司法書士法人 宮田総合法務事務所

家族信託に関する誤解を招く情報にご注意!

25.01.07
暮らし・人生にお役に立つ情報
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「家族信託」を取り巻く環境は、数年前に比べて大きく変わりました。

家族信託を提案・実行する専門職が増えたこと、それに伴い実際に家族信託を実行している一般の方も増えたことが挙げられます。
その結果として、インターネット上では、専門職だけではなく一般の方からの発信も含め、家族信託の法律・税務・実務に関する情報が溢れています。
ただその一方で、「実務的に正しい情報」と知識不足からくる誤解・偏った価値観・うがった見方・非常に稀なケースに基づいた「鵜呑みにしてしまうと危険な情報」とが混在している状態になっております。

そこで今回は、家族信託に関する誤解を招く情報について、代表的なものをご紹介したいと思います。


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(1)認知症になったら信託契約は締結出来ない

「認知症になったら(認知症と診断されたら)、家族信託の契約はできない」という記事やコメントを見かけることも少なくありません。

これも、正確な情報とは言えません。

正しくは、「判断能力が喪失又は著しく低下したら」と言うべきでしょう。

認知症と診断された方であっても、認知症外来に通っている方であっても、物忘れなどで認知症の疑いが濃い方であっても、買い物をしたり、炊事洗濯をしたり、自立した生活ができている方は多いです。

つまり、本人に物事を理解納得し意思表示する能力がどの程度残っているか(これを「残存能力」と言います)がポイントになるのであって、「認知症」という曖昧な概念の中で、遺言や家族信託、生前贈与など、相続対策・争族対策の実行をすぐに諦めてしまうことの方が、後々の大きなリスクとなり得ることを認識すべきです。

 

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(2)家族信託には3ヶ月以上の日数がかかる

家族信託の設計・実行には3ヶ月以上の日数がかかるので、中長期的な日数を踏まえて検討しましょう、という情報を耳にすることがあります。

確かに、家族信託の検討・設計・実行の過程においては、何度も“家族会議”を開いていただくことを想定します。

その中で、老親の保有資産や収支状況、老後と資産承継に関する希望・想いを家族に伝え、子世代は、それを踏まえてどのように安心の老後と円満円滑な資産承継を実現するかをこの分野に精通した法律専門職を交えて検討するプロセスは最も重要です。

とは言え、高齢の親世代(特に80代・90代の年齢の方)にとっては、数か月の期間ですら、認知症の進行による判断能力の低下や急病・持病の再発リスクを認識すべきケースがあります。

緊急性が高いケースでは、お打合せスケジュールを短期間に圧縮し、最短で1ヶ月ちょっとで信託契約公正証書まで実行するケースもありますし、私文書で信託契約書を締結する場合には、数週間単位で緊急対応するケースもあります

誤った情報をもとに、「3ヶ月以上もかかるのであれば無理そうだ」と最初からあきらめるのではなく、家族が一致団結して緊急対応する選択肢も持ち合わせていただきたいです。

 

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(3)金融機関で“信託口口座”を作成して金銭管理をしなければならない

家族信託を実行することにより委託者兼受益者となる老親等の金銭を管理するケースは多いです。

この場合、財産管理を担う受託者は金融機関において“信託口口座”(例えば「山田父郎 受託者 山田小太郎 信託口」というような受託者が印鑑を届け出る口座でありながら委託者の名前や信託という文字が口座名に入っている口座)で管理しなければならない、という情報を目にします。

しかし、地域によっては、この“信託口口座”の作成に対応できる金融機関が一つもないところもあり(メガバンクは原則対応できません)、信託口口座でなければならないという理想論だけでは実務は対応できません。

大切なことは、受託者となる方の固有財産たる金銭と委託者兼受益者から預かった信託財産たる金銭をしっかりと分けて管理する(これを「分別管理」と言います)ことです。

したがいまして、分別管理が徹底されているのであれば、受託者の個人口座(これを「信託専用口座」と呼びます)で管理することも可能であり、“信託口口座”の作成に対応できる金融機関がないエリアであっても家族信託をすることを諦めないでほしいです。

 

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(4)家族信託には必ず「信託監督人」として専門職を置かなければならない

家族信託を実行する際には、その設計において、受託者による財産管理をチェックする機能として家族・親族以外の第三者(法律専門職たる司法書士・弁護士等)を「信託監督人」として置かなければならないという話を聞きます。

確かに、受託者による財産管理をチェックする機能を設けるべきというのは正論ではあります。

ただ、すべてのケースにおいて、一律に「信託監督人」を置いて第三者に対して定期的な報酬の支払が発生する設計を強制するのは、ちょっと行き過ぎな気がします。

法律専門職に対して毎月の報酬が発生する設計を強いることは、受益者のためというよりも、専門職のためのビジネスモデル(収益を上げるための仕組み)とも受け取れかねません。

信託監督人を置くべきかどうか、置く場合には誰を信託監督人に据えるかは、信託財産や財産管理方針、家族の関係性などによりケース・バイ・ケースで判断すべきと言えます。