宮田総合法務事務所

成年後見制度についての誤解をただす!

19.12.05
暮らし・人生にお役に立つ情報
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近年、成年後見制度に関する批判的な記事や声を見聞きすることが多いです。

「成年後見制度は使い勝手が悪い」
「親族が選任されず専門職後見人を勝手に就けられた」
「専門職後見人の報酬が高い」
「後見監督人への定期報告の負担が大きい」

など、実際に後見制度を利用されている方々が様々な場面でご苦労されている姿も目の当たりにしております。


確かに、横領事件はもちろんのこと、あり得ないような酷い対応(管理がずさん、横柄な言動、後見人業務を一切しない等)をする弁護士・司法書士等の職業後見人がいることも事実です。
しかし、「成年後見制度」自体を悪い仕組みと断罪すべきではありません。

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まず私たちは、「成年後見制度」について正しい認識を持たなければなりません。

「成年後見制度」は、判断能力が低下・喪失した方(以下、「本人」と言います。)が事前に万全の備えをしておかなかった場合に、 本人の財産や権利を守るために国が用意した最後の砦、社会保障としての「セーフティネット」であるということです。

(※「セーフティネット」とは、「安全網」と訳され、網の目のように救済策を張ることで、国民全体に対して安全や安心を 提供するための社会的仕組みのことを指しております。 )


「成年後見制度」が社会保障制度である以上、個々の家庭の事情・ニーズに即した使い勝手の良い制度であるはずがありません。

つまり、本人の財産と権利を守るという大義のため、国(家庭裁判所)から選任された成年後見人は、客観的立場から保守的に財産の維持・管理を主目的とせざるを得ないので、 家族・一族が望む積極的な資産運用や相続税対策ができないのは仕方のないことです。
また、国が用意した本人を守る仕組みである以上、成年後見人には、帳簿作成や定期報告の義務等が課せられるのも仕方がないというべきです。
なお、成年後見人を予め契約で頼んでおく「任意後見人制度」も、成年後見制度の一形態に過ぎないので、結局のところ、積極的な資産運用をすることや定期報告義務を緩和・免除できる訳ではありません。


結論として、私たちが理解しなければならにことは、「成年後見制度は、使うべき方と使うべきではない方がいる」ということです。

使うべきではない方がこの制度を使ってしまうことによって、家族が疲弊し、不平不満が爆発してしまうのです。

では、「使うべきではない方」はどうすればいいのか? 
その答えは、家族信託、任意後見、生前贈与、生前売買・・・などの選択肢がありますので、個々の家庭の事情、例えば家族構成・家族の関係性・保有資産の内容・本人及び家族の想いなどによって選択肢を取捨選択するということになります。 

従いまして、親が元気なうちに「家族会議」を開いて、自分の家庭は「成年後見制度を使うべきではないケース」なのかどうかを 法律専門家を交えて検討頂きたいです。 

大事なことは、「セーフティネット」のお世話になることなく、親が元気なうちに、親自身だけではなくそれを支える子・孫世代も含め、家族が一致団結して高齢の親を(あるいは障害を持つ家族を)生涯支える仕組みを検討し、実行することなのです。