司法書士法人 宮田総合法務事務所

信託銀行の遺言信託サービスを利用する際の注意点とは?

25.04.22
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信託銀行の“遺言信託サービス”は、遺言公正証書の作成サポートや保管、執行業務までを信託銀行が担うサービスの総称ですが、このサービスを利用する際にはいくつかの注意点があります。

そこで今回は、相続発生後にトラブルにならないように、信託銀行の“遺言信託サービス”を利用する際の注意点を一部ピックアップして紹介します。

〜信託銀行の“遺言信託サービス”を利用する際の注意点〜

信託銀行の“遺言信託サービス”を利用する際には、事前に下記のポイントについて、しっかりと理解をしておくことが重要です。

なお、“遺言信託サービス”は、信託銀行が主たる担い手ではありますが、都銀自らが遺言執行者になるケースや、都銀・地銀が信託銀行の信託代理店として信託銀行を遺言執行者とする“遺言信託サービス”の媒介を行うケースもあります。したがいまして、ここからは、「信託銀行」ではなく「金融機関」という表記でご説明します。

 

(1)  円満な家族関係でないと執行業務を引き受けてもらえない可能性がある

“遺言信託サービス”を提供する金融機関によってその取扱い基準が異なりますが、遺言書の中で遺言執行者に指定された金融機関は、遺言者が亡くなった後、その金融機関が遺言執行者に就任することにつき相続人全員から承諾をもらえないと執行業務に着手しない運用があるようです。

 

遺言者は、大手企業である金融機関だからこそ遺言者の“遺志”である遺言内容を確実に実現してくれるとの信頼感に基づき、高い報酬を金融機関に支払って“遺言信託サービス”を申し込んだはずです。ところが、いざ相続が発生すると、家族間(法定相続人間)の関係性が悪いという理由で執行者への就任を辞退するということは、大変由々しき問題であり、後のトラブルリスクが有ると言えます。

この点を踏まえ、紛争性のある家族の場合は、そもそも金融機関を遺言執行者とする“遺言信託サービス”で“遺志”が実現できるのかを申し込みをする前にしっかりと確認すべきです。

相続人間の確執紛争が多分に想定される場合は(家族間の関係性の良し悪しに関係なく円滑な資産承継を目指すのであれば)、金融機関の“遺言信託サービス”を利用するのではなく、司法書士・弁護士等の遺言執行業務に精通した法律専門職に遺言執行業務を依頼しておく(実務的には、遺言書の中で当該専門職を遺言執行者に指定しておく)方が安心と言えるでしょう。

 

(2)遺言書作成から遺言執行までの総費用が高額になるリスクがある

金融機関の“遺言信託サービス”は、一般的に㋐遺言書作成報酬 ㋑遺言書保管費用 ㋒遺言執行報酬の3つの手数料が発生します。㋐の作成報酬は数十万円から100万円、㋑の保管費は毎年数千円〜数万円程度、㋒の執行報酬は最低100万円から遺産総額に応じて数百万円、というのが一般的な相場でしょう。

一方で、遺言書作成コンサルティング業務・遺言執行業務等に精通した法律専門職に依頼した場合、遺言書作成報酬は、一般的な相場としては金10~20万円程度が想定されますので、金融機関に依頼するよりは安価で遺言書を作成できることは間違いないでしょう。

また、相続発生後に発生する遺言執行報酬につきましても、金融機関の執行報酬は、司法書士をはじめとした法律専門職に依頼する場合と比較して、費用が高額になるケースが多いため、事前に総額を確認し、遺される家族が納得できる費用か、本当に必要なサービスかを検討することが重要です。
なお、遺言執行者は、金融機関や法律専門職でなければなれない訳ではなく、未成年者でなければ、家族を指定しておくことも可能です。

 

(3)遺留分を侵害する内容の遺言を作成してもらえない

遺留分を侵害している遺言でも法的には有効です。
遺留分を抵触する遺言があった場合、遺言の効力が生じてから、遺留分を侵害された側から遺留分侵害額請求をして、遺留分相当額の金銭を取り戻すアクションが必要になります。

しかし、金融機関としては、遺留分を侵害する遺言内容の作成に関与してはならないという経営上の制約があるため、遺言者には「遺留分を侵害する内容の遺言書は作成できない」という誤解を与えかねない説明をすることがあるようです。そうすると、遺言者としては、不本意ながら、遺留分の権利を持つ相続人に対して、遺留分相当額は相続させるような内容の遺言を作成させられてしまうケースも少なくないようです。

前述のように、遺留分を侵害する内容の遺言も法的有効性には全く影響を受けませんので、司法書士や弁護士のような法律専門職が遺言書作成のサポートする場合は、遺留分を侵害する遺言も普通に作成します。
その上で、法律専門職としては、後々の法的トラブル(遺産争い)を最小限に抑えるため、“遺留分対策”を遺言書作成とセットでご提案し実行のお手伝いすることが一般的です。

 

 

以上、今回は信託銀行の“遺言信託サービス”を利用する際の注意点を一部ピックアップして紹介しました。

 

遺言書作成や遺言執行に限らず、相続全般に関してご不安な方・お悩みの方・お困りの方は、お気軽に司法書士・行政書士が多数在籍する【司法書士法人 宮田総合法務事務所】までご相談ください。