司法書士法人 宮田総合法務事務所

65歳までの雇用確保の義務化がスタート! 企業が行うべき対応は?

25.02.25
ビジネス【労働法】
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2025年4月から高年齢者雇用安定法の改正によって、すべての企業は希望する全員の65歳までの雇用確保が義務づけられます。
労働者人口が減る日本では、高齢者の経験やスキルを活用し、社会全体で活躍できる環境を整えることが急務となっています。
65歳までの雇用確保の義務化によって、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。
高齢者を雇用するメリットや、高齢者が活躍できる職場づくりのポイントなども踏まえて解説します。

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高齢者の雇用を確保するための措置とは

高齢者が活躍できる環境を整えることを目的として、2013年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が改正、施行されました。
この高年齢者雇用安定法には、継続雇用を希望する高齢者の適用年齢を段階的に引き上げる経過措置が設けられており、その経過措置期間が2025年3月31日に終了します。
そして、2025年4月1日からは、新たな高齢者の雇用を確保するための措置を講じる必要があります。
具体的には、高年齢者雇用安定法第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に定めている事業者は、以下のいずれかの措置を講じなければいけません。

・定年制の廃止
・65歳までの定年の引上げ
・希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入

この義務化に伴い、定年を65歳未満に定めている企業には対応が求められます。
まずは就業規則を変更する必要があります。
定年制を廃止する場合は、定年に関する規定を削除し、継続雇用制度を導入する場合は制度について就業規則に明記しておきましょう。
ちなみに、就業規則の変更には、労働組合または労働者の過半数を代表する者への意見聴取、労働基準監督署への届出も必要になります。
また、常時見やすい場所に備え付けるといった方法などで全従業員への周知も忘れないようにしましょう。
適切なプロセスを踏みながら、就業規則の変更を進めていくことが重要です。

さらに、2021年の改正によって70歳までの就業機会の確保が努力義務になりました。
そのため、65歳までの雇用確保への対応と共に、こちらも対応していかなければいけません。
65歳以降の継続雇用を推進するには、職務や勤務日数の変更にあわせて、賃金などの雇用条件や仕事内容、キャリアパスを明確にした制度を設計することが大切です。
高齢者の体力や健康状態に合わせて、短時間勤務、リモートワークなどの柔軟な働き方の導入も検討しましょう。

高齢者の雇用継続に力を入れるメリット

高齢者の雇用は企業側にもさまざまなメリットがあります。
高齢者は豊富な経験や専門知識、高い責任感などを持ち合わせており、企業にとって貴重な人材といえるでしょう。
少子高齢化が進み、労働力人口が減少するなかで、高齢者の労働力はますます重要視されています。
また、高齢者は若者に比べて一般的に離職率が低く、安定した労働力の確保にもなり、企業イメージの向上にも寄与します。

専門性が求められる分野では、経験豊富な高齢者が即戦力として活躍することが期待されていますが、一方で、積み重ねた知見を活かして、これまでとは異なる分野の仕事にチャレンジする高齢者もいます。
企業としては、そうした高齢者の能力を最大限に引き出すための研修プログラムやキャリア開発などを提供する必要があります。
高齢者が持つ長年の職務経験を活用することで、職場の効率性や生産性を高められるでしょう。

65歳までの雇用確保の義務化に伴い、職場環境の改善も進めていく必要があります。
高齢者に長く働いてもらうためには健康管理が欠かせません。
企業が主導しながら、高齢者に向けた定期健康診断の実施や、働きやすいオフィスの整備などを行なっていきましょう。

また、高齢者は若い社員への教育係や指導役としても活躍してくれます。
若手社員が経験豊富な高齢社員から指導を受けられるメンター制度を導入することで、お互いに成長を促せるでしょう。
若手社員と高齢社員が互いに学び合い、協力し合えるような職場文化を醸成することが大切です。

65歳までの雇用確保の義務化は、企業にとって新たな課題となる一方で、大きなチャンスでもあります。
高齢者の能力を活用することで、企業はイノベーションを創出し、持続的な成長を促すことが期待できます。
義務化は2025年4月1日からスタートしますが、自社の状況に合わせた対応を行なっていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。