「農地」は家族信託できるか?
高齢の親が田や畑を所有している場合、老親の認知症による資産凍結対策として、農地を家族信託できるのか気になる方も多いでしょう。
そこで今回は、農地を家族信託の信託財産として取り扱うことができるかについて簡単に解説します。
◀農地は自由に譲渡ができない▶
そもそも、田や畑といった「農地」は、農地を適切に維持すべきという国策を受けて、「農地法」という法律によって用途変更や処分に関して制限がされています。
そのため、農地の所有者は、自由に「賃貸」「売買」「贈与」することが制限され、農地法が定める許可又は届出の手続きを経ないと法律行為の効力が生じないことになっています。
より具体的には、管轄する農業委員会に対して許可又は届出の手続きをすることにより、初めて有効な賃貸や譲渡をすることができることになります。
家族信託を実行することは、受託者に“信託譲渡”することを意味します。つまり、信託も「譲渡」の一つの形態であり、農地を家族信託の信託財産として取り扱うためには、農業委員会の許可又は届出の手続きを経ることが必要になります。
◀農地は家族信託できる?▶
農地は、原則として、「所有者自身が耕作をする」または「他人に耕作させる(いわゆる“小作”)」ということしか想定しておらず、他人に農地を「信託」するということはできないとされています(農地法第3条第2項第3号)。
つまり、農地を有効に信託譲渡するには、農地法が定める許可又は届出が必要となりますが、農地法においては基本的に信託することを認められていないので、その結果、農地は信託できないというのが原則的な取扱いです。
ただし、その例外として、農地を農地以外に転用する(例えば、農地を宅地や駐車場などの用途に現況を変更する)ために、信託契約に基づいて受託者がその転用手続きを担うケースが考えられます。
この場合は、農業委員会の手続き(農地法第5条の許可又は届出)を経れば、農地を信託する(農地に信託の効力を及ぼす)ことができることになります。
つまり、農地に関する信託契約は、農業委員会の手続きを経ることを条件として発動できる“条件付き信託契約”ということになります。
より実務的なお話をすると、“市街化区域”にある農地は、農業委員会への届出(農地法第5条の転用目的権利移転の届出)を受理してもらえれば、信託契約の効力を農地に及ぼすことができ、それに伴い、信託登記をすることにより農地の不動産登記簿 にも受託者の住所・氏名を記載することができることになります。
◀結 論▶
農地は農地法によって規制されているため、原則として家族信託をすることができませんが、一定の要件を満たすことで家族信託できる可能性がありますので、最初から諦めてはいけません。
市街化区域内の農地であれば、農業委員会への届出をすることにより、農地のまま信託財産に入れることも可能となり、信託の受託者が農地転用・非農地化の手続きをすることができます。
まずは、信託法や家族信託の実務、農地法・農地転用等に精通した司法書士・行政書士をはじめとした法律専門家に相談すると良いでしょう。
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以上、今回は、農地を家族信託の信託財産として取り扱うことができるかについて簡単に解説しました。
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