司法書士法人 宮田総合法務事務所

国際結婚で生まれた子どもの国籍はどうなる?

25.02.25
ビジネス【法律豆知識】
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国際結婚の増加によって、日本人と外国人の間に生まれる子どもも増えています。
国際結婚で生まれた子どもは母親と父親のどちらの国の国籍になるのでしょうか?
両親のどちらかの国籍になる場合や、生まれた国の国籍になる場合などがありますが、いずれにせよ各国で定められているルールに従わなくてはいけません。
日本では「国籍法」という法律が国籍を決めるうえで重要になります。
今回は、国際結婚を考えている方や国際結婚している方に向けて、日本人と外国人の間に生まれる子どもの国籍について解説します。

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日本国籍からの離脱と日本国籍の取得原因

国籍とは特定の国に属する国民であることを示す資格のことを指しますが、普段あまり国籍を意識することはないかもしれません。
パスポートを取得する際などに、自分が日本国籍を持つ日本国民であることを意識する人も多いのではないでしょうか。

日本という国の構成員であることを示す日本国籍ですが、一方で一定の条件のもと、日本国籍から離脱することもできます。
これは、個人がほかの国の国籍を持つかどうかまでは国が決めることはできないという、日本の考え方によるものです。
したがって、外国国籍を所有しているなどの条件を満たしていれば、国籍離脱の届出を法務局などに提出することで、日本国籍から離脱することができます。

日本国籍からの離脱は、主にその人が外国国籍を選択した場合に必要になります。
では、逆に日本国籍が必要になるのは、どのようなケースなのでしょうか。

日本国籍を取得する原因、いわゆる取得原因は主に3つあります。
外国人からの求めに応じて法務大臣が日本国籍を与える「帰化」と、一定の要件を満たす個人が法務大臣に届け出ることで日本国籍を与える「届出」、そして、国内で生まれ、父母のいずれかが日本人であれば日本国籍を取得する「出生」が日本における国籍の取得原因です。
これらはすべて国籍法に基づいたものです。

日本で暮らす多くの人は出生時に日本国籍を取得していますが、では日本人と外国人の夫婦の間に生まれた子どもは、出生時にどちらの国の国籍になるのでしょうか。

近年はグローバル化によって、国際結婚も珍しくはなくなりました。
インターネットを通じて異文化の人々との出会いの機会が増えたことや、海外への移動がしやすくなったことなどが背景にあるといわれています。
厚生労働省の人口動態調査を見てみると、2022年の婚姻件数は、共に日本人の夫婦が48万7,245組だったのに対し、一方が外国人の夫婦は1万7,685組でした。
約28組に1組は日本人と外国人の夫婦ということになります。

生地主義の国と血統主義の国

国籍に関するルールは国ごとに異なりますが、その最たるものが「生地主義」と「血統主義」です。
生地主義とは、生まれた国が国籍となる考え方のことで、アメリカやカナダ、ブラジル、アルゼンチンなどが生地主義の代表的な国です。
一方、両親の国籍を基準に国籍が決まる考え方を血統主義と呼び、韓国や中国、タイ、フィリピン、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスなどが採用しています。

そして、日本も血統主義を採用している国の一つです。
つまり、国際結婚で生まれた子どもも、両親のどちらかが日本国籍であれば、日本人夫婦の子どもと同様に、出生時に日本国籍を取得することができます。
生まれた日を含めて、生後14日以内に出生届を役所に提出することで、その子どもに日本国籍が与えられます。
同時に外国籍配偶者の国の大使館や領事館にも、出生の届け出を行う必要があります。
必要書類などの詳しい内容は各国の大使館や領事館に問い合わせましょう。

これは日本以外の国で生まれた場合も同様で、その国の日本の大使館や領事館、または郵送で日本の本籍地の役場に出生届を提出する必要があります。
国外で出生した場合は、出生から3カ月以内に提出しましょう。

また、外国籍配偶者の国が血統主義を採用していたり、子どもが生地主義の国で生まれたりした場合は、状況によって外国の国籍が与えられることもあります。
その場合、子どもは日本国籍と外国籍の両方を取得し、「重国籍者」となります。
しかし、日本では国籍を2つ持つ重国籍を認めていないため、重国籍者は20歳になるまでに、どちらの国籍にするか選択する必要があります。

特に子どもが生地主義の国で生まれた場合は、その国にある日本の大使館や領事館で「国籍留保の届出」を行わないと、出生からさかのぼって日本国籍を失うことになります。
国籍留保の届出は日本国籍を留保するための書類のことで、出生から3カ月以内に提出します。
届出が受理されると、その子どもは一時的に日本国籍と外国籍を持つ重国籍者になりますが、前述の通り、20歳になるまでにどちらかの国籍を選べば問題はありません。
外国籍を選んだ場合は、日本国籍離脱の届出を法務局に提出して、日本国籍から離脱します。

国際結婚で生まれた子どもの国籍は、両親の国籍や生まれた国の法律によって決まります。
国籍に関する手続きは複雑で、国によってルールも異なります。
国際結婚で生まれた子どもの国籍に関する問題や疑問があれば、まず専門家に相談してみることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。