宮田総合法務事務所

老親の‟預金凍結”対策のためにできることとは?

24.04.03
暮らし・人生にお役に立つ情報
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俗にいう‟預金凍結”という言葉は、実務上、大きく分けて2つの場面・意味で使われます。

1つは、口座名義人が死亡した場面です。
この場合、金融機関が口座名義人の死亡を認識した時点で、年金等の入金も、公共料金や固定資産税、ローン等の引落もすべてストップします。
金融機関所定の相続手続きを経ない限り、預金を移動することが一切できなくなりますので、これをもって‟預金凍結”という言い方をします。

もう1つは、口座名義人の存命中に、同人の重篤な病気や認知症の進行、あるいは事故等により金融機関の窓口で各種の手続きができなくなる場面です。
好きなタイミングで希望する金額を送金したり下ろせなくなる事態を指して‟預金凍結”という言い方をすることがあります。
ただ、死亡時においては口座が‟完全凍結”するのに対し、この場合は、年金等の入金も口座引落も継続されますので、この段階で困った事態が生じるとは限りません

今回は、後者のケース、つまり口座名義人たる老親が存命中において、自宅のリフォーム代として高額な資金の引き出しが難航したり、高齢者施設への入所に際して必要な入所一時金の支払いに支障が生じないように、‟預金凍結”対策としてできることを一部ピックアップして紹介します。

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≪老親が存命中の‟預金凍結”回避のための対策≫

●代理人制度を利用する●
今では多くの金融機関において「代理人制度」が導入されています。
口座名義人たる老親があらかじめ金融機関に家族の誰かを「代理人」として届け出ておくことで、口座名義人本人でなくても、銀行窓口やATMで代理人が堂々と振込や引き出しができるようになります。
「代理人制度」は、各金融機関によって仕組み、代理人になれる範囲、代理人の権限等が異なりますので、老親が現在利用している金融機関について調べる必要があります。

●インターネットバンキングを導入する●
「インターネットバンキング」を活用することも、‟預金凍結”回避の施策となります。
老親が判断能力を有している間にインターネットバンキングの仕組みを導入しておくことで、金融機関の窓口に老親本人が行かなくても、オンラインでの預金管理(残高確認)や送金手続きが可能になります。
ただし、キュリティ対策を十分に行うことが前提となりますし、ワンタイムパスワードの仕組みを導入する金融機関も増えておりますので、老親以外の家族が本人に代わって預金を動かすことがスムーズにできるかどうかはきちんと事前に確認・検討する必要があるでしょう。

●家族信託を活用する●
「家族信託」は、家族・親族が主体(管理者)となって老親の財産管理・財産給付を行う仕組みで、‟預金凍結”対策として最も堅実な施策です。
親子間の契約でありながら、厳格に公正証書で信託契約を交わし、老親の生涯にわたりお金や不動産などの資産の管理と処分の権限を信頼できる子や親族に付与することになります。
ただし、家族信託は、定型的な契約書が決まっている訳ではなく、老親の家族構成や保有資産、想いなどに応じて、自由かつ柔軟に設計することができますので、家族信託に精通した法律専門職のアドバイスを受けることをおすすめします



以上、今回は‟預金凍結”対策のためにできることを一部ピックアップして紹介しました。
‟預金凍結”により老親本人やその家族の困った事態を未然に防ぐためには、早めの対策の検討と実行が必要ですので、一度当事務所にお気軽にご相談ください。