司法書士法人 宮田総合法務事務所

複数人で共有する私道――全員の同意がなくても修復可能?

18.05.02
業種別【不動産業(登記)】
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近年、相続登記されず“共有者が不明となったため、私道が修復できない”という問題が顕著化。
そこで、2018年2月、法務省が『所有者不明私道への対応ガイドライン(※1)』を公表しました。

このガイドラインによって、どのように問題が解決されたのでしょうか? 
民法の規程と併せてご紹介します。
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ガイドライン策定前までは……

共有の私道など、2人以上が共同で所有している“共有物”は、共有者それぞれがその物に対して“使用・収益・処分”などの権利を有しています。

そのため、民法では、各行為について以下のように定められています。

・『各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる』(249条)
・『各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない』(251条)
・『共有物の管理に関する事項は、251条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる』(252条)

つまり、共有の私道に変更を加える場合などは、以下の基準をもとに“ほかの共有者の同意が必要か否か”を判断します。

1.『保存行為』……共有物の現状を維持することは、各共有者が単独で行うことが可能。

2.『管理行為』……“地ならし”など、性質を変更しない範囲での利用・改良は、共有者の過半数の同意があれば行うことが可能。

3.『変更行為』……処分行為に該当するような、性質・形状などを物理的に変更する場合は、共有者全員の同意が必要。

しかし、実際の補修工事がどれに該当するかは明確化されていなかったため、事実上、全員の同意を得る必要があったのです。

また、私道の補修や修繕には自治体から助成金が出ることもあります。
その際、多くの自治体で『共有者全員の同意がないと補修できない』と定めていたこともあり、共有者不明の私道では補修が滞ってしまう事態が発生していました。


私道の修復が
1人の判断で可能に!

これを受け、2018年2月1日に法務省が民法に則ったガイドラインを作成。
典型的な35の事例について、前述の『保存行為・管理行為・変更行為』のどれに該当するのか見解を示しました。

ここでは、ガイドラインに示された事例のうち、主なケースをいくつかご紹介します。

共有私道の一部が陥没したため、修復したい
→『保存行為』。
 1人の判断で実行可能なため、共有者の同意を得る必要はありません。

老朽化した側溝(道路端の排水溝)を撤去&新設し、路面全体を再舗装したい
→『管理行為』。
 共有者の過半数の同意が必要です。
 ただし、路面全体の再舗装ではなく、側溝付近のみの再舗装であれば『保存行為』に該当すると考えられます。

舗装されていない“砂利道の私道”を新たに舗装したい
→『変更行為』。
 所在不明者も含めた共有者全員の同意が必要です。
(ただし、団地の場合は、区分所有法に規定される手続きを経て、団地建物所有者および議決権の4分の3以上による決議があれば、舗装を行うことが可能。)

このほかにも『ガス管の補修事例』や『公共下水管の新設事例』などが紹介されています。

実際の補修工事が、どの事例&民法規程に該当するかなど、私道の補修についてご不明な点があれば、専門家へお問い合わせください。


※1 正式名称は『複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~ 』。



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