産地偽装事件から学ぶ、食品表示法と景品表示法の注意点
2026年2月、三重県内の土産物店が外国産ロブスターを「伊勢海老」と表示して販売していたとして、三重県から、景品表示法と食品表示法に基づく措置命令・改善指示を受けました。
産地偽装は一部の悪質業者だけの問題ではありません。
意図しなかったとしても、店頭のPOP表示やメニュー表記、ECサイトの商品説明など、自社でも起こり得る問題としてとらえることが重要です。
今回は、食品表示法と景品表示法それぞれの役割と違いを整理したうえで、企業が自社の表示を見直す際に押さえておきたい実務ポイントを解説します。
食品表示法と景品表示法、どう違う?
産地偽装に関しては、主に「食品表示法」と「景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)」という2つの法律が規制の軸となっています。
食品表示法は、消費者が食品を安全に購入・摂取するために必要な情報を確保することを目的とした法律です。
同法に基づく「食品表示基準」により、生鮮食品・加工食品を問わず、原産地や原料原産地の表示が事業者に義務づけられています。
表示の方法や記載すべき内容は品目ごとに細かく規定されており、違反した場合は行政指導・命令の対象となるほか、悪質な場合には、刑事罰として個人には2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科される可能性があります。
一方、景品表示法は、消費者に「実際より優良なもの」と誤認させる表示(優良誤認)を禁じる法律です。
景品表示法の特徴は、故意・過失を問わず、「結果として消費者が誤認するような表示」であれば規制の対象となる点です。
今回の事案では、外国産ロブスターを「伊勢海老」と表示したことが景品表示法上の優良誤認にあたるとして、違反行為の停止・再発防止などを求める「措置命令」の対象となりました。
なお、「伊勢海老」は特定の種類を指す名称であり、ロブスターとは異なるため、産地表示にとどまらず品名自体の誤認という問題も含まれます。
今回のように外国産食品を国内有名産地のものとして表示するケースは、両法に同時に違反する可能性があります。
そのため、どちらか一方だけを意識するのでは不十分です。
なお、景品表示法が業種横断的に適用されるのに対し、食品表示法は食品に特化した規制である点も押さえておく必要があります。
ではなぜ、「知らなかった」では済まないのでしょうか。
食品の表示は、最終的に消費者に商品を提供する事業者が責任を負います。
そのため、仕入先からの説明をそのまま信じて表示したとしても、表示の正確性については自社が責任を負う立場にあるのです。
過去の産地偽装事例においても、「産地について詳しく確認していなかった」「仕入先の言葉を信じた」といった弁明は行政処分の免除理由とはならず、消費者庁の措置命令事例においても同様の考え方が示されています。
企業が今すぐ確認すべき実務対応
産地表示に関するリスクを未然に防ぐためには、日頃からの実務的な取り組みが欠かせません。
まず、仕入れ・原産地情報の管理の徹底が最重要です。
仕入先から受けた説明をそのまま表示するのではなく、産地証明書・通関資料などの根拠資料を確認・保管する体制を整えましょう。
また、食材のコスト高騰や品薄が生じた際ほど、安価な代替品に切り替えたまま表示を更新し忘れるリスクが高まります。
平時から表示変更のフローをルール化しておくことが大切です。
次に、表示媒体の網羅的な整合性の確認が必要です。
産地表示の確認作業は、商品パッケージだけで完結しません。
店頭POP・チラシ・メニュー表記・ECサイトの商品説明・SNS投稿など、消費者の目に触れるあらゆる媒体を確認の対象としてとらえましょう。
「担当者任せだった」「SNSは別のチームが管理していた」という状況が、思わぬ違反につながる可能性があるため、社内全体に周知することが重要です。
社内体制の整備も急務です。
表示の確認を特定の担当者だけに委ねるのではなく、仕入れ・販売・マーケティング部門を横断した確認フローを構築しましょう。
社内に相談窓口を設けると共に、定期的なモニタリング体制を整え、表示法規制に関する社内研修を継続的に実施することも有効です。
特に飲食・食品関連の企業では、メニュー改訂や食材の仕入れ変更のタイミングで、表示の見直しを必ず行うルールを設けることをおすすめします。
そして、発覚した場合のリスクの大きさを正確に把握しておくことも重要です。
産地偽装が明らかになった場合のリスクは、行政処分(措置命令・課徴金)に留まらず、報道による社会的信用の失墜、取引先からの契約解除、消費者からの損害賠償請求、場合によっては刑事訴追まで、経営への打撃は多岐にわたります。
日常的な表示に関する実務の見直しは、経営上、有効なリスク管理策といえます。
「自社の表示は大丈夫」と思い込まず、今一度、原産地表示の根拠資料から確認対象となる媒体の範囲まで、包括的に点検することが重要です。
※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。