生きがいラボ株式会社

外国人や障害者の雇用メリット

16.06.10
ビジネス【人的資源】
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日本の学校教育は古来、個性を伸ばすより組織として役に立つ人材を育てることを考えていました。

つまり、優秀な軍隊をつくるようなものです。ところが今や、新しいものを生み出す力が求められ、人材は多様な方がいいと言われています。

いわば、異文化の交流が重視され、それゆえにダイバーシティが大切なのです。

外国人はまさに異文化人材ですから、単に人手が足りないからではなく、そのメリットを活かしたいものです。
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<外資系企業の専門職は国籍・性別を問わず活躍> 

日本の中でも、外国人を区別しないで雇用している例はいろいろあります。外資系の投資信託を扱う会社では、ファンドマネージャーやアナリスト、そしてその候補生などを、国籍や性別を問わずに雇用しています。

つまり、能力さえあればその職に就くことができます。

ただし、成績が悪いとはじき出されるという仕組みになっています。

その代わり、日本人でもアメリカ人でもインド人でも待遇は同じ。女性でもMBAを持っていなくても、報酬は同じ仕組みです。ダイバーシティは自然に実現されています。 

<障害者の法定雇用率> 

ダイバーシティでは、障害者についても、基本的には同じ考えが求められます。障害者であるがために、健常者では得られない経験をしているはずです。

それをメリットとして活かすために、社会の障害者の割合を企業が雇用するべきと決めたのが障害者雇用促進法で、法定雇用率を定めています。

それは、「社会に生きる人たちは、公平に雇用されなければならない」という主張。アメリカなどでよく言われるのは、「人口のうち半分が女性なら企業も半分は女性がいてしかるべき」という意味です。

日本では今、民間企業は従業員の2%に当たる障害者を雇わなければなりません。雇えない場合は納付金を納めることになっています。日本の労働関係では、もっとも行き届いた制度でしょう。 

<障害者雇用の実態> 

実際のところ、新卒採用でも中途採用でも、障害者と企業のマッチングは簡単なものではありません。

多くの場合、「すでに雇っている従業員が障害者になったときも雇い続ける」ということで、法定雇用率を満たそうとしています。大企業の場合、長期雇用制度の下で、病気やけがで障害者になる従業員が結構いるからです。

例を挙げると、ある大卒男子は、入社後の研修中に工場の機械に触れ、顔面を損ないました。治療やケアに長い年月をかけていますが、文字通り、生涯保障されなければならないでしょう。

多くの場合は、個人生活で生じる疾病や事故によるものです。最近では、長期にわたるガン治療中の雇用も問題になっています。

新しい商品・サービスを生み出す際に、障害者ならではの目線が気づきやヒントを与えることが多々あります。現段階ではさほど進んでいない障害者雇用ですが、これからは中小企業でも視野に入れるべき課題となるでしょう。


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


[記事提供] 

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