家族信託における金銭管理と信託口口座の現実
お客様や全国で家族信託の相談業務を行っている専門職から、『老親の金融資産を家族信託の信託財産に入れる場合、どのように管理したらいいのか?』というご相談が多いです。
そこで、家族信託による金銭管理(いわゆる『金銭信託』)の実務的対応について、ご説明したいと思います。
そこで、家族信託による金銭管理(いわゆる『金銭信託』)の実務的対応について、ご説明したいと思います。
老親の生活資金の管理のニーズは高い
老親が現在から亡くなるまで安心して生活できるように、金銭の管理から始まり、生活費、介護費用、入院・入所費用、税金等の支払い、年金や賃料収入の管理・活用について、信頼できる子に託したいというニーズは高いです。
親が銀行口座に入れておいた預金は、本人の判断能力の低下により自ら引き出すことができなくなります(これを「預金凍結リスク」と言ったりします)。
そうなると、家族(または司法書士等の法律専門職)が成年後見人に就任して、改めて後見人の印鑑を銀行に届出し、後見人が預金を引き出すことになります。
しかし、成年後見制度は、堅実な財産管理が実行できる反面、親族後見人が担う家裁等への報告事務の負担や後見監督人への報酬というランニングコストが、本人の亡くなるまでずっと続くことになりますので、後見制度の利用を回避して、もっと負担の軽い財産管理の仕組みは無いのか、という相談は多いです。
そのニーズに応えられるのが、「家族信託」です。
金銭管理も家族信託で安心
老親が元気なうちに金銭を受託者となる子に管理を任せることで、前述の預金凍結リスクを回避し、子が老親のために柔軟に管理・活用できます。
いわば、緊急事態に備え、老親の財布を1つ預けておくイメージです。
親の「預金口座」を信託財産に入れて子に託すことは実務上困難ですので、親の預金は引き出して、「現金」として子に管理を任せることになります。
受託者となる子は、子自身の金銭と親から預かった信託財産たる金銭を混同しないように、きちんと分けて管理することが求められます(これを「分別管理義務」と言いいます)。
そこで、理想的な現金管理のやり方は、金融機関で「信託口口座」を作成する方法です。
これは、信託契約に基づき、「委託者 親 受託者 子 信託口」という口座名義で作成された口座を指しますが、この信託口口座の作成に応じてくれる金融機関は、全国でもまだ一握りです。
仮にこのような口座名義にしてもらえたとしても、実は“屋号”扱いに過ぎないケースがほとんどです。
もし受託者が亡くなっても信託契約書で指定した第二受託者がスムーズに引き継げるのが本来あるべき「信託口口座」ですが、死亡した受託者個人の相続財産として口座凍結されてしまう「屋号扱いの信託口口座」には注意が必要です。
「信託口口座」よりも「分別管理」が重要
ここでまず声を大にして申し上げたいのは、≪受託者は信託財産について分別管理をする義務を負っているだけで、「信託口口座」で金銭を管理する義務がある訳では無い≫ということです。
つまり、信託口口座を作ってくれる金融機関が少ない中で、対応できる金融機関を探したり、粘り強く金融機関と口座作成の交渉を試みる専門職を数多く見かけますが、あまりお勧めできません。
前述のとおり、せっかく通帳の名義に「信託口」の文字が入ったとしても、屋号に過ぎない可能性が高いですから、結局受託者側の事情による預金凍結リスクを回避したことにはならないからです。
そこで、実務上、受託者の方に個人名義の新規の預金口座(信託財産の管理のためであることは金融機関側に告げずに作成する通常の預金口座)を1つか2つご用意頂き、それを信託契約書に口座番号まで明記する形で、分別管理を徹底する便宜上の対応をお願いしています(これを「信託専用口座」と呼んでいます)。
信託契約書に信託財産の管理用である旨を記載し、実際も親の現預金を移動して親のために支出するのであれば、法律上も税務上も贈与や横領等の問題として指摘されるリスクはほぼありません。
もちろん、「屋号扱いの信託口口座」と同様に、受託者の事情による預金凍結リスクは認識しておく必要はあります。
現実的な対応策としては、例えば第二受託者を代理人登録しておく(代理人登録ができる金融機関も少ないですが)とか、インターネットバンクを導入して、IDとパスワードを第二受託者とシェアしておくとか、キャッシュカードと暗証番号がいざという時に引き継げるようにしておくとか、実務上の預金凍結回避策を講じておくことも必要です。
いずれ時が経ち、家族信託に対する金融機関の対応がスムーズになる時代が来れば、その時に最寄りの金融機関で「信託口口座」を作成すれば良いと考えております。
いざその時に備えて、きちんとした信託契約書を公正証書で作成しておくことは重要です。
老親が現在から亡くなるまで安心して生活できるように、金銭の管理から始まり、生活費、介護費用、入院・入所費用、税金等の支払い、年金や賃料収入の管理・活用について、信頼できる子に託したいというニーズは高いです。
親が銀行口座に入れておいた預金は、本人の判断能力の低下により自ら引き出すことができなくなります(これを「預金凍結リスク」と言ったりします)。
そうなると、家族(または司法書士等の法律専門職)が成年後見人に就任して、改めて後見人の印鑑を銀行に届出し、後見人が預金を引き出すことになります。
しかし、成年後見制度は、堅実な財産管理が実行できる反面、親族後見人が担う家裁等への報告事務の負担や後見監督人への報酬というランニングコストが、本人の亡くなるまでずっと続くことになりますので、後見制度の利用を回避して、もっと負担の軽い財産管理の仕組みは無いのか、という相談は多いです。
そのニーズに応えられるのが、「家族信託」です。
金銭管理も家族信託で安心
老親が元気なうちに金銭を受託者となる子に管理を任せることで、前述の預金凍結リスクを回避し、子が老親のために柔軟に管理・活用できます。
いわば、緊急事態に備え、老親の財布を1つ預けておくイメージです。
親の「預金口座」を信託財産に入れて子に託すことは実務上困難ですので、親の預金は引き出して、「現金」として子に管理を任せることになります。
受託者となる子は、子自身の金銭と親から預かった信託財産たる金銭を混同しないように、きちんと分けて管理することが求められます(これを「分別管理義務」と言いいます)。
そこで、理想的な現金管理のやり方は、金融機関で「信託口口座」を作成する方法です。
これは、信託契約に基づき、「委託者 親 受託者 子 信託口」という口座名義で作成された口座を指しますが、この信託口口座の作成に応じてくれる金融機関は、全国でもまだ一握りです。
仮にこのような口座名義にしてもらえたとしても、実は“屋号”扱いに過ぎないケースがほとんどです。
もし受託者が亡くなっても信託契約書で指定した第二受託者がスムーズに引き継げるのが本来あるべき「信託口口座」ですが、死亡した受託者個人の相続財産として口座凍結されてしまう「屋号扱いの信託口口座」には注意が必要です。
「信託口口座」よりも「分別管理」が重要
ここでまず声を大にして申し上げたいのは、≪受託者は信託財産について分別管理をする義務を負っているだけで、「信託口口座」で金銭を管理する義務がある訳では無い≫ということです。
つまり、信託口口座を作ってくれる金融機関が少ない中で、対応できる金融機関を探したり、粘り強く金融機関と口座作成の交渉を試みる専門職を数多く見かけますが、あまりお勧めできません。
前述のとおり、せっかく通帳の名義に「信託口」の文字が入ったとしても、屋号に過ぎない可能性が高いですから、結局受託者側の事情による預金凍結リスクを回避したことにはならないからです。
そこで、実務上、受託者の方に個人名義の新規の預金口座(信託財産の管理のためであることは金融機関側に告げずに作成する通常の預金口座)を1つか2つご用意頂き、それを信託契約書に口座番号まで明記する形で、分別管理を徹底する便宜上の対応をお願いしています(これを「信託専用口座」と呼んでいます)。
信託契約書に信託財産の管理用である旨を記載し、実際も親の現預金を移動して親のために支出するのであれば、法律上も税務上も贈与や横領等の問題として指摘されるリスクはほぼありません。
もちろん、「屋号扱いの信託口口座」と同様に、受託者の事情による預金凍結リスクは認識しておく必要はあります。
現実的な対応策としては、例えば第二受託者を代理人登録しておく(代理人登録ができる金融機関も少ないですが)とか、インターネットバンクを導入して、IDとパスワードを第二受託者とシェアしておくとか、キャッシュカードと暗証番号がいざという時に引き継げるようにしておくとか、実務上の預金凍結回避策を講じておくことも必要です。
いずれ時が経ち、家族信託に対する金融機関の対応がスムーズになる時代が来れば、その時に最寄りの金融機関で「信託口口座」を作成すれば良いと考えております。
いざその時に備えて、きちんとした信託契約書を公正証書で作成しておくことは重要です。