『家族信託』を“空き家対策”として活用する!
『家族信託』は、それを上手に活用することで、老親の長期にわたる負担の少ない財産管理を実現し、相続対策(節税や争族対策)など様々な問題を解決する糸口になります。
今回は、昨今注目を集めている『空き家問題』も、家族信託の仕組みを活用してトラブルを回避できるというお話をしたいと思います。
空き家問題とは
2013年の統計データによると、全国の空き家は820万戸を超え、空き家率(総住宅数に占める割合)は,13.5%と過去最高を更新しました。特に、適切な管理がされていない空き家は、防災・衛生・景観などの点で地域住民の生活環境に深刻な悪影響を及ぼしており、近年社会問題化してきています。
これを受け、いわゆる「空き家対策特別措置法」が昨年5月に全面施行され、問題があると認定された空き家の所有者に対しては、市町村等による立入調査及び除却、また固定資産税等の減免措置からの除外措置(これにより固定資産税が最大6倍になる可能性も)などができることになりました。
その結果、空き家の所有者は、固定資産税の増額や行政による強制措置を避けるため、空き家の有効活用への備えが急務となっています。
空き家となる原因を絶つ対策
備えをするということは、下記の(1)~(3)のような空き家となる典型的な原因を絶つための対策をとるということになりますが、その対策については、次のように家族信託が活用しうると言えます。*****************************
【 空き家の典型的な原因 】
(1)所有者たる老親が判断能力の低下により施設入所。
空き家となった自宅は本人ではどうすることもできず、また後見人を就けても有効活用ができずそのまま相続発生を待つのみ。
(2)共有者間の意見がまとまらず、売却・賃貸等の有効活用できず。
(3)建物所有者死亡後、相続人間の遺産分割協議不調により、引継ぐ人が決まらない。
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(1)の原因に対する対策:老親が認知症等になっても財産管理に支障のない仕組みを作る
老親の判断能力が低下すると、本人による財産管理や契約ができず、成年後見制度を利用せざるを得なくなります。後見制度の下では、保有財産の処分・有効活用や相続税対策に大きな制約を受けます(いわゆる“資産凍結”リスク)。
老親の生前に空き家となった自宅を賃貸や売却で有効活用したい場合は、老親が元気なうちから予め家族信託契約で子に管理を託すことで、後見制度に代わる柔軟な財産管理が実現できます。
(2)の原因に対する対策:不動産を兄弟で共有にしない
不動産を兄弟間で共有にすると、兄弟間が不仲になった時点で、財産の処分や有効活用の計画がとん挫しかねません。
また、共有者の一人に相続が発生し、当該死亡者の共有持分がその配偶者や子に分散し、収拾がつかなくなる可能性もあります。
そこで、不動産を家族信託契約で信託財産にし、管理処分の権限は、受託者たる兄弟の1人に集約させる一方で、信託受益権という財産権は兄弟間で平等に持ち合うことで、不動産の共有と同じ財産関係を維持しつつ、処分や有効活用の判断は受託者単独でできる仕組みが作れます。
(3)の原因に対する対策:遺言又は信託契約で不動産の承継者を指定する
いわゆる“争族”を回避するための手段として、遺留分まで考慮に入れた遺言書の作成や遺言代用の機能を持つ家族信託契約を締結しておくことで、争族による資産の塩漬けを回避することができます。