生きがいラボ株式会社

ビジネス界で増えつつある『生成AI』の使用。その留意点は?

24.02.26
ビジネス【マーケティング】
dummy
AIのなかでも『生成AI』の技術は加速度的に進歩しており、近年はさまざまな生成AIを使用したサービスも生まれています。
生成AIとは、AIがみずから学習したデータから新しいテキストや画像、音楽やデザインなどのコンテンツを作り出す技術で、成果物はマーケティングや製品開発などの場面で活用することができます。
日本語で「生成力」を意味する「ジェネレーティブAI」とも呼ばれる生成AIは、革新的で便利な技術である反面、さまざまなリスクも取り沙汰されています。
生成AIのビジネスの活用について、どう判断すればいいのか検証していきます。
dummy

さまざまな方面で活用が進む生成AIの現在地

イラストや写真、デザインを生み出す『MidJourney』『Stable Diffusion』などの画像生成AIや、2022年11月に公開されて大きな話題になった『ChatGPT』などの文章生成AIは、すでに多くの分野で活用されています。
2024年1月には、第170回芥川賞の受賞作『東京都同情塔』が文章生成AIを駆使して書かれたことが、大きな話題になりました。

ビジネスシーンにおいても、文章生成AIでメール本文やレポート、資料などを作成したり、アイデア出しや言語の翻訳、コード生成などを行なったりと、活用が進められています。
自然言語処理技術による日程調整を可能にしたChatGPT搭載のスケジュール管理ツールなども登場し、生成AIは業務の効率化を図るうえで欠かせないものになりつつあります。

大企業でも、画像生成AIツールを広告やキャンペーンで活用しているコカ・コーラ社や、生成AIでソフトウェア開発を行ったLINEヤフーの事例などはよく知られています。
また、NTTやサイバーエージェントなども、独自で生成AIのツールを開発し、積極的に生成AIの使用に取り組んでいます。

また、マーケティングの分野では、生成AIが顧客のデータ分析や行動予測を行う『Adobe Sensei』や、企業の決算を要約して生成AIが出力する経済情報プラットフォーム『SPEEDA』、生成AIの活用で広告のパフォーマンスを最適化する『Albert』など、さまざまなサービスが誕生し、IT企業を中心に導入が進んでいます。

生成AIに潜むリスクをどのように捉えるか

作業を効率化すると同時に、イノベーションの創出も期待される生成AIの活用ですが、一方で、生成AIの使用を禁止している企業も少なくありません。
企業におけるChatGPTへの向き合い方について行なったある調査では、およそ7割の企業が生成AIアプリケーションの使用を禁止しているというデータもあり、生成AIの利点は十分に理解しているものの、さまざまなリスクから使用に踏み切れないという現状が浮かび上がってきました。

では、生成AIに潜むのは、どのようなリスクなのでしょうか。

生成AIには「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる、AIが大量のデータのなかから自動的に生成に必要なものをピックアップして学習する技術が用いられています。
このインプットに必要な大元のデータには知的財産が含まれているケースも多く、もし生成AIが既存の知的財産と類似した成果物を出力し、それを使用した場合、状況によっては著作権侵害に該当する可能性もあります。

また、大元のデータに個人情報や個人を特定する画像などが含まれている場合は、肖像権やパブリシティ権、プライバシーなどの問題も出てきます。
ほかにも、生成AIが出力する誤った情報や偏った情報を、そうとは知らないまま受け取ってしまう可能性もあるでしょう。
近年はSNSなどで、生成AIが作ったフェイクニュースや、偽物の動画が拡散されるケースも増えてきているので、真偽の確認が必要です。

生成AIの使用には、「他者の権利や利益を侵害していないか」という視点を持つことが重要で、生成AIを活用している企業の多くは、使用に関するガイドラインを策定するなどのルール作りを行なっています。

日本では生成AIの活用について、規制する法律がまだ存在しません。
しかし、世界では生成AIとの共存を目指すためのルール作りが進められているため、日本でもAI 戦略会議などで生成AIの利点と問題点が整理されはじめています。
2024年1月には、大学や大手企業で構成される生成AIの業界団体が発足するなど、ルール作りに向けた動きが活発化してきました。
生成AIは活用次第で生産性の向上や業務効率化の面で成果が期待できますが、ルールやガイドラインが未整備であるなど注意すべき点もあります。
まだ過渡期にある生成AIに対して企業としてどのような措置を取るのか、今後の動きを注視しながら、社内で対応を検討していく必要があります。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。