司法書士法人 宮田総合法務事務所

利用規約は大丈夫?「定型約款」の落とし穴と対応策

26.09.08
ビジネス【企業法務】
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Webサービスの利用規約など、多くの企業が「約款」を用いて不特定多数の顧客と取引をしています。
こうした約款のうち一定の要件を満たすものは「定型約款」と呼ばれ、2020年4月施行の改正民法で新たなルールが設けられました。
ルールを知らないまま古い規約を使い続けると、条項が無効と判断されたり、規約変更が認められなかったりといったトラブルにつながりかねません。
今回は、「契約」「約款」「定型約款」の違いと定型約款のメリットを整理したうえで、改正民法を踏まえて利用規約を見直す際のポイントを解説します。

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「契約」「約款」「定型約款」はどう違う?

まず、「契約」「約款」「定型約款」の関係を整理しておきましょう。
契約とは、当事者双方の意思表示が合致することで成立する法的な取り決めです。
契約内容は個別交渉によって定められる場合もあれば、あらかじめ定められた約款による場合もあります。
これに対して約款は、企業が不特定多数の相手と同種の取引を反復して行うために、あらかじめ画一的に定めておく契約条項の総体を指します。
保険約款や運送約款、Webサービスの利用規約などが身近な例です。

約款のなかでも、民法上の「定型約款」に当たるものには、特別なルールが適用されます。
定型約款とは、特定の者が不特定多数の者を相手方として行い、その内容の全部または一部を画一的にすることが双方にとって合理的な取引において、契約内容とするために準備された条項の総体をいいます。
一定の要件を満たすWebサービスの利用規約や、電気・ガスの供給約款、預金規定などが典型例です。

同じ「約款」でも、定型約款に当たるかどうかは重要です。
定型約款であれば、民法548条の2から548条の4までの規定(みなし合意・表示義務・変更ルール)が適用されます。
一方、当事者が個別に交渉する余地の大きい取引は、定型約款には当たりません。
ただし、定型約款に当たらない場合でも、契約自体が無効になるわけではなく、一般的な契約法理に基づいて契約内容の有効性が判断されます。

定型約款の大きな特徴が「みなし合意」です。
1.定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合、または2.あらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合には、顧客が定型約款の個別の条項を読んでいなくても、その条項に合意したものとみなされます。

ただし、どんな条項でも有効になるわけではありません。
相手方の権利を制限したり義務を加重したりする条項のうち、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意しなかったものとみなされます。
いわゆる不意打ち条項の排除です。

このように定型約款には、大量・反復的な取引を効率化できる、契約条件を統一して公平性と予測可能性を高められる、個別交渉のコストを削減できるといったメリットがあり、多くの企業活動を支える仕組みとなっています。

民法改正で変わった定型約款のルール

定型約款のルールは、2020年4月に施行された改正民法で新たに設けられました。
それ以前は明文の規定がなく、約款が顧客を拘束するのか、約款の一方的な変更が認められるのかをめぐって争いが生じていました。
この改正は、こうした不安定さを解消するものです。

まず押さえておきたいのが「表示義務」です。
定型取引を行おうとする事業者は、相手方から請求があった場合には、遅滞なく定型約款の内容を表示しなければなりません。
正当な理由なく定型約款の内容の表示を拒むと、みなし合意の規定が適用されず、定型約款を契約内容として主張できなくなる可能性があります。

次に「変更ルール」です。
約款を一方的に変更できるのは、変更が相手方の一般の利益に適合する場合か、契約の目的に反せず、変更の必要性や変更後の内容の相当性、変更条項の有無や内容などを踏まえて、合理的と認められる場合に限られます。
あわせて、変更の効力発生時期を定め、変更する旨とその内容、効力発生時期を、インターネットの利用などにより事前に周知することが必要です。

これらを踏まえると、自社の定型約款を見直すべきかどうかが見えてきます。
たとえば、2020年の改正前につくられたまま更新されていない規約や、免責条項・責任制限条項など、不当な内容と判断されかねない条項を含む規約は要注意です。
規約変更の手続き(周知の方法や効力発生時期)が定められていない場合や、そもそも「定型約款を契約の内容とする」旨を適切に表示する仕組みがない場合も、見直しの対象になります。

定型約款は、一度つくれば終わりというものではありません。
改正民法の要件を満たしているか不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談し、早めに見直すことが、将来のトラブル防止につながります。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。