成年後見に関する誤解を招く情報にご注意!
「成年後見」を取り巻く情報には、インターネット上に溢れている情報はもちろん、司法書士等の法律専門職が発信・回答している情報にも、正確性を欠き誤解を招くものや偏った見方に基づくものも少なくありません。
そこで今回は、成年後見に関する誤解を招く代表的な情報を2つ取り上げてご紹介したいと思います。
(1)法定後見の場合、後見人には家族は選ばれにくく、専門職が選任されやすい
既に判断能力が低下している方に対して、家庭裁判所に法定後見人の選任申立てをする場合、「後見人候補者となる子や孫、甥姪がいても後見人には家族は選ばれず、法律専門職(司法書士・弁護士など)が選任されることが多い。よって、任意後見契約を交わしておいた方が良い。」という論調の記事を比較的多く見かけます。
これも正確な記事ではないと言えます。
確かに統計データ上は、子や孫、甥姪が後見人に選任されるケース(いわゆる“親族後見人”)よりも、第三者である法律専門職が選任されるケース(いわゆる“専門職後見人”)が増えています。
ただ、これは、そもそも親族後見人となり得る候補者がいないケースや候補者が70代以上の高齢であるケース、推定相続人間で紛争性があり専門職後見人を就けざるを得ないケース等が多いという実態があると言えます。
したがいまして、円満な家族・親族関係において、後見人候補者が高齢ではなく、資質面も経済面も問題ないケースでは、ほぼ親族後見人が選任されている実態を見逃してはなりません。
つまり、任意後見契約を交わしておかなければ専門職後見人が選任されてしまうという理由から、円満な家族間でも任意後見をいたずらに推奨することは、任意後見契約の業務を受任したい専門職の“営業トーク”である可能性も認識しておく必要があるでしょう。
(2)判断能力を喪失した人には必ず後見人を就けなければならない
判断能力が著しく低下・喪失した方は、自分で財産管理や法律行為(各種契約ごと)などが有効にできない可能性が高くなります。
それを理由に、判断能力が低下した場合は、速やかに後見制度を利用すべしという記事や情報を見かけることがあります。
しかし、判断能力が低下・喪失しているケースであっても、本人を支える家族がいる場合や既に入院・入所している場合は、必ずしも後見人を就けなくても、自宅や入院・入所先の日常生活に困ることはないケースも多いです。
預貯金の出し入れについても、金融機関で代理人を設定しておくなり、家族信託を実行しておくなりをすれば、生活・医療・介護・納税等で支障が出ることも防げるでしょう。
成年後見制度を利用すべきかどうか、本人及び家族の希望及び本人の福祉的見地から、その必要性に応じて判断すべきであり、判断能力が低下している方が皆利用すべきである・利用しなければないというのは、机上の空論であり、現場の家族の本当のニーズに則した議論ではなくなっていると考えます。
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