宮田総合法務事務所

相続人がいない場合の相続、「特別縁故者」と「国庫帰属」について

24.09.02
暮らし・人生にお役に立つ情報
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ご自分に相続が発生したとき、ご自身に法定相続人がいない場合、どのようになるのか疑問に思われている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、相続人がいない場合の相続、「特別縁故者」と「国庫帰属」について簡単に解説します。

 

〜国庫帰属とは?〜
法律上の相続人が存在しないことが確定した場合、具体的に、配偶者、直系卑属(子や孫)、直系尊属(両親や両祖父母など)、兄弟姉妹、甥姪がいない場合、被相続人の財産は原則として国の財産になります。

この“国の財産になること”を「国庫に帰属する」と言います。

自分の財産が最終的に国庫に帰属するのを避けるためには、「遺言」を作成したり、「死因贈与契約」を交わす等して、自分の財産の行く先をきちんと定めておくことが重要です。

 

〜特別縁故者とは?〜
法定相続人がいない被相続人の財産は、原則として国庫に帰属します。

その一方で、法定相続人ではなくても、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者」(民法第958の2)と家庭裁判所に認められれば、相続財産の全部又は一部を取得することができます。

この相続財産を受け取る権利を認められた者を「特別縁故者」と言います。

 

〜特別縁故者の要件とは?〜

では、誰がどのような要件を満たせば、「特別縁故者」として家庭裁判所に認められ、被相続人の財産を取得することができるのでしょうか?

3つの場合に分けて簡単にみていきましょう。

 

(1)「被相続人と生計を同じくしていた者」

例えば、同居して1つの家計で生活していた内縁の配偶者が典型的です。
また、一緒に生活をして面倒をみていた義理の子・孫・親・甥姪なども該当するでしょう。

 

(2)「被相続人の療養看護に努めた者」

例えば、被相続人と同居はしていないものの、定期的に自宅に訪問をして、被相続人の医療や看護、介護を担った者が該当します。

ただし、看護師や家政婦として報酬を受け取っていた場合には、業務に基づいて療養看護にあたっただけとみなされますので、報酬に見合わない献身的な療養看護が行われていた事実が必要になります。

 

(3)その他被相続人と特別の縁故があった者

例えば、被相続人に対して長年にわたって仕送りをして経済的に支援をしていた者、

身元引受人や任意後見人受任者になって日常的に連絡を取って安否確認を行う等、
精神的な支えとなっていた者などが当てはまるでしょう。

 

~特別縁故者に対する相続財産分与の申立てはハードルが高い?~

被相続人の死後、特別縁故者に該当すると想定される者が家庭裁判所に「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立てを行います。

その後、法定相続人がいない(不存在である)と確定した場合、債務や未払い金などの様々な費用を精算した後に、家庭裁判所の審査が行われます。

この審査においては、被相続人と特別の縁故があったことを証明するための資料が有るのと無いのとでは、家庭裁判所の判断に大きく影響します。
被相続人とのメールや手紙などのやり取り、被相続人の日記・家計簿等の記録など、被相続人と生計を同じくしていたこと、被相続人の療養看護に努めていたこと、その他被相続人と特別の縁故があったことを裏付ける証拠や資料を集められると良いでしょう。

 

このように、家庭裁判所に特別の縁故があったことを認めてもらうためには、それ相応の資料や理論的な主張が必要になります。
また、申立ての準備を始めてから、申立てをし、実際に家庭裁判所で判断がなされるまでには、最低でも1年以上の年月を要します。

「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立てを検討される場合は、この手続きに精通した法律専門職(司法書士・弁護士)に相談することをお勧めします。



以上、今回は相続人がいない場合の相続、特別縁故者と国庫帰属について簡単に解説しました。


特別縁故者や国庫帰属をはじめ、相続について何かお困りのことがあれば、一度当事務所にご相談ください。