宮田総合法務事務所

個人事業主の事業承継を支援する「個人版事業承継税制」の創設へ

18.12.10
暮らし・人生にお役に立つ情報
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2018年11月29日の日本経済新聞によると、政府・与党は、個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する新たな税優遇制度、いわゆる「個人版事業承継税制」を創設する方針を固めたとのこと。
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2025年までに70歳を超える個人事業主は、約150万人いるとされ、引退期を迎えた個人事業主が贈与税・相続税の税負担を理由に廃業を迫られるケースが多いのを踏まえ、税優遇により個人事業主の事業承継をサポートする。

今後の方向性としては、与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、2019年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む予定。


新制度の主な対象になるのは、地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。
現行では、土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際、基礎控除額を超える分について、生前なら贈与税、死後なら相続税が課税されるが、中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかるのは1割程度だという。
中小企業向けの事業承継税制は、2018年に見直され税優遇を受けやすくなっており、この税優遇を個人事業主にも広げる趣旨だ。


政府・与党が検討している新制度は、10年程度の時限的な制度ではあるが、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。
とはいえ、個人事業主は、法人と違い、私用と事業用の資産の線引きが曖昧であることから、新制度が悪質な節税に利用されることを防ぐ対策も同時に設ける。
個人事業主が事前に事業承継計画を都道府県に提出し、認可を受けることを条件に個人事業主の事業承継時にかかる贈与税・相続税を優遇する。
具体的には、土地・建物に対する税額を対象に税額の80%以上で納税を猶予する予定。
猶予を受けられるのは、承継後に事業を一生続けることを条件とするが、後継ぎが重度の障害を負ったり、大規模な災害が起きたりして事業が続けられなくなった場合は、猶予を受けられるようにする。
また、資産の切り分けを第三者が確認することや、後継ぎが承継後すぐに事業をやめないことを義務づける案も検討する。


個人の土地の相続については、土地の価格を一定の面積まで80%減額して相続税を減らせる仕組みとして、「小規模宅地の評価減」の税優遇制度があるが、新制度の創設後は、この特例を受けにくくするようだ。
見直し案では、330㎡を上回る分を「事業用」に付け替え、本来より多く優遇を受ける節税策を防ぐ。
また、相続直前に駆け込みで「事業用」に変更された土地は優遇を受けられないようにするため、相続前の3年以内に「事業用」とされた土地については、特例の対象から外す。
ただ、土地の価値の15%を上回る建物が事務所や店舗として使われていれば相続前3年以内であっても特例を受けられるようにする。


現在は、事業用の土地を買うために借金をした場合に私用の資産と相殺して節税したり、後継ぎでない親族まで税優遇のメリットを受けたりできるが、政府・与党は、条件の厳格化でこうした問題点を解消し、個人事業主への税優遇が過剰にならないよう配慮する方針だという。