司法書士法人 宮田総合法務事務所

既発生の相続に関し司法書士に依頼できることとは?

24.12.03
暮らし・人生にお役に立つ情報
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既に発生した遺産相続に関する問題の解決には専門知識が必要になるケースが多いため、専門家である司法書士への依頼を検討することもあるでしょう。

そこで今回は、相続・遺産整理手続きに関し、司法書士に依頼できる代表的な業務をご紹介します。

 

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≪相続問題で司法書士に依頼できること≫


(1)相続人調査 

相続が発生した際にまず重要になるのが、法定相続人が誰になり、各人の法定相続分割合がどうなるかということです。
被相続人との生前における関係性が薄いと、故人の法定相続人を特定するところから始める必要があり、そのためには「相続人調査」をします。

具体的には、下記の戸籍類一式を取得し、家族・親族関係を整理し、法定相続人を確定させる作業をします。

●被相続人に直系卑属(子や孫など)がいる場合又は直系卑属はいないが直系尊属(父母又は祖父母)が生きている場合:被相続人が死亡時から出生まで連続してさかのぼった戸籍・除籍・改製原戸籍謄本

●被相続人に直系卑属も直系尊属もいない場合:被相続人及び被相続人の両親の出生まで連続してさかのぼった戸籍・除籍・改製原戸籍謄本

 

死亡の記載のある戸籍謄本から出生までさかのぼった除籍・改製原戸籍謄本は、原則、本籍地のある市区町村役場で取得します。

市区町村役場に返信用封筒と小為替を同封して郵送でも取得できますし、本年3月より「戸籍の広域交付制度」(最寄りの市区町村役場において、全国どこの本籍地の戸籍謄本であっても一括して取得することができる制度)が始まりましたので、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属であれば、ご自身で比較的スムーズに戸籍を収取することができます

一方、兄弟姉妹、甥、姪、おじやおばなどの戸籍謄本は、この広域交付制度を利用することができませんので、原則通り、新しい戸籍から一つ一つ過去の古い戸籍にさかのぼって、各本籍地を管轄する市区町村役場に請求することになります。
そのため、何度も転籍(本籍地を移すこと)をしている方などは、出生までの戸籍一式を収集する作業に、数週間から1ヶ月超の日数がかかる場合もあります。
この手間と時間がかかる作業を司法書士に依頼することで、これらの日数を減らし、事務的・精神的負担も軽減することができるでしょう。

 

(2) 遺言の有無の調査

次に重要となるのは、遺産の内容とその承継先の問題です。

まずは、「遺言」の有無を確認する必要があります。

手書きの遺言書(自筆証書遺言)は、故人が保管していた重要書類や遺品を整理する中から探すことになるでしょう。
その一方で、公正証書遺言の有無については、公証役場の「遺言検索システム」で調査することができます。

遺言を見付けることができれば、法定相続人が誰であろうと、原則として遺言内容に従った遺産の承継が行われます。
遺言が見付からなければ、前述の調査で特定した法定相続人間で遺産を分割する話し合い(遺産分割協議)をすることになります。

 

(3)遺産の調査 

遺言の有無に関わらず、相続財産となるプラスの遺産と負債の調査・特定作業をし、「遺産目録」を作成することになります。

具体的には、次のように各財産ごとに調査をすることになります。

不動産については、市区町村役場に「名寄帳」を請求したり、法務局で公図や登記事項証明書を取得して、被相続人名義の不動産の有無を調査をします。
毎年、市区町村役場から送付されてくる固定資産税納税通知書・課税明細書には記載のない土地がある可能性もありますので、注意が必要です(課税地目が「公衆用道路」として固定資産税が非課税の土地は、課税明細書には記載がありません。)。

預貯金口座や証券口座の有無については、銀行・信用金庫・証券会社等に個別に照会するという地道な作業が必要です(行政や金融機関側において、故人の金融資産の情報が一括管理されている訳ではありません)。

負債については、被相続人の直近数年前後の通帳の入出金状況や郵便物・保管書類などを精査し、請求書や督促状、訴状、差押通知書などが届いていないか等を確認します。

これらの遺産調査は、非常に手間と時間のかかる作業となりますので、調査漏れが無いようにすることを考えますと、遺産調査・遺産整理のプロである司法書士に依頼することも良策となります。

 

(4)遺産整理手続き 

上記(1)から(3)の作業に加え、法定相続人に対する遺産内容の開示(遺産目録の作成)・説明、法定相続人間の連絡・意見調整、遺産分割協議書の作成・調印サポート、さらには相続の状況・相続人の意向に応じて、相続分の譲渡手続き、家庭裁判所への相続放棄の申立手続き、遺留分相当額の代償金支払いに関する合意書の作成・調印サポート・・・など、遺産相続に関する手続きは多岐にわたります。

したがいまして、法的知識・税務知識を補う目的はもちろんのこと、手続きや話合いの進め方・方向性を誤らないように、相続・遺産整理に関する法律実務の専門家の助言・サポートを得ることはとても大切です。

たとえば、昨今のネットにおいて、「相続が発生したら、すぐに銀行口座をストップさせるべき」という情報が蔓延しておりますが、円満な相続の場合においては、銀行口座をすぐにストップさせることは、かえって面倒なことになるので、実務的にはお勧めしておりません。
このように、ネットの情報ばかりを鵜呑みにしまうと、必ずしも適切・的確な手順を踏み間違うこともあるので注意が必要です。

これらのお手続きに関して、包括的に請け負う業務や、相続実務に精通した専門職の立場から的確にアドバイスをする業務を司法書士に依頼することもお勧めです。

 

(5)相続登記に関する手続き 

被相続人が土地や建物といった不動産を所有していた場合、その不動産の名義変更(相続登記)をしなければなりません。
権利に関する登記を代理人として申請できるのは、司法書士と弁護士だけです。

その中でも司法書士は登記手続きの専門家であり、弁護士が相続に関与している場合でも、登記手続きは司法書士に依頼するケースが大半と言えます。

2024年4月1日からは「相続登記の義務化」がされましたので、スムーズかつ適切に対応するためにも司法書士への依頼を検討することがおすすめです。

 

 

以上、今回は相続・遺産整理手続きに関し、司法書士に依頼できる代表的な業務をご紹介しました。