労働環境改善や生産性向上のための設備投資を行う中小企業を支援
業務改善助成金は、中小企業の生産性向上を支援するために設けられた制度です。
日本の経済成長を持続させるためには、企業の競争力を高めることが不可欠であり、特に中小企業は、限られた資源のなかで効率的な運営を求められています。
この業務改善助成金は、労働環境の改善や設備投資を通じて、企業の生産性を向上させることを目的としています。
業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業が労働環境の改善や生産性向上を図るための設備投資を支援する制度です。
具体的には、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資などを行なった場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度で、最大で600万円の助成金を受給することができます。
この助成金を活用することで、企業は効率的な運営を実現し、競争力を高めることができます。
【支給対象事業主】
・中小企業・小規模事業者(資本金や従業員数などで定める中小企業の範囲内であること)
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
・解雇、賃金引下げなどの不交付事由がない
※特例事業者
以下の要件に当てはまる場合、特例事業者となります。
また、(2)の要件に該当する場合は、助成対象経費の拡充も受けられます。
(1)賃金要件:申請事業場の事業場内最低賃金が1,000円未満である事業者
(2)物価高騰等要件:原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化などの外的要因により、申請前3カ月間のうち任意の1カ月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者
【支給要件】
事業所内最低賃金の引上げ計画と設備投資などの計画を立てて申請すること
※工場や事務所など事業場ごとに申請する必要があります。
【申請期限と賃金引上げの期間】
第2期
申請期間:令和7年6月14日~申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日
賃金引上げ期間:令和7年7月1日~申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日
事業完了期限:令和8年1月31日
※第3期以降の募集を行う場合、別途、厚生労働省のホームページにてお知らせがあります。
【対象となる設備投資など】
対象事業場において、生産性向上に役立つ設備投資などが助成の対象となります。
以下が、主な例です。
機器・設備の導入:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮/リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
経営コンサルティング:国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し
その他:顧客管理情報のシステム化
【助成額(上限額)】
「事業場内最低賃金の引上げ額」および「引き上げる労働者数」によって変わります。
括弧内の金額は、事業場規模30人未満の事業者の場合です。
・30円コース(事業場内最低賃金30円以上引上げ)
1人 30万円(60万円)
2~3人 50万円(90万円)
4~6人 70万円(100万円)
7人以上 100万円(120万円)
10人以上 120万円(130万円)
※10人以上の上限額区分は、特例事業者が、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。
上記はあくまで一例で、45円コース、60円コース、90円コースがあり、引上げ額、労働者数によって上限額が違います。
※引き上げる労働者数の数え方
(1)事業場内最低賃金である労働者
(2)事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者が「引き上げる労働者」に算入されます。
(ただし、いずれも申請コースと同額以上賃金を引き上げる必要があります。)
【助成率】
事業場内最低賃金の金額によって変わります。
1,000円未満:4/5
1,000円以上:3/4
【支給助成金額の計算方法】
助成される金額は、生産性向上に資する設備投資などにかかった費用に助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、いずれか少ない金額となります。
【申請にあたっての注意点】
・地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げる必要があります。
・引上げ後の事業場内最低賃金と同額を就業規則に定める必要があります。
※たとえば、10月1日に新しい地域別最低賃金(1,000円→1,050円)が発効される場合は、発効日の前日の9月30日までに事業場内最低賃金の引上げを完了し、あわせて就業規則などに事業場内最低賃金が1,050円である旨を定める必要があります。
・複数回に分けての事業場内最低賃金の引上げは認められません。
・交付決定前に助成対象設備に導入した場合は、助成の対象となりません。
【終わりに】
業務改善助成金は、設備導入による業務の効率化、賃金引上げによる従業員のモチベーションアップなど、事業者と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。
賃金アップと職場の改善により従業員の定着率アップにもつながり、安定した雇用環境が整うことが期待されます。
「人手不足で生産性向上が求められている」「従業員の待遇を改善したいが、投資に踏み出せない」といった課題を抱える中小企業こそ、本助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
※本記事の記載内容は、2025年7月31日現在の法令・情報等に基づいています。