2019年1月13日から自筆遺言の方式要件が緩和!
平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立し、同年7月13日に公布されました。
いわゆる「改正相続法(改正民法)」と言われるもので、約40年ぶりの大改正です。
「老い支度」「終活」への関心が高まっている昨今においては、実務への影響は大きいと言え、専門職はもちろん、「老い支度」や「終活」をする張本人やそれを支える家族も、何がどのように変わるのか、きちんと把握しておくことは大変重要です。
今回は、民法大改正のうち先行して1月13日から施行する自筆証書(全文を手書きで作る遺言書)の方式緩和についてご紹介します。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者自らが「全文」を手書きしなければならず(現行民法968条第1項)、他人の代筆やパソコン等で作成した文書を印刷したものでは、法的に無効となってしまいます。
従いまして、不動産を多数所有されている方、預貯金口座を多数お持ちの方が、具体的な不動産や口座ごとに受取人(相続人・受遺者)を指定したい場合は、正確な所在地番や口座番号を記載する必要がありました。
しかし、このような財産の特定に関する記載は、ご高齢の方にとっては、大きな負担であり、また誤記のリスクも高いと言えます。
そこで、改正民法においては、第968条の第2項に、以下の定めを新設し、現行の第2項は第3項に繰り下げられます。
「前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、 印を押さなければならない。」
つまり、不動産や預貯金口座等の相続財産を特定するための「目録」については、手書きに代えて、不動産については登記事項証明書を、預貯金口座については通帳のコピーを 別紙として添付して、全頁に署名・押印をすることで、より誤記のない正確な遺言を作成することが可能となります(この「目録」を修正等する場合には、手書き及び押印による修正をしなければなりませんが)。
また、施行日前(2019年1月13日より前)に作成された自筆証書遺言には、上記の規定は適用されませんので(改正法附則6条)、あくまで2019年1月13日以降に作成する遺言書でなければならない点も注意が必要です。
ただ、今回の自筆証書遺言の方式緩和を受け、より気軽に、より軽負担で、自筆の遺言が作成しやすくなったというメリットは生まれますが、大局的には、遺言は公証役場で公正証書にすべきであることには変わりません。
なお、今回の改正相続法の一つのポイントとなる「法務局による自筆証書遺言の保管制度の創設」については、 「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(いわゆる「遺言書保管法」)の施行が2020年7月10日となっておりますので、 この説明はまた別の機会にしたいと思います。
※ 遺言書保管法に関する法務省のパンフレットはこちら↓
http://www.moj.go.jp/content/001263529.pdf
※ 改正相続法に関する法務省のパンフレットはこちら↓
http://www.moj.go.jp/content/001276857.pdf