遠方の不動産を相続した場合の『相続登記』の手続き
離れて暮らす親族が亡くなるなどして、遠方にある不動産を相続するケースは少なくありません。
不動産を相続する際には、所有者の名義を変更するために「相続登記」を法務局に申請する必要があります。
しかし、不動産の名義を変更するためには、その不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記の申請をしなければいけません。
遠方の不動産を相続することになった場合に備えて、必要な手続きや不動産の活用法などを解説します。
遠方の相続登記はどこの法務局で申請する?
東京をはじめとした首都圏に人口が集中することによって、地方圏は空き家や空き地が増え続けています。
たとえば、東京23区や名古屋市などの都市部では空き家率が10%未満の自治体が多い傾向にありますが、地方では10%を超えている市区町村がほとんどというデータがあります。
不動産所有者の高齢化も進んでおり、別世帯で暮らす子どもが、親が暮らしていた実家を相続するというケースも人ごとではなくなってきました。
もし、自分が今暮らしている場所から遠く離れた土地の不動産を相続することになったら、どうすればよいのでしょうか。
まず、被相続人が亡くなり遺言書がない場合、戸籍謄本などを取得して相続人を確定後、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決める必要があります。
その後、相続登記に必要な書類を揃え、司法書士に依頼して相続登記の手続きを進めていきます。
相続登記の申請はどこの法務局でもよいわけではなく、原則として不動産の所在地を管轄する法務局で申請しなければいけません。
法務局は全国に8カ所あり、その法務局の下には概ね各都道府県を単位とする地方法務局が42カ所あります。
さらにこれらの法務局の出先機関として支局と出張所があり、相続人は該当する法務局や支局で手続きすることになります。
ただし、わざわざその不動産の所在地を管轄する法務局の窓口まで直接出向く必要はありません。
相続登記の申請は、法務局の窓口のほかに、郵送やオンラインでも受け付けています。
現地まで行かずに済む郵送とオンライン申請
相続登記を郵送で行う場合は、送付した申請書や必要書類が法務局に到着した日が申請日になります。
法務局まで足を運ぶ必要はありませんが、書類に不備があった場合などは、書類を差し替えたり、また、登記申請自体を取り下げたりして再度相続登記を申請し直すなど、手間がかかってしまいます。
窓口で申請するよりも時間がかかるので、余裕を持って準備を進め、書類の不備もないようにしましょう。
オンラインで申請する場合は「登記・供託オンライン申請システム」を使用します。
パソコンやインターネットにつながる環境はもちろんですが、マイナンバーカードやカードを読み取るための機器であるICカードリーダーなども準備する必要があります。
また、申請はオンラインで行うことができますが、必要書類の提出はオンライン申請を行なった受付日から2日以内に法務局へ郵送などで送付しなければいけません。
オンライン申請は個人で行うことも可能ですが、パソコン操作に関するある程度の知識が必要になるため、一般的には専門家である司法書士に依頼します。
オンライン申請は全国どの地域の司法書士であっても、基本的には対応が可能です。
費用や相談のしやすさなどを踏まえて、依頼を検討してみるとよいでしょう。
相続した遠方の不動産の活用方法を考える
不動産には固定資産税がかかるため、遠方の不動産を相続した場合は、何かしらの活用方法を考えておいた方がよいでしょう。
賃貸物件としての運用や短期の貸出などは、一定の収入が期待できるものの、賃借人との契約管理や物件の維持管理が必要です。
地元の不動産管理会社に運用を委託する方法もあるので、まずは相談してみることをおすすめします。
収益化も考えておらず、自分でも使用する予定がないのであれば、売却を検討しましょう。
不要な土地であれば、売却することで現金を得られますし、固定資産税の負担も減らせるでしょう。
通常、不動産の売買契約は売主と買主、不動産業者の立ち会いのもと行われます。
仲介する不動産会社が売主と買主を別々に訪問して契約し関係者に契約書を郵送する「持ち回り契約」や、不動産の近くに住む親戚や知人が代わりに立ち会い、依頼された不動産会社などが代理人として取引する「代理契約」などによって、売主が現地に足を運ばなくても売却することは可能です。
遠方の不動産は相続登記の手続きもさることながら、相続後も手間がかかるものです。
相続を予定しているのであれば、不動産を活用するのか処分するのか、その後の対応についても具体的に決めておきましょう。
※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。