宮田総合法務事務所

遺産放棄と相続放棄の違いとは?

24.02.04
暮らし・人生にお役に立つ情報
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相続における「遺産放棄」「相続放棄」は、混同されるケースが少なくありません。

そこで今回は、遺産放棄と相続放棄の違いを簡潔にご説明します。

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≪遺産放棄と相続放棄の違い≫

●その1:相続人としての地位

遺産放棄をすることで遺産を引き継がなくなりますが、法的に相続人でなくなるわけではありません。つまり、遺産放棄は、「プラスの遺産を一切受け取らない」ということを意味します。
相続権を失うわけではないため、理論上は、一度遺産放棄をした後に撤回することも可能です。
一方、相続放棄をすると法的に初めから相続人ではなかったとみなされ、原則として確定的に相続権を失うため、後から撤回することは困難になるので注意が必要です。

●その2:債務の相続
遺産放棄をおこなうと、プラスの遺産を相続しないことになりますが、相続財産に債務が含まれる場合は、債務は原則として法定相続分に応じた負担(返済)が必要になります。
実務上は、プラスの財産を引き継ぐ相続人が債権者の同意を得て債務も引き継ぐ(=債務引受)ことにはなりますが、遺産放棄をした者が当然に債務の返済義務を逃れられる訳ではないので注意が必要です。つまり、債権者の同意を得て債務引受の手続き(遺産放棄した者から見ると債務者の地位から離脱する手続き)を踏んでおかないと、債務を引き継いだ相続人が返済に行き詰まると、債権者は遺産放棄をした者を含め他の相続人に請求することができます。遺産放棄をしても相続人でなくなるわけではないので、債権者からの請求を逃れることはできません。
一方、相続放棄をすると相続人ではなくなるので、債務の返済義務を負うことは一切ありません。

●その3:期間制限・手続き方法
遺産放棄には、特に期間の制限はありません。また、定型の書式や厳格な手続きがある訳ではありません。基本的に、自分はプラスの遺産を一切受け取らない旨が記載された「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名及び実印押印することになります。
一方、相続放棄は、法定の期間内に家庭裁判所への申述申立てという厳格な手続きが必要です。必要書類を揃えたうえで手続きをおこない、家庭裁判所の審判が下りることで初めて相続放棄ができることになります。



以上、今回は、「遺産放棄」と「相続放棄」の違いを簡潔にご説明しましたが、両者には、それぞれ異なる特徴があります。

このように、相続を円滑に進めるためには、相続・遺産分割の手続きに関して、しっかりとした法的知識が必要不可欠です。また、そこに税務的知識も持ち合わせていないと、後々想定外の課税を受けるリスクもあります。

相続・遺産整理手続き、遺産分割手続きに関し、ご不明な点やご不安な点、お困りの点などをお持ちの方は、相続手続き全般を得意とする当事務所にお気軽にご相談ください。