宮田総合法務事務所

「おしどり贈与」の活用事例と自宅の底地のみの贈与の可否

24.05.27
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~居住用不動産の贈与における配偶者控除の特例~

自宅(居住用不動産)について、「居住用不動産における贈与税の配偶者控例の特例」を利用し、夫婦間で生前贈与することがあります。

「居住用不動産における贈与税の配偶者控例の特例」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円を併せ、金2,110万円まで非課税となる制度です。

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配偶者が相続した遺産のうち、課税対象財産の相続税評価額が「1億6,000万円」か「配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額」までは相続税が課税されません(配偶者控除)ので、一般論としては、夫婦間でわざわざ生前贈与する必要はないかもしれません。

しかし、次の代表的な2つケースでは、夫婦間で贈与を実行し、自宅を夫婦で共有にしておくメリットがあります。

 

【ケース1】

将来的に、夫婦で自宅を売却する可能性がある場合で、かつ売却により大幅な譲渡益の発生(=譲渡所得税の課税)が見込まれる場合

⇒⇒⇒夫婦で居住用建物を共有している場合、自宅売却に伴う譲渡所得税の計算において、「居住用不動産の3,000万円特別控除」が夫婦二人分、つまり6,000万円分の控除が使えるので節税の効果が狙えます。

 

【ケース2】

自宅の敷地面積が広大で「小規模宅地の評価減」の特例の限度である330㎡を超える場合

⇒⇒⇒330㎡を超える自宅の敷地部分は、相続発生時に80%の評価減を受けられませんので、贈与税非課税の範囲内で配偶者に敷地持分を渡しておくと節税効果が見込めます。

 

 

上記のケース1では、夫婦で「居住用不動産の3,000万円特別控除」を受けるためには、居住用建物も夫婦共有になっている必要があります。したがいまして、現在の居住用建物が夫婦片方の単独所有となっている場合は、少しでも配偶者に建物持分を渡しておくことが重要になります。

 

一方、上記のケース2では、できる限り多くの底地持分を配偶者に贈与することを意図し、居住用建物は贈与対象財産から外し、敢えてその底地のみを贈与する方が効果的です。

なお、居住用建物の底地のみを贈与する場合でも、居住用不動産における贈与税の配偶者控例の特例が利用可能ですのでご安心下さい。

 

 

以上のように、「おしどり贈与」は、税務上、非常に効果的となるケースがあります。

ただし、「おしどり贈与」を実行する際の注意点としては、贈与税がかからないとしても、不動産取得税がかかるという点と、登録免許税を含めた登記費用のコストも考える必要がある点です。

もしこれから「おしどり贈与」をご検討さ入れる方は、税理士さんにきちんとご相談されることをお勧めいたします。