司法書士法人 宮田総合法務事務所

賃金の未払いに要注意!『遅延損害金』の算出方法は?

26.09.08
ビジネス【税務・会計】
dummy

使用者は労働者に対して、労働契約や就業規則で定められた賃金を支払う義務があり、もし決められた支払日に賃金を支払わなかった場合は、労働基準法に違反することになります。
しかし、賃金の未払いは、残業時間の把握不足や給与の計算ミスなど、さまざまな要因で起きてしまいます。
同時に、支払いが遅延している期間の利息に相当する「遅延損害金」も支払う必要があります。
遅延損害金が発生する具体的なケースや、その算出方法について、理解を深めておきましょう。

dummy

賃金の未払いが生じる要因と遅延損害金

未払賃金の対象となるのは、毎月の基本給や各種手当といった定期賃金だけではありません。
退職金、賞与などの一時金、休業手当、割増賃金(時間外労働、深夜労働、休日出勤に対する手当)、年次有給休暇の賃金など、労働の対価として支払われるべきものすべてが対象となります。

こうした賃金の未払いが生じる原因は、会社側の故意によるものばかりとは限りません。
実務においては、経理担当者による手作業での計算ミスや、新たに設けられた手当や昇給額が給与計算システムに反映されていないといった事務的なエラーなどが考えられます。
テレワークや直行直帰の営業スタイルが普及したことで、会社側が従業員の正確な残業時間を把握しきれず、結果的に残業代の未払いが発生してしまうケースも少なくありません。

しかし、故意・過失にかかわらず、労働契約や就業規則で定められた賃金を支払期日どおりに支払わなかった場合、使用者は労働基準法違反に問われる可能性があります。
日常の労務管理に不備があると、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。

もし未払賃金が発生し、本来の給料日を過ぎてしまった場合、会社には未払賃金に加え、法律に基づく遅延損害金を支払う義務が生じます。
これは本来受け取れるはずの賃金が手元にないことによって生じる労働者の不利益を補填するための仕組みです。

在職者と退職者で異なる遅延損害金の利率

遅延損害金は、未払賃金の元金に、法律で定められた利率と支払いが遅れた日数を掛け、日割りで算出します。

対象となる労働者が現在も会社に在籍している場合は、民法が適用されます。
当事者間で別段の定めがない限り、法定金利である年3%が適用されることになります。

たとえば、在籍中の従業員に対して未払いの残業代が50万円あり、本来の支払期日から100日が経過しているとします。
この場合、50万円に利率の3%(0.03)を掛け、さらに遅延日数の100日を掛けてから、1年間の日数である365日で割ります。
計算式は「50万円×0.03×100日÷365日」となり、算出される遅延損害金は約4,110円となります。

なお、民法が定めるこの法定利率は常に一定ではありません。
民法第404条第3項の規定に基づき、金利動向に合わせて3年ごとに見直される仕組みとなっています。
そのため、過去の未払賃金をさかのぼって計算する場合や、今後新たに計算を行う際には、その時点の正しい適用金利を確認する必要があります。

一方、労働者がすでに会社を退職しているケースでは、「遅延利息」となり「遅延損害金」とは利率が異なるため、注意が必要です。
在籍中の従業員とは異なり、退職者に対しては「賃金の支払の確保等に関する法(以下、賃確法)」という別の法律が適用されます。
この法律により、退職日の翌日から実際の支払日まで、退職手当を除く未払賃金には、原則として年14.6%の遅延利息が発生します。
同じ50万円の未払いでも、退職後の期間が長引くほど、会社が支払う総額は速いペースで増加します。
もし退職者から未払賃金の指摘を受けた場合は、事実関係を速やかに確認し、早期に精算することが重要です。

ただし、天災地変が生じて物理的に支払いができない場合や、法令の制約によって賃金の支払いに充てるべき資金の確保が困難である場合などは、例外として遅延利息が生じないことも賃確法施行規則で規定されています。

賃金の未払いには、遅延損害金や遅延利息という直接的なリスクがあります。
特に退職者に対する遅延利息の利率は14.6%と高く、対応が遅れるほど金銭的な影響が大きくなります。
こうした事態を防ぐためにも、労働時間を正確に把握すると同時に、給与計算のプロセスに二重チェックを設けるなど、人的なミスを防ぐ体制づくりが求められます。
まずは、現時点で未払賃金がないかを確認するところから始めましょう。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。