司法書士法人 宮田総合法務事務所

客層とのミスマッチを防ぐ!『ペルソナ』を設定する重要性

25.08.12
ビジネス【マーケティング】
dummy

営業活動を行う際に、ターゲットがあいまいなままでは、どんなに優れた商品やサービスであっても、その魅力のすべてを伝えることはできません。
結果として時間やコストが無駄になってしまう可能性があります。
このような顧客とのミスマッチを防ぎ、効率的かつ効果的なマーケティングを実現するために不可欠なのが「ペルソナ」の設定です。
ペルソナとは自社の理想とする顧客像のことで、マーケティングにおいては、成功を左右する最重要事項になります。
今回はペルソナの重要性や設定方法などを解説します。

dummy

ペルソナとの乖離による顧客離れのリスク!?

2025年5月、イタリアの高級ジュエリーブランドの展開した大規模なインフルエンサーマーケティングが、一部のユーザーから「ブランドの価値を下げた」と批判され、SNSで炎上する事態に発展しました。
炎上に至った原因の一つとして、ペルソナの設定におけるミスマッチが指摘されています。
ブランドのターゲット層やイメージと、インフルエンサーマーケティングで起用されたインフルエンサーの一部との間に乖離があったため、結果としてブランドイメージに合わないマーケティング施策になってしまったといえます。

このような事例からもわかるように、ペルソナはマーケティング戦略の成否を分けるカギとなります。
「ペルソナ」という言葉は、もともと演劇の仮面を意味するラテン語の「persona」に由来し、心理学の世界では「人が社会に適応するために演じる役割」という意味で用いられてきました。
マーケティングにおいては、商品やサービスの理想的な顧客を具体的に設定し、あたかも実在する人物かのように詳細に描写した顧客像を指します。

ペルソナは、単なる年齢層や性別といった情報だけでなく、その人物の趣味嗜好、価値観、ライフスタイル、購買行動、情報収集の方法、抱えている悩みや課題、目標なども細かく設定します。
架空の人物ではありますが、まるで実際に存在するような具体的な人物像を作り上げることで、マーケティング活動に関わるすべての人が共通の顧客像を認識できるため、購入の意思決定に至るまでの施策を進めやすくなります。

では、なぜペルソナを設定する必要があるのでしょうか。
その最大の理由は、顧客視点に立ったマーケティングを行うためです。
ターゲットが漠然としていると、企業側の視点に偏った製品開発やプロモーションが行われがちです。
ペルソナを設定することで、「顧客はどんな情報を求めているのだろう?」「顧客の悩みは何だろう?」「顧客が喜ぶことは何だろう?」といったように、常に顧客の目線で物事を考えることができるようになります。

この顧客視点を持つことで、どのようなメッセージを、どのチャネルで、いつ、どのように顧客に向けて情報を発信すれば、最も効果的に響くのかが明確になります。
また、ペルソナの悩みやニーズが具体的に把握できることで、顧客が本当に求めている製品やサービスを開発することができます。
同時に、マーケティング部門だけでなく、製品開発、営業、カスタマーサポートなど、社内のあらゆる部署で顧客像を共有するための共通言語となります。
これにより、「誰のために」仕事をしているのかが明確になり、部署間の連携もスムーズにいくでしょう。

ペルソナを正しく設定するための手順とは

ペルソナを設定する際はやみくもに設定するのではなく、手順を踏んで詳細かつリアルな人物像を構築していく必要があります。
まず、ペルソナ設定の第一歩は、徹底的なデータ収集と分析です。
既存顧客のデータ、Webサイトのアクセス解析データ、SNSでの言及、アンケート調査、インタビュー、競合分析など、あらゆる角度から情報を集めます。
これらのデータは、ペルソナにリアリティを与えるための根拠となります。
定性的な情報だけでなく、定量的なデータもあわせて活用することで、より精度の高いペルソナを構築できます。

こうして収集したデータのなかから、共通する特徴や行動パターンを見つけ出し、いくつかのグループに分けます。
たとえば、特定の製品を頻繁に購入するグループ、特定のコンテンツを好んで閲覧するグループなどです。

共通項を洗い出したら、いよいよ具体的なペルソナの項目を設定していきます。
まず、氏名、年齢、性別、居住地、家族構成、職業、役職、年収などの基本情報を決めます。
そして、性格、価値観、趣味、休日の過ごし方、ライフスタイルなどのパーソナリティ、情報収集をする際のツール、製品やサービスを購入する際の重視する点や購買頻度、さらには、悩みや課題、目標や願望など、細かく決めていきます。
これらの項目を決める際には、「なぜそうなのか?」という問いを常に持ち、背景にあるストーリーまで深掘りしていくことが重要です。

ペルソナは架空の人物ですが、データに基づいた現実的な人物像であることが重要です。
自社の都合のよいように、あるいは理想を詰め込みすぎて、現実離れしたペルソナを設定してしまうと、実際の顧客とのずれが生じてしまうので注意してください。
ペルソナ設定の甘さは、ブランドイメージの毀損やマーケティング施策の失敗につながるおそれがあります。

ペルソナを軸としたマーケティング戦略は、顧客との強い絆を築くことにつながります。
ペルソナが設定されていないのであれば、まずは、できる範囲から自社の顧客データを収集・分析してみるところから始めてみましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。