会社に仕返し!?『リベンジ退職』による被害を防ぐには
近年、会社への『仕返し』を目的に、意図的なトラブルを起こして退職する従業員が増えてきました。
組織に大きな損害を与える「リベンジ退職」は、企業側にとっても看過できない問題となっています。
なぜ、従業員は会社に恨みを抱き、このような行動に出てしまうのでしょうか。
企業がリベンジ退職を防ぐには、その内容や背景を理解しておかないといけません。
リスク管理という観点からも重要な、リベンジ退職の対処法と予防法を解説します。
企業側が受けるリベンジ退職による被害
リベンジ退職とは、従業員が退職する際に、会社に対する不満や恨みから、意図的に業務に支障をきたしたり、企業に損害を与えたりする行為を指します。
具体的には、顧客情報の流出や機密データの持ち出し、SNS上での誹謗中傷、業務の引き継ぎの拒否、悪意のある情報拡散などがあげられます。
こうした行為は、単なる迷惑行為にとどまらず、企業の評判を著しく傷つけ、経済的な損失をもたらす可能性があります。
顧客情報や機密データが競合他社に渡れば、企業の競争力が低下して売上に影響が出かねませんし、SNSで悪評が広がれば、企業はブランドイメージを回復するために多大な時間と労力を要することになります。
こうしたリベンジ退職が起きる背景には、従業員が会社に対して抱く「不満」や「不公平感」が大きく関わっています。
長時間労働、ハラスメント、不当な評価、給与への不満、人間関係の悪化など、日々の業務のなかで従業員が積み重ねてきた負の感情が、退職という節目で爆発してしまいます。
また、自由に意見を言えず、不満や問題を上司や会社に相談できない環境では、従業員が不満を内に溜め込んでしまいます。
結果として、その不満が限界に達したときに、リベンジ退職という形で表れてしまうというわけです。
さらに、現代社会における転職市場の活性化も無関係ではありません。
終身雇用という概念が薄れ、転職が当たり前になったことで、従業員は以前よりも気軽に会社を離れることができるようになりました。
そのため、不満を抱えながらも我慢して働き続ける必要がなくなり、退職を機に会社への不満をぶつける行動に出るケースが増えているといわれています。
もちろん、インターネットやSNSの普及も、リベンジ退職を助長する大きな要因となっています。
匿名で情報を発信できる環境が整ったことで、従業員は会社に対する中傷的な投稿や社内情報の漏洩を簡単に拡散できるようになりました。
リベンジ退職の対処法と予防法
もし、リベンジ退職が起きてしまった場合、企業は迅速かつ冷静に対応しなければいけません。
最も重要なのは、被害の拡大を最小限に食い止めることです。
情報漏洩が疑われる場合は、直ちにシステムへのアクセス制限を行い、漏洩経路の特定とデータの保全を行いましょう。
SNSでの誹謗中傷であれば、対象となる投稿の削除依頼を行うと共に、今後の対応について法的な措置も視野に入れる必要があります。
情報漏洩や名誉毀損など、企業に明確な損害が発生している場合は、民事訴訟や刑事告訴といった法的手段を通じて、損害賠償請求や刑事責任の追及を検討することになります。
その際には、専門家である弁護士などと連携し、適切な手続きを踏むことが必須です。
このようにリベンジ退職が起きた際の対処法を考えておくことも大切ですが、一番重要なのはリベンジ退職が起きないようにすることです。
まず、社内のコミュニケーションを活性化し、従業員が安心して意見を言える環境を構築しましょう。
定期的な面談、アンケートの実施、気軽に話せる休憩スペースの設置など、従業員が抱える不満や不安を早期に察知し、解決できる仕組みを整えます。
特に、部下が上司に対して、「この人にだったら相談できる」と思えるような信頼関係がしっかり構築できていると、リベンジ退職が起きる可能性は低くなります。
人事評価制度や報酬制度の透明性を高めることも重要です。
従業員が「なぜ自分はこのような評価なのか」「なぜあの人は昇進したのか」といった疑問を抱かないよう、評価基準を明確にし、フィードバックを丁寧に行うことで、不公平感を解消することができます。
納得感のある評価は、従業員のモチベーション向上にもつながります。
また、ハラスメント対策も徹底します。
セクハラ、パワハラ、モラハラなど、あらゆるハラスメントを許さない企業文化を醸成し、相談窓口の設置や研修の実施を通じて、従業員が安心して働ける環境を構築しましょう。
各種ハラスメントは従業員の心に深い傷を残し、リベンジ退職の大きな要因となり得ます。
リベンジ退職は、現代社会において企業が直面する新たなリスクであり、その被害は計り知れません。
そして、リベンジ退職が生じる根底には、従業員のエンゲージメントの低下があります。
従業員が安心して意見を言える環境を整え、公正な評価と適切な報酬を提供し、ハラスメントのない健全な職場環境を築くことが、リベンジ退職を未然に防ぐことにつながります。
※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。