生きがいラボ株式会社

勤務時間や勤務地などを限定した『多様な正社員』のメリット

23.07.25
ビジネス【人的資源】
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厚生労働省は、職務内容や勤務地、労働時間などを限定した『多様な正社員』の雇用を推進しています。
個々の事情に合わせて働くことができる多様な正社員は、全国で普及と定着が進んでおり、現在は約5割もの企業が制度を導入しています。
労働者は勤務地や勤務時間をコントロールできるためワークライフバランスを実現しやすく、企業にとっても従業員の離職防止や優秀な人材の確保につながります。
メリットや注意点を理解し、多様な正社員の制度導入を検討してみましょう。
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配置転換や残業などがない限定した働き方

日本の雇用形態は正規雇用と非正規雇用の2つに大きく区分され、働き方の二極化が進んでいます。
非正規雇用である契約社員やパート・アルバイトは、雇用の不安定さや賃金の低さなどの問題が顕在化しており、正規雇用の正社員も長時間労働や転勤による生活環境の変化から家庭生活への影響が常態化しています。

こうしたなかで、新しい雇用の形として厚生労働省が普及を図っているのが、多様な正社員という雇用形態です。
多様な正社員とは、職務内容や勤務地、勤務時間などの範囲を限定した正社員のことで、従来の正社員とは大きく性質が異なります。

一般的な正社員とは、労働契約の期間の定めがなく、所定労働時間がフルタイムで、直接雇用である者を指します。
企業によっては定期的な配置転換や転勤、残業があることも珍しくありません。

一方、多様な正社員とは直接雇用ではあるものの、勤務地が限定されている、所定労働時間がフルタイムではない、担当する職務内容が限られているなど、正社員でありながらも自分が希望するような働き方ができる雇用形態をいいます。

多様な正社員には『勤務地限定正社員』、『職務限定正社員』、『勤務時間限定正社員』の3種類があり、厚生労働省と都道府県労働局による『勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて』というパンフレットではそれぞれ以下のように定義づけています。

●勤務地限定正社員
転勤するエリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤が一切ない正社員

●職務限定正社員
担当する職務内容や仕事の範囲がほかの業務と明確に区別され、限定されている正社員

●勤務時間限定正社員
所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員


これまで、育児や介護など家庭の事情で転勤やフルタイムでの勤務がむずかしい従業員は、離職するか非正規雇用として働くかのどちらかしか選択肢がありませんでした。
しかし、転勤のない勤務地限定正社員や残業のない勤務時間限定正社員として働くことができれば、離職する必要がありません。
これらの多様な正社員を制度化して導入すれば、企業は優秀な従業員の離職を防ぐことができるというわけです。

また、勤務地限定と勤務時間限定を組み合わせたり、職務内容限定と勤務時間限定を組み合わせたりするなど、従業員の要望へ柔軟に対応することで、より多くの従業員の離職を防ぐことにも繋がるでしょう。

多様な正社員を制度として導入するには

離職防止だけではなく、多様な正社員として働けることを対外的に周知することで、企業は優秀な人材の確保や労働力の安定化、地域に根ざした事業展開が行えるなどのメリットを享受できます。
また、従業員にとっても安定した雇用のもとでキャリア形成やワークライフバランスを実現できるというメリットがあります。

労使の両方にメリットがある多様な正社員の制度を導入する前に、まずは社内でその必要性を確認し、その目的を明確にしなければいけません。
育児や介護を起因とする離職が増加している、高度な専門スキルが必要な業務を担える人材がいない場合などは、多様な正社員を検討する必要があります。
離職理由や離職状況を確認したり、従業員にヒアリングしたりするなどして、多様な正社員の制度が自社に必要かを確認しておきましょう。

そして、制度の導入が決まったら、限定の内容や待遇なども合わせて決めておく必要があります。
その際、賃金、昇進・昇格など、一般的な正社員と多様な正社員間の処遇の均衡を図ることが重要です。
どちらか、もしくは双方に不公平感を与えてしまうと、モチベーションの低下につながり、結局は離職を招いてしまいかねません。
制度設計は慎重に行う必要があります。

また、限定の内容などが決まったら、全従業員に明示しましょう。
明示することで、従業員はキャリア形成の見通しがつきやすく、ワークライフバランスを図りやすくなります。

多様な正社員の制度を導入するうえで大切なのは、従業員とコミュニケーションを取りながら、自社の現状に合わせた適切な制度化を行うことです。
導入を検討する場合は、社会保険労務士などの専門家とも相談しながら、制度設計を進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。