司法書士法人 宮田総合法務事務所

離婚に伴う「財産分与」の対象財産と税務

25.01.21
暮らし・人生にお役に立つ情報
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離婚をする場合、夫婦が婚姻期間中に築いた財産はどのように分割・清算をするかというのは、非常に大きな問題です。

そこで本稿では、夫婦間で分割・清算する対象財産やそれに伴う税務について、簡潔にご説明します。

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(1)財産分与の対象財産とは

夫婦が婚姻期間中に築いた財産は、離婚に際して夫婦で分割・清算するのが一般的です。

この作業を離婚に伴う「財産分与」と言います。

財産分与の対象となる財産は、夫婦どちらの名義になっているかを問わず、結婚生活の中で各自が得た現預金、有価証券、不動産、自動車に加え、生命保険、学資保険、年⾦、退職⾦なども対象になります。

その一方で、夫婦それぞれが相続・生前贈与等で自分の親や親族から受け継いだ財産は、財産分与の対象財産には入りません。


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(2)3種の財産分与

この財産分与には、⼤きく分けて「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つがあります。

「清算的財産分与」とは、財産分与の主たる部分であり、夫婦が婚姻期間中に築いた財産の清算として、財産を分割するものです。

夫婦間の所得格差が有ったとしても(片方が専業主婦・専業主夫でも)、財産分与は、50%ずつ分割・清算することが原則的な考え方になります。

「扶養的財産分与」とは、離婚後の配偶者に対し⽣活保障や扶養として⾏うもので、専業主婦やパートなどで夫に比べ収入が少ない妻側に対して、一定の生活水準を保つために支払われるケースが多いものです。

「慰謝料的財産分与」とは、不貞行為など離婚原因を作った側が相手方に支払う慰謝料の意図をもったものです。


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(3)財産分与に関する税務

離婚に伴う財産分与は、上記3つのいずれの財産分与であっても、原則として贈与税の課税対象になりません

なぜなら、財産分与は、もともと夫婦の共有財産であったものを離婚に伴って分割・清算するだけであり、無償で財産を譲渡する「贈与」とは性質が異なるものだからです。

ただ、財産分与であっても、婚姻期間中の夫婦間の諸事情を考慮しても過⼤である場合や、離婚が贈与税や相続税の租税回避を目的として⾏われたと認められる場合などは、贈与税の課税対象となってしまう可能性がありますので、ご注意ください。

 

なお、この財産分与は、離婚成⽴後2年以内に行う必要があり、その期間を超えてしまうと、財産分与を求める権利を失ってしまいますので注意が必要です(民法第768条第2項)。

また、そもそも離婚・別居をしてから財産分与の話合いを重ねることは、より両者にとって負担が増えることになりかねませんし、場合によっては音信不通となり、財産分与手続きが頓挫するというリスクも出てきます。

 

したがいまして、原則として、離婚の合意ができたときに、財産分与についてもしっかりと話し合いをして、財産分与に関する合意もできた段階で(実務的には離婚協議書を取り交わした後で)離婚届を提出するように心がけましょう

 

なお、離婚に伴う財産分与で税務的に気を付けるべき点は、もう一つあります。

それは、土地や建物、マンションなどの不動産を財産分与として相手方に渡した場合(所有権移転登記をした場合)、分与した側は、当該不動産の時価相当額について譲渡所得税の課税対象になります


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 『離婚に伴う財産分与と税金


以上、離婚に伴う財産分与の対象財産やそれに伴う税務について、簡潔にご説明しました。

財産分与は、夫婦間の微妙な関係性の中で、速やかに話を進める必要のある大変難しい手続きになります。

最初から「代理人弁護士」を就けることはケースバイケースですので、あまりお勧めはしませんが、とは言え初動からこの分野に精通した司法書士等の法律専門職に相談をしながら、お互いに安心・納得できる合意点を目指し、お話合いを進めることも良い選択肢になるでしょう。