「貸したのに返ってこない」個人間のお金の貸し借りで法的に守られるには?
友人や知人にお金を貸したのに、期日を過ぎても返ってこない。
親しい間柄ほど強く言い出しにくく、そのまま泣き寝入りしてしまうケースは少なくありません。
しかし、個人間の貸し借りであっても、正しい手順を踏めば法的に返済を求めることができます。
一方で、取り立ての方法を誤ると、逆に自分が責任を問われることもあります。
今回は、貸したお金が返ってこないときにまず取るべき対応と、法的手段、そしてトラブルを防ぐために貸す前に押さえておきたい注意点を解説します。
お金が返ってこないとき、まず何をすべき?
お金が返ってこないとき、いきなり法的手段に訴える必要はありません。
まずは段階を踏んで対応しましょう。
最初にすべきことは、本人への催促です。
メール、SNSなど、やり取りの記録が残る方法で返済を求め、その内容は証拠として保存しておきます。
電話で催促する場合も、日時や会話の内容を記録しておきましょう。
口頭だけのやり取りは「言った、言わない」の争いになりやすいため、避けたほうが安全です。
このとき、貸したことを示す証拠をできるだけ集めておくことが重要です。
借用書がなくても、銀行の振込記録やATMの振込利用明細、返済を約束したメールやSNSのメッセージ、相手から一部返済を受けた履歴などは、貸し借りの事実を裏づける有力な材料になります。
現金を手渡しした場合は証拠が残りにくいため、やり取りの記録を意識して残しておきましょう。
催促に応じない場合は、内容証明郵便を利用する方法があります。
これは「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便です。
相手に心理的なプレッシャーを与えるだけでなく、後に裁判となった場合の証拠になります。
内容証明ではない普通の郵便でも、時効の完成を猶予する効果がありますが、その通知を行なったことを後で証明することがむずかしい場合が多くみられます。
そのため、立証の容易な内容証明郵便を利用したほうが、裁判で認められやすくなります。
ただし、催告による時効の完成猶予は6カ月であるため、その間に裁判上の請求などを検討する必要があります。
それでも回収がむずかしい場合は、法的手段を検討します。
請求額が60万円以下であれば、原則として1回の審理で紛争解決を図る「少額訴訟」を利用できます。
また、裁判所を通じて相手に支払いを督促する「支払督促」という手続もありますが、相手が異議申立てをすると通常の訴訟に移行します。
金額が大きい場合や争いが複雑な場合は、通常訴訟を検討することになります。
一方で、取り立ての方法には注意が必要です。
借りた本人に対して常識的な範囲で返済を求めるのは問題ありません。
しかし、勤務先への執拗な連絡や、親族など第三者への過度な返済要求、深夜や多数回にわたる電話など、社会通念上相当な範囲を逸脱した取り立ては、不法行為となるほか、その態様によっては脅迫罪や強要罪などに問われるおそれがあります。
個人間の貸金は貸金業法の直接的な適用を受けませんが、社会通念を超える取り立ては違法と判断されることがあるため、感情的にならないことが大切です。
トラブルを防ぐ、貸す前・貸すときの注意点
トラブルを避けるには、貸す前の備えが何より重要です。
まず、契約の内容を書面で残しましょう。
金銭消費貸借契約書を作成し、貸付金額・返済期限・返済方法・利息の有無を明記しておきます。
正式な契約書でなくても、借用書やメールのやり取りが残っていれば、貸し借りの事実や条件を示す証拠になります。
利息の扱いにも注意が必要です。
個人間の貸し借りの場合、利息を受け取るには当事者の合意が必要で、取り決めがなければ無利息が原則です。
合意する場合でも、利息制限法の上限(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)を超える利息の約定をしても、その超える部分は無効となります。
また、個人間であっても出資法の上限金利(年109.5%)を超える利息の約束は処罰の対象となります。
なお、支払期日を経過した後は、利息の定めがなくても、年3%の法定利息が遅延損害金(遅延利息)として発生します。
見落としがちなのが時効です。
貸したお金を返してもらう権利(貸金債権)は、権利を行使できることを知ったとき(通常は返済期限)から5年が経過すると、時効によって消滅します。
時効が完成する前に、内容証明郵便による催告や裁判上の請求、相手による債務の承認などによって、時効の更新や完成猶予を図る必要があります。
なお、返済期限を定めていなかった場合は起算点の考え方が複雑になり、時効の管理がしにくくなります。
いつまでに返してもらうのかを、最初にはっきり決めておきましょう。
より確実にしておきたい場合は、金銭消費貸借契約書を公正証書にしておく方法もあります。
債務者が、返済を怠った場合にはただちに強制執行に服する旨の陳述を記載した公正証書を作成しておけば、返済が滞ったときに、訴訟を経ずに強制執行の手続に進める場合があります。
親しい間柄であっても、口約束はトラブルのもとです。
金額・期限・利息を書面にしておき、万一返済が滞ったときは、早めに弁護士など専門家へ相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。