司法書士法人 宮田総合法務事務所

副業で変わる働き方! 導入のメリット・デメリットを解説

25.02.11
ビジネス【企業法務】
dummy

近年、働き方改革の一環として、副業を解禁する企業が増え、「副業している」という会社員も珍しくなくなりました。
政府も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成するなど、副業を含む、多様な働き方を促進しています。
その一方で、依然として副業を禁止している会社も一定数あり、二極化が進んでいます。
今回は、副業を認めることで生じるメリットや、導入に際してのリスク・注意点について解説します。

dummy

副業により企業が得られるメリット

多くの日本企業で副業が認められるようになったのは、政府が提唱する「働き方改革実行計画」、いわゆる「働き方改革」の影響です。
この一環として、2018年1月には、厚生労働省の「モデル就業規則」から、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除されると共に、副業・兼業についての規定が新設され、副業を認める流れが加速しました。

一方で、2023年に実施された実態調査によると、依然として約半数の企業が副業を禁止しており、まだまだ浸透しているとはいえません。
しかしながら、重要なポイントは、公務員などの一部の例外を除き、副業そのものが法律で禁止されているわけではないということです。


また、就業規則で副業を全面的に禁止することも、「労務提供上の支障がある」「企業秘密が漏えいする」といったケースに該当しない場合はむずかしく、世の中の流れもあり、今後はより多くの企業で副業が解禁されると予想されます。


このような状況下で、企業は副業のメリットとデメリットを理解したうえで、柔軟な姿勢で副業に向き合うことが求められています。
実際、副業は企業にとって多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。
以下は、企業が副業を認めることで得られるメリットの一例です。

(1)優秀な人材の離職防止
副業を認めることで、優秀な従業員がみずから成長の機会を作ることができるため、さらなる成長を求めて離職する可能性が少なくなります。
副業が、優秀な人材の流出を防ぐきっかけになり得るのです。


(2)人材のスキルアップ
副業を通じて、従業員は多様なスキルや経験を積むことができます。
異なる業界や職種での経験は、企業の組織活性化や柔軟な人材育成につながります。


(3)企業のブランド力の向上
副業を解禁していることで、働き方改革に積極的な企業として、企業のブランド力を向上させる効果も期待できます。
これにより、優秀な人材の採用にも有利に働く可能性があります。


上記に加えて、従業員の副業が新たなビジネスチャンスを創出する可能性もあります。
従業員が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながるといった展開も十分に考えられます。

企業が副業を認める際のポイント

副業は企業にメリットをもたらす一方で、慎重に対応すべきリスクも存在します。
とりわけ、これから副業の解禁を検討するという企業は、以下のリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要となります。


(1)情報漏洩のリスク
副業を通じて、他社へ自社の機密情報が意図せず漏洩する可能性があります。
特に、類似業種での副業は要注意です。


(2)業務への影響
本業の勤務時間以外に行うことになる副業による過度な負担は、従業員の本業のパフォーマンスを低下させる可能性があります。
従業員の疲弊は生産性に直接影響を与えるため、注意が必要です。


(3)労務管理の複雑化
副業に関するルール作りや労働時間の管理は、従来以上に複雑になります。
適切な管理体制の構築が求められます。


(4)労災リスク
従業員の副業中に事故が発生し入院などした場合、自社の業務に長期間勤務できなくなる可能性があります。
そのため、企業側は制度的な課題として認識しておく必要があります。


(5)人材流出リスク
魅力的な職場環境や成長機会を提供できない場合、優秀な人材が副業先に転職したり、独立を選択したりする可能性があります。


上記のリスクに対処するためには、まず就業規則を明確に整備することが不可欠です。
具体的には、副業に関する具体的な規定を策定し、従業員に周知徹底することが求められます。


また、情報漏洩への対策も講じる必要があります。
機密情報保護に関する契約の締結や、定期的な教育研修を通じて、情報管理の意識を高めることが何よりの対策となります。


労働時間管理においては、本業と副業の両立が従業員の健康を損なわないよう、慎重な管理が必要です。
たとえば全社一斉で解禁するのではなく、特定の部門や職種から段階的に始めることで、リスクを最小限に抑えられます。


最も重要なのは、従業員との継続的な対話です。
副業に対する彼らの期待、不安、要望を丁寧にヒアリングし、相互理解を深めることが成功へのカギとなります。


副業は、企業と従業員の双方にとって潜在的な価値を持つ制度です。
副業を認めることによって、従業員の成長やモチベーション向上といったメリットが期待されます。
その一方で、企業にとっては管理面でのリスクがあるため、方針やルールをしっかりと整備し、従業員が本業に支障をきたさずに副業を行える環境を整えることが重要といえます。



※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。