司法書士法人 宮田総合法務事務所

法定後見人選任申立てを専門職に依頼する際の注意点

25.11.20
暮らし・人生にお役に立つ情報
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判断能力が低下・喪失している高齢者や障害者の「財産管理」や「法律行為の代理」、「身上監護権(身上の保護)の行使(※)」などを目的として、家庭裁判所に法定後見人選任申立てをするケースが増えています。

この申立て手続きは、本人や家族がご自身で書類作成して申立てすることもできますが、揃えるべき書類・資料が多く、司法書士・弁護士等の法律専門職に申立て手続きを依頼するケースも多いです。

そこで今回は、法定後見人選任申立てを法律専門職に依頼する際の注意点について分かりやすく解説します。

 

(※)本人の入院先・入所先の選定、介護プランの策定など、本人の意思を尊重しながら、医療療・介護・住まいなど生活全般にわたるサポートを行うための権限を指します。

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≪注意点1≫

家族・親族が後見人に就任できる前提で、誰が後見人になるべきかを検討する

 

インターネットの情報だと、家族・親族が後見人に選任される(これを俗称として「親族後見人」と呼びます)可能性は低いという間違った情報がはびこっているようです。

しかし、実際のところは、家族・親族が後見人候補者として申立てがされた場合、特段の事情がない限り、親族後見人が選任されています

実際、下記㋐~㋒のようなケースですと、家族・親族の候補者が外されて、第三者(司法書士等の法律専門職)が後見人に選任される可能性はあります。

  ㋐後見人候補者が高齢であるケース

  ㋑後見人候補者が就労しておらず収入が少ない(専業主婦の場合は世帯単位で収入を判断)、借金が多いなど経済的に余裕がないケース

  ㋒後見人候補者が被後見人との間で金銭の貸し借り関係など(利益相反関係)があるケース

 

ただ、上記のようなケースでも、家庭裁判所の裁量により、親族後見人を選任する代わりに「後見監督人」を選任するという運用や親族後見人の選任に加え法律専門職も同時に選任するという“複数後見”という運用が行われる可能性もございます。

また、上記㋐~㋒以外にも、被後見人が相続人として参加すべき相続手続きがあるケース、被相続人の保有資産が高額であるケース、近々に不動産の売却手続きが想定されるケース、後見人候補者が遠方に居住しているケースなどにおいても、“複数後見”という形になる場合があります。

 

つまり、最初から親族後見人は選任される可能性が低いとあきらめる必要はなく、親族後見人に就任する意思・覚悟があるのであれば、それを前提に法定後見人の選任申立てをすべきということになります。

 

 

≪注意点2≫

親族に後見人候補者がいない場合や専門職との“複数後見”が想定され得る場合、必ず専門職後見人の候補者を探して、その専門職に申立て手続きを含めて相談・依頼すべき

 

法定後見の実務では、法定後見人選任申立書には、「後見人候補」を記載して申立てることが大原則です。

と言いますのは、後見人候補者を立てずに申立てをしてしまうと、家庭裁判所が勝手に弁護士・司法書士を就けることになりますので、当該専門職について、本人や家族との相性、人柄、能力に“アタリ”・“ハズレ”が存在することになります。

女性の専門職後見人を望んでいたとしても、その希望が叶えられるとは限りませんし、横柄な専門職や、経験の浅い頼りない専門職が就いてしまったと、本人や家族からご相談を受けることも多いのが実情です。

一旦選任された専門職後見人は、重大な健康上の問題でもなければ簡単には辞任できませんし、まして本人や家族から専門職後見人の業務怠慢などを理由に後見人を代えてほしいと家庭裁判所に言ったとしても、要望はなかなか聞き入れてもらえません。

就任した専門職後見人は、原則として被後見人本人が亡くなるまでずっと業務をし続けますので、

本人の生活・人生そのものを支える大事な役割を担う専門職の選定を家庭裁判所に委ねるという“ギャンブル”はすべきではありません。

大事なことは、本人や家族が安心して後見人業務を託せる職業後見人又は専門職法人(司法書士法人など)を自分たちで探して、場合によっては何人も(何事務所も)訪ねてから、「この人がいい!」「この法人がいい!」というのを見つけて、その事務所に申立て手続きから相談・依頼をするという手間をかけることです。

世の中には、法定後見人選任申立て業務はやるけれども、後見人業務はやらない(後見人には就任しない)という法律専門職・専門職法人が多くありますが、後見人候補者がいない場合や専門職後見人との“複数後見”の可能性がある場合は、後見人選任申立て業務だけしかやらない法律専門職・専門職法人に後見人選任申立てのみを依頼することは、避けた方が良いでしょう。

 

 

≪まとめ≫

親族後見人の担い手がいない場合、又は親族後見人と職業後見人との“複数後見”が想定され得る場合には、あらかじめ信頼できる職業後見人候補者を探してから申立てをすることが重要。

そして、申立業務のみを行う専門職ではなく、後見人候補者にもなれる専門職に申立て手続きから後見人就任依頼まで含めて、まとめて相談・依頼するのが理想的。