司法書士法人 宮田総合法務事務所

弁護士のほとんどが『家族信託』に対応できないという事実

19.10.21
暮らし・人生にお役に立つ情報
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老親の認知症対策・空き家対策、将来の争族対策として「家族信託」の相談をする相手は、誰が適任なのでしょうか?

法律専門職の最上位に君臨する「弁護士」に相談するのが、果たして正解なのでしょうか?
実は、家族信託の設計コンサルティング業務を担っている法律専門職としては、弁護士よりも司法書士・行政書士の方が数として多いのはご存知でしょうか?

それは、弁護士が持つ本来的な職責・使命と関わってきます。

弁護士は、その職責として、「依頼人の利益最大追求」という最大の使命を背負っています。
刑事事件であれば、それがどんなに凶悪な事件であっても、代理人弁護士は被告人の利益のために奔走し、ときには理不尽な理屈で無罪を主張することもあります。
民事事件においては、依頼内容(得たい結果)を実現するために、過大な条件を相手方に提示してから少しずつ譲歩するといった交渉術を尽くすこともあります。


一方、家族信託の設計コンサルティングの進め方・考え方は、その対極をなします。
我々法律専門職は、家族の中に入って、親世代・子世代の希望や想いを聞き取り、時には家族の表情からその発言の行間・感情を読み取り、家族全員の利益(安心感・納得感も含め)の最大追求をします。
家族が同じ方向に向くように意見調整・利害調整をした結果、これから家族全員で老親を支え、将来の円満円滑な資産承継にまでつなげるという業務は、弁護士の本来的な業務とは異質なものであります。
従いまして、家族信託のコンサルティング業務に精通している弁護士がごく少数なのは、仕方の無いことなのです。

もちろん、一部の先鋭的かつ優秀な弁護士(やはり40代以下の若い弁護士が多いです)は、“予防法務”の観点から、「家族信託」を取り入れた財産管理・資産承継の仕組み作りに精力的に取り組む方もちょっとずつ増えてきてはいますが、
実務レベルで家族会議の現場に入っている弁護士の数は、全体からみると1000人に数人程度と言ってもあながち大げさではないと言えます。

残念なことに、中には、家族信託の信託契約書を作ったこともないのに万全の対応ができる風を装って、また家族会議の中で家族の希望や想いをちゃんとヒアリングすることもしないで、書籍に出ている契約書例を基に見よう見真似で作成して、
数十万単位の費用を請求するケースも耳にしています。
そこには、信託法の法的知識の不足、家族信託の実務的知識の不足、家族間の利害調整を図るという基本的概念・モラルを欠いた専門職の存在があります。
ただ、これは弁護士業界に限らず、司法書士・行政書士・税理士等でも“にわか家族信託の専門職”が多いことも悲しいかな事実です。
司法書士の業界でも、家族信託の設計コンサルティングができる司法書士は、恐らく1~2%でしょう。



「家族信託」は、よく最先端の医療に例えられます。
日頃よくお世話になっているからと言って、近所の内科に心臓パイパス手術の相談をしますか?
医者ならどんな病気でも診断できる・治せるというのは迷信です。
それは、法律専門職にも当然に当てはまる事実です。

弁護士にも専門分野がありますので、大手法律事務所にいる頭のキレる弁護士なら相続でも、離婚でも、家族信託でも、何でも相談できるかと言えば
そんなことはありません。
当然、企業法務を専門とする弁護士、不動産に絡む分野に造詣の深い弁護士、相続問題を得意とする弁護士、様々な弁護士がいます。
また、これは弁護士に限ったことではありません。
例えば、税理士業界ですと、多くの税理士が法人・個人の税務顧問としての業務がほとんどであり、相続税・所得税に関する対策を万全にコンサルティングできる税理士(いわゆる“資産税”に強い税理士)は、全体の10%もいません。


「家族信託」は、最先端の財産管理・資産承継の方策であり、これまで親の考えを基にが一方的に準備をしてきた遺言書策を中心とした資産承継対策とは、ちょっと違う手法になります。
配偶者や子世代を当然に巻き込み、家族全員で取り組むことの重要性を熟知し、それを主導する専門職でないと「家族信託」の設計コンサルティングは務まらないことを、是非多くの方に認識して頂きたいです。


一般の方にとっては、身近に相談できる方がいらっしゃらなければ、一般社団法人家族信託普及協会のホームページで探してみてください。
家族信託の設計コンサルティングスキルを身に付けたい方は、是非小職が講師を務める一般社団法人家族信託普及協会の研修を受講してみてください。