家族信託と任意後見の使い分けのポイントとは?
「家族信託」と「任意後見」は、いずれも本人の判断能力が不十分になった事態に備える手段(財産管理の仕組み)として有効ですが、この2つの仕組みのどちらを利用すべきか、どのように使い分けたら良いのか、お悩みの方は多いです。
この2つの仕組みにはそれぞれ特性があり、家族構成や保有財産の状況、本人及びご家族のご要望に応じて使い分けることが重要になります。
そこで今回は、家族信託と任意後見の使い分けのポイントを一部ピックアップして紹介します。
≪家族信託と任意後見の使い分けのポイント≫
◆財産管理事務の負担の大小 ~柔軟性と堅実性~
任意後見は成年後見制度という国の仕組みの一つですので、その仕組みの信頼性を保つために、任意後見監督人が任意後見人の財産管理業務等を定期的にチェックします。
言い換えますと、任意後見人は、任意後見監督人(その後ろには家庭裁判所がいる)に対して年に数回、本人の財産および収支状況を報告する必要があり、この事務負担は小さくありません。ただ、これにより客観的にみて堅実性のある財産管理(資産運用などは不可)が実現できますので、それをご希望の方にはいい仕組みと言えるでしょう。
一方の家族信託は、家庭裁判所などの公的機関の関与や監督はなく、その設計次第では、家族内で完結する財産管理の仕組みとなります。
つまり、円満な家族関係であれば、信頼関係に基づき、管理事務の負担を最小限に抑え、かつ任意後見ではできない柔軟な財産の管理と処分(積極的な資産運用や資産の組換え)も可能となります。
◆ランニングコストの有無
任意後見の場合、弁護士・司法書士などの法律専門職が必ず「任意後見監督人」に就任して、財産管理等の監督・確認を行います。
そのため、家族が任意後見人になったとしても、任意後見監督人報酬として月額1~2万円が必ずランニングコストとして発生することを覚悟しなければなりません。
一方の家族信託は、導入する際に公証役場の手数料や登録免許税等の実費と専門職へのコンサルティング報酬などで、それなりのまとまったコストがかかります。
しかし、家族信託の設計によっては、ランニングコストは一切発生しないようにすることもできますので、老親を看取るまでの長期的なスパンでの総コストを考えますと、家族信託の方が経済的なケースもあります。
◆身上監護権の有無
家族信託と任意後見では、身上監護権の有無も使い分けのポイントとなります。
任意後見人は、財産管理や法律行為の代理に加え、身上監護の権限(入院・入所先の決定や契約関係、介護サービスの策定など)も持っていますので、本人の生活全般にわたって支援をすることが可能です。
一方の家族信託は、財産管理の仕組みですので、身上監護の権限を託すことはできません。
したがいまして、家族内で老親の介護方針・入所先の選定などで意見が対立することが想定される場合(既に方針の対立が顕在化している場合も)、任意後見契約を締結して、将来の身上監護の権限を確保しておくことは大きな安心に繋がるでしょう。
見方を変えると、家族関係が円満な場合は、後見人としての身上監護権を行使しなくても、家族の立場で入院・入所契約をしたり、介護プランの策定に関与ができますので、家族信託で財産の管理・処分権限だけを確保しておけば、成年後見制度は使わないで、老親の生涯を支えきることはできる可能性が高いと言えます。
以上、今回は、家族信託と任意後見の使い分けのポイントを一部ピックアップして紹介しました。
「家族信託」と「任意後見」のどちらの仕組みを利用すべきか、どのように使い分けたら良いのか、お悩みの方・お困りの方は、家族信託と任意後見のスペシャリストである当事務所に是非ご相談ください!!
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