができると公言してるとすれば、信託法の理念や信託の仕組み自体を正確に理解できていない可能性があります。
4.「家族信託をした後に親が認知症になったら、入所手続等に際して成年後見制度は使うべきですか?」
⇒『親の判断能力が低下・喪失したら後見制度を使い、後見人が身上監護権を行使しましょう。』という返事が来たら要注意です。
入院入所手続きは、子の身分(家族・親族であるという立場)で十分対応可能です。
家族内で介護方針について意見が割れていれば別ですが、そうでなければ、家族が成年後見人に就任して身上監護権を行使しなければならないということは、実務においてはあり得ません。
そもそもセーフティネットとして家族の負担が大きい成年後見制度を使わずに生涯を支えるために家族信託を実行するのですから、後見制度も使うべきという回答がもしあれば、家族信託だけでなく成年後見の実務的知識の欠如を疑いましょう。
5.「家族会議を開くべきという話を聞きましたが本当ですか?」
⇒『家族全員で話し合わなくてもいいので、一部の家族で対策を進めましょう。』という返事が来たら要注意です。
家族関係が崩壊している訳ではないのに、「親の財産なのだから、家族会議など開く必要は無く一部の親子間で勝手に進めましょう。」と言う専門職がいたら要注意です。
理想とすべきは、家族全員で老親の老後を支える仕組みを検討することであり、親側とそれを支える子世代の全員が安心できる長期的な財産管理・生活サポートの実行が最大の目的です。
その上で、老親の生涯を支えきった後に残った財産について、親の希望を踏まえ子側全員が納得できる円満円滑な資産承継のレールも敷くことができるのも家族信託のメリットです。
家族会議を前提としない家族信託は、その効果・メリットを十分に生かしきれず、“争族”を巻き起こしかねない中途半端な仕組みになってしまいます。
6.「今まで家族信託の実行件数は何件ですか?(あくまで担当者個人として)」
⇒信託契約公正証書の作成実績が10件以上なければ、セミナー講師や書籍の執筆等していても、家族信託の設計コンサルティングの実務経験が豊富とは言えません。
その点において、あたかも経験豊富であるかのような誤解を抱かせるホームページ等の見せ方や根拠のない自信を見せる専門職は要注意といえます。
なお、注意すべきは、家族信託の組成実績だけではなく、家族信託を取り巻く周辺業務の経験(成年後見人への就任実績や遺言等の相談・作成実績)もまた重要な要素であり、これらの複合的な知識・経験を駆使しなければ、的確なコンサルティングは難しいといえます。
それを踏まえ、まだ実務経験が豊富ではない専門職であれば、それを正直に明かした上で、「自分も精一杯勉強し知恵を尽くので一緒に最適なプランを構築しましょう」というプロフェッショナルとしての誠実な姿勢が大切だと考えます。
7.「家族信託についてどこで研鑽を積まれたり、最新の情報を入手しているのですか?」
⇒『家族信託の書籍は何冊も読んでますのでご安心下さい。』という返事が来たら要注意です。
書籍を数冊読んだ独学レベルでは、実務的に万全なコンサルティングをすることは難しいです。
書籍をいくら読み漁っても、実務的な知識は得らえませんし、そもそもコンサルティングスキル・提案力は身につきません。
家族信託の実務は、書籍やホームページに掲載されていない多岐にわたる分野の情報・知識を駆使しなければ本当の意味でお客様に最適なご提案はできません。
どこかの職能団体・研修会社の講義を有料でしっかり受講し、かつ継続的に最新情報を入手していることが専門職として必要な姿勢といえます。