「家族信託」実行までの流れと所要日数は?
「家族信託」をご検討中の方から、これから先どのように手続きを進めていけばよいのか、家族信託を実行するまでの手続きの流れや所要日数について、よくご質問をいただきます。
そこで本稿では、高齢の両親の財産管理について、家族信託を実行(信託契約を締結)するまでの手続きの流れ・所要日数などを簡潔にご紹介します。
【家族信託の手続きの流れ】
①親の保有資産・収支状況を家族内で情報共有する
まずは、現状把握が将来への備えの第一歩です。
親の現在の保有資産状況を家族全員が集う“家族会議”においてオープンにすることが理想であり、前提であるとも言えます。
また、現在の収支状況及び将来的な収支予測についても、家族内で情報共有することが重要です。
②親の老後生活や資産承継に関する希望や想い、支える家族側の希望を家族内で話し合う
次に、親世代がこの先、どこでどのような生活をしたいか、保有資産をどのように管理・運用・処分・承継したいかなどの希望・想いを“家族会議”において家族全員にしっかりと伝えること、そして親を支える子側の各々の希望も親・兄弟に対して伝えることが大切です。
③家族の希望や想いを実現するための施策を検討する(このまま何もしないで希望や想いが実現できるか検証する)
上記①により、現有資産と将来的な収支を把握した上で、このまま何の備えをしないことのリスクや上記②の希望や想いが実現できるのかということを家族全員で検証することが必要です。
その結果、将来において起こり得るお困りごとを未然に防ぐ手立て(施策)が必要だとなれば、この分野に精通した法律専門職にアドバイスを受けながら、家族全員で取り得る選択肢を検討することになります。
④家族信託の設計を検討する
上記③で取り得る施策を検討した結果、「家族信託」が有効な手段だという結論になれば、家族信託に精通した法律専門職主導のもと、家族信託の設計と信託契約書の文案の作成・推敲作業に入ります。
この工程もできる限り“家族会議”の中で、家族全員が理解・納得するまで何度でも行うことが理想です。
⑤信託契約公正証書を作成する
家族の理解・納得が得られ、信託契約書案が固まりましたら、“信託口口座”を作成したい金融機関に対して信託契約書のリーガルチェック(法的整合性の有無の審査)を受けると共に、公証役場に文案と資料を提示して、信託契約公正証書の作成の準備を進めてもらうことになります。
⑥受託者による分別管理を開始する
信託契約公正証書が作成できましたら、各信託財産につき受託者への引渡しを行うことになります。
信託財産たる不動産については、登記簿上に管理を担う「受託者」の住所氏名を記載する信託登記をする必要があります。
信託財産たる金銭や有価証券については、既にリーガルチェックを受けている金融機関(銀行・証券会社等)で受託者が“信託口口座”を作成し、その口座に委託者たる親が預金や有価証券類を送金・移管をすることで受託者の管理下に移します。
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【家族信託実行までの所要日数】
一般的には、3ヶ月前後を一つの目安として考えていただいております。
とは言え、老親の体調悪化・認知症進行のリスクを踏まえ、緊急性があるかどうか、家族会議のスケジュール調整に難航するかどうかで大きく変わってきます。
【まとめ】
大事なことは、何度でも家族会議を開いで、家族内で情報を共有した上で、オープンな意見を出し合い、家族の全員が安心・納得できる結論を出すことだと考えます。
そうすれば、結果として、何の施策も実行しない(安心の老後と円満円滑な資産承継に向けて、特段新たな仕組みは作らない)という結論が出たとしても、その家族にとって、リスクやお困りごとが生じるリスクは少ないということになるでしょう。
もちろん、家族関係が一部破綻して、紛争性のある家族も少なくありませんので、その場合は、親世代と一部の子で、将来の紛争の火種をどう最小化するかに注力することもあります。
以上、本稿では家族信託の実行までの手続きの流れと一般的な所要日数につき、簡潔にご紹介しました。