司法書士法人 宮田総合法務事務所

不正に加担してしまうかも? 領収書の『二重発行』に要注意!

26.06.09
ビジネス【税務・会計】
dummy

取引先から「領収書を紛失してしまったので、もう一度発行してほしい」と頼まれた際に応じてしまうと「領収書の二重発行」となります。
領収書の二重発行は、発行する側にも受け取る側にもリスクのある行為です。
よかれと思って行なった領収書の再発行が、思わぬところで脱税の片棒を担いだとみなされたり、最悪の場合は刑事責任を問われたりする可能性もあります。
会社の経理担当者であれば知っておきたい、領収書の二重発行の危険性と、トラブルを防ぐための適切な対応策について、解説します。

dummy

税務上の公正性と透明性を損なう行為

領収書の二重発行とは、一つの取引(代金の授受)に対して、複数枚の領収書を交付する行為を指します。
本来、領収書は代金を支払ったという事実を証明する証憑書類です。
そのため、一つの支払いに対して二つの証明書が存在することは、経理上、不自然な状態といえます。

法律上、領収書の二重発行を禁止する条文があるわけではありません。
しかし、税務調査において、同一の取引に対して複数の領収書が存在することは、税務上の公正性と透明性を著しく損なうものと判断されます。
なぜなら、領収書が複数あれば、受け取った側がそれらを使用して、税金を逃れることが可能になってしまうからです。

たとえば、受け取った側が、再発行分と元の領収書を両方使い、経費を水増ししたり架空の経費を計上したりすれば、それは明らかな「脱税」となります。
税務調査で発覚すれば、本来納めるべき税金に加え、重加算税や延滞税といった厳しいペナルティが課せられることになります。
こうした不正を未然に防ぐため、実務上の原則として、領収書の二重発行は避けるべきとされています。

また、発行した側の責任も追求されることがあります。
たとえ不正の意図がなかったとしても、結果として架空計上を助けたとみなされれば、共犯関係を疑われかねません。
二重発行された領収書は、受け取り側によって悪用される可能性があるということを理解しておきましょう。

ほかにも、一度発行した領収書があるにもかかわらず、発行の権限のない者が、それと矛盾するような内容(日付や宛名を少し変えるなど)で新しい領収書を作成した場合には、刑法の「有印私文書偽造罪」に問われるリスクがあります。
このように、領収書の二重発行は発行する側にも受け取る側にも、リスクが生じる行為といえます。

もし領収書の再発行を依頼されたら?

日常の業務のなかで、二重発行の依頼が発生する場面は少なくありません。
最も多いのは、先述したような「紛失による再発行依頼」ではないでしょうか。
取引先の担当者がうっかりなくしてしまった、あるいは郵送事故で届かなかったといった理由で、善意から応じてしまうケースです。

また、「金額の分割」もよくあるパターンです。
たとえば、一つの大きな買い物を複数の経費科目で処理したい、あるいは特定の金額を超えると社内規定で承認が必要になるため、それを避けるために小分けにしてほしいといった要望です。
領収書の分割自体は原則認められていますが、1品の金額が10万円を超える固定資産を購入した場合などに領収書を分割して発行しようとした場合、その行為が違法とみなされる場合があります。

ほかにも、クレジットカード決済をした際に、店側がレジから出る「利用明細」とは別に、手書きの領収書を発行するケースがあります。
この行為も、利用明細と領収書の両方が経費精算に使えてしまう状態となるため、二重発行のリスクがある行為といえます。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、会社として「原則、領収書の再発行は行わない」という明確な方針を打ち出し、それを周知徹底することが重要です。
取引先から再発行を求められた際には、毅然とした態度で断る姿勢が求められます。

しかし、ビジネス上の関係を考慮すると、ただ断るだけでは相手との摩擦を生むおそれもあります。
その場合は、代わりの手段を提案してみましょう。
たとえば、銀行振込の控えやクレジットカードの利用明細が税法上の証拠として認められることを伝えます。
ほかにも、こちら側ができる協力としては、領収書の再発行ではなく「支払証明書」や「入金証明書」といった書類を別途作成し、渡すことが考えられます。
こうした証明書であれば、通常の領収書とは形式が異なるため、二重計上のリスクを抑えつつ、相手の要望に応えることができます。

そして、もしどうしてもやむを得ない事情で再発行を行う場合には、必ず新しい領収書に「再発行」と記し、備考欄に「〇月〇日発行分の紛失による再発行」と明記しましょう。
これにより、税務調査が入った際にも、それが二重計上を目的としたものではなく、紛失に伴う手続きであることを客観的に示すことができます。

領収書の二重発行は、たとえ悪意がなくても、税務上の大きなトラブルや法的な罰則を招く引き金となるかもしれません。
領収書管理の重要性をあらためて認識し、適切なルールに基づいた運用を心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。