相続税法改正による“タワマン節税”への影響とは?
将来の相続税負担を軽減するために、“タワマン節税”をお考えの方もいらっしゃるでしょう。
ただ、2024年の相続税法の改正により、マンション評価額の計算方法について変更があったため、その影響を把握しておくことが大切です。
そこで今回は、相続税の改正による“タワマン節税”への影響を簡潔に解説します。
〜相続税法の改正による“タワマン節税”への影響〜
タワーマンションは、マンションの底地となる土地の面積に対して総戸数が多いため、各区分所有建物に割り当てられる土地の持分が少なくなり、高額な購入額(時価)に比べ、相続税評価額が低くなります。
つまり、1億円の現預金を保有したまま相続を迎えれば、1億円の相続税評価額となりますが、時価1億円のタワーマンションの1室(区分所有建物)を購入してから相続を迎えると、その相続税評価額は数千万円に抑えられることがあります。
この「相続税評価額」と「時価」の価格差を利用した相続税の節税策がいわゆる“タワマン節税”と言われる手法です(戸建住宅の相続税評価額は、一般的に時価の約60割程度であるのに対し、マンションの場合は約4割程度と言われていました。)。
このタワマン節税が多用されることによる相続税課税の不公平感を是正すべく、国税庁は、令和6年1月1日から、相続や贈与によって取得したマンションの評価額の計算ルール(評価方法)を変更しました。
ルール改正後は、マンションの相続税評価に「評価乖離率」と「評価水準」という新たな指標が加えられています。
この新たな指標により、相続税評価額とマンションの市場価格の乖離率が1.67%以上の場合は、相続税評価額が市場価格の60%に補正されることになりました(60%という数値は戸建ての評価額と市場価格の平均乖離率をもとに設定されています)。
改正されたルールでは、築年数が浅く高層階にあるマンションほど評価乖離率が大きくなるように設定されているため、タワマン節税で大幅な相続税負担の軽減が見込めなくなってしまいました。
〜タワマン節税以外の対策も検討しましょう〜
前述のとおり、相続や贈与によって取得したマンションの評価額の計算ルールが改正されたことで、タワーマンションの購入による大幅な相続税の節税効果は狙いづらくなりました。
ただ、相続税対策として、金融資産をタワーマンションを含めた不動産に組み替えることで相続税評価額を下げるという施策は、引き続き有効ではあります。
特に、金融資産を賃貸不動産に組み替えるという手法は、タワーマンションに限らず、賃貸アパートであっても、相続税の節税効果と有効な資産運用(利回り向上)として、長きにわたり活用されています。
とは言え、相続税対策を主たる目的として不動産購入をする際には、その節税効果と当該不動産の将来性・収益率を考慮した慎重な判断が求められます。
また、不動産購入だけに頼るのではなく、様々な施策を組み合わせて節税対策を進めていくことが重要になると言えるでしょう。
例えば、「生命保険(死亡保険金)」の活用は代表的な相続税対策の一つです。
生命保険金受取人を相続人に設定していれば、死亡保険金のうち「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。
他にも、各種の「生前贈与(相続時精算課税制度の基礎控除枠110万円を利用した毎年の贈与や法定相続人以外の者への暦年贈与、住宅取得等資金贈与、相続税と贈与税との適用税率の差を利用した贈与税納税を前提とした暦年贈与など)」を活用して、相続税の課税対象となる財産を減らしておくことも節税対策の一つです。
ただし、これらの施策には税務の専門的知識が不可欠であり、安易に進めてしまうと、より良い施策を見逃してしまったり、かえって節税メリット(各種特例)を享受できないという事態も起こりかねません。最適な相続税対策を進めるためにも、専門家への相談がおすすめです。
当事務所では、信頼できる相続税申告・相続税対策に強い税理士・税理士法人のご紹介も可能ですので、相続発生の前(老い支度)の段階でも、相続発生後のタイミングでも、相続に関連した事柄で何かお困りの際は、一度当事務所にご相談ください。