司法書士法人 宮田総合法務事務所

売買契約における『契約不適合責任』を回避するには

25.02.25
ビジネス【企業法務】
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売買契約において、提供した商品やサービスに欠陥があり、契約内容と異なる場合に、売主は「契約不適合責任」を負う可能性があります。
商品が不良品だったケース以外にも、引き渡しの個数が間違っていたり、そもそも違う商品だったりする場合にも、売主は買主から契約不適合責任を問われます。
契約不適合責任を問われる場面は、企業の信用失墜や多額の損害賠償請求につながる重大な局面かもしれません。
契約不適合責任のリスクと、責任を回避するための対策を把握しておきましょう。

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契約不適合による売主の責任とダメージ

2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」の用語が改められ、「契約不適合責任」となりました。
契約不適合責任とは、売主が売買契約で約束した種類・品質・数量などの内容と、買主に引き渡した商品やサービスが一致しない場合に、売主が負うことになる責任のことです。
契約不適合責任は売買契約以外にも、請負契約などでも生じる責任です。
たとえば、請負人が完成した成果物を納品した際に、契約内容に適合していない場合、請負人は契約不適合責任を問われる可能性があります。

請負契約における契約不適合が請負人の信用を失う行為であるのと同じく、売買契約における契約不適合も、売主である企業の信用を失墜させ、ブランドイメージを大きく損なうおそれがあります。

さらに、契約不適合があった場合、買主は売主に対して下記の4つを請求する権利があります。
まず、売買契約に契約不適合があったことで損害を被った場合、買主は「損害賠償請求」を行うことができます。
また、受け取った商品の不具合の修正や、欠陥のない代替品の提供を売主に求めることもできます。
これを「追完請求」といいます。
そして、売主が追完請求に応じない場合は、提供を受けた商品やサービスの減額を求める「代金減額請求」や、売買契約を解除して代金の返還を求める「契約解除」などを求めることになります。
この4つの請求は民法に基づく買主の権利です。

ちなみに、買主がこれらの権利を主張するためには、不具合を知ったときから1年以内に売主に通知しなければいけません。
この期間は民法に基づくもので、企業同士の場合は商法が適用され、買主は目的物を受け取るとすぐに検査をして不具合を発見すれば直ちに通知しなければなりませんし、不具合を直ちに発見できなかったときにも、契約時から6カ月以内に発見した場合には直ちに通知する必要があります。
ただし、この期間は契約の内容によって変更することが可能です。

こうした請求に対して、売主は誠実に対応しなければいけません。
もし、対応を怠った場合は、取引先との関係が悪化し、新たな取引の獲得がむずかしくなる可能性もあります。
ケースによっては法的なトラブルに発展したり、大規模な製品回収が必要になったりすることもあるでしょう。
対応に多大な費用と時間がかかる契約不適合は、売主の事業の根幹を揺るがす事態にもなりかねないことを認識しておくことが大切です。

品質管理の徹底や情報開示でリスクを減らす

契約不適合責任が発生する原因はさまざまです。
製造過程における品質管理不足や、検査体制の不備など、品質管理の不徹底は不良品が市場に出回ってしまう要因の一つです。
食品における異物混入や材料の不良による品質の劣化などは、品質管理の不徹底により引き起こされます。

また、商品の性能や特徴について、重要な情報を適切に開示していない場合、買主が誤った判断をしてしまい、契約不適合と判断される可能性もあります。
たとえば、中古車の販売における過去の修理履歴や、家電の販売における保証期間など、売買契約時に売主が取引の対象となる商品やサービスの状態や特性について正確かつ十分な情報を提供することが重要です。
さらに、契約書に記載された内容が曖昧であったり、抜け漏れがあったりする場合にも、トラブルが発生しやすくなります。

契約不適合責任を回避するためには、不良品を出さないように品質管理を徹底し、適切な情報を開示すると同時に、契約書に商品の種類、品質、数量、納期などを具体的に明記し、双方の権利・義務を明確にしておきましょう。
また、取引先との連携を密にし、普段からコミュニケーションを取ることは、被害の拡大を防ぐことにもつながります。

契約不適合責任は契約内容との適合性を基準とし、売主の責任をより明確に判断するためのものです。
企業にとって大きなリスクとなる契約不適合責任を回避するためにも、品質管理の徹底や取引先との密接なコミュニケーションなどを普段から心がけておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。