司法書士法人 宮田総合法務事務所

生活保護受給者は相続放棄できるか?

26.03.18
暮らし・人生にお役に立つ情報
dummy

今回は、生活保護受給者が法定相続人となる相続が発生した場合に、相続放棄できるのかどうかについて、簡潔に解説します。

 

dummy

(1)生活保護受給者は、原則として相続放棄できない

生活保護制度は、生活に困窮する者に対し、その困窮の程度に応じ必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする国の制度です。

したがいまして、生活保護受給者が法定相続人となる相続が発生した場合、相続財産を受け取らずに相続放棄をするということは、最低限度の生活を維持するために活用する財産が取得できるのにもかかわらず、その権利を放棄した上で生活保護費を受給することになり、これは生活保護制度の原理原則に反することになります。

 

つまり、遺産を相続してしまうと生活保護費の受給が停止してしまうので、遺産を受け取りたくないという動機・理由だけでは、生活保護受給者は、原則として相続放棄をすることはできません

しかし、個人の権利として、生活保護受給者にも、相続放棄をする権利自体は認められています。

ただし、生活に活用できる相続財産があるにもかかわらず、その財産を受け取る権利を放棄して、国民の税金たる生活保護を受給し続けると、不正受給とみなされてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

 

 

(2)生活保護を受給したままでも相続できる財産

前述の通り、生活保護受給者が生活に活用できる財産を相続で取得すると、生活保護費の受給が停止する可能性があります。

その一方で、遺産を受け取っても、生活保護の受給を継続できるケースがあります。

その代表的な財産は、下記㋐~㋓となります。

㋐少額の財産

㋑居住用に必要不可欠な財産

㋒事業用に必要不可欠な財産

㋓売却・換金することが難しい財産(共有不動産、山林、農地など)

 

逆に言うと、上記㋐~㋓のような財産しかない場合やマイナスの資産(負債)の方が多い場合は、生活保護受給者であっても、例外的に相続放棄することも可能と言えます。

 

 

(3)生活保護受給者が法定相続人になる相続が発生した場合の注意点

①福祉事務所等の担当者に相続が発生した旨を報告する

生活保護受給者が法定相続人となる相続が発生した場合、福祉事務所や市役所の生活福祉課などの担当ケースワーカーに速やかに報告をするべきです。

そして、相続財産の内容や金額により、生活保護の受給を継続できるか否かの判断が必要になりますので、遺産の概要が把握できた段階で、相続人間で行う遺産分割協議の内容や相続放棄の可否等につき、必ず福祉事務所等へ報告・相談をしましょう。

遺産の概要の把握(相続財産目録の作成)については、司法書士等の専門職に相談されるのも良いでしょう。

 

②原則として法定相続分は受け取る

前述の通り、相続人間で遺産分割協議を行う前に福祉事務所等に相談をした上で、受け取る遺産の内容を決めることが原則となります。この際も、司法書士・税理士等の専門職に相談されるのも良いでしょう。

なお、生活保護を受給し続けるために、遺産分割協議であえて法定相続分よりも少ない遺産しか受け取らない場合、不正受給とみなされる可能性がありますので、注意が必要です。

 

③福祉事務所等の担当者に実際に相続した遺産内容を報告する

遺産分割協議に基づき実際に遺産を相続した場合も、福祉事務所等へ報告をしましょう。

なお、生活保護受給者が相続によって遺産を取得したにも関わらず、福祉事務所等への報告をしないで生活保護費を受給し続けると、意図的に報告をしなかった場合のほか、報告するのを忘れていた場合でも、不正受給とみなされる可能性がありますので、注意が必要です。

 

 

 

以上、生活保護受給者が法定相続人となる相続が発生した場合に、相続放棄できる等について、簡潔に解説しました。

 

生活保護受給者が法定相続人となる相続が発生した場合には、福祉事務所や市役所の生活福祉課などの担当ケースワーカーに速やかに報告・相談をするべきですが、遺産や相続人の調査や複雑な相続手続き、遺産分割協議の調整など、生活保護受給者本人やその家族だけでやりきるには、負担や不安が大きい場合は、相続関係に強い司法書士等の法律専門職にご相談されることをお勧めします。