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『副業300万円問題』で騒然! 副業収入は事業所得にできるのか

22.11.29
ビジネス【税務・会計】
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『副業300万円問題』という言葉が巷を騒然とさせました。
300万円以下の副業収入は、『事業所得』ではなく、『雑所得』とするという国税庁の通達改正案に関して意見を公募したところ、意見が殺到したという一件です。
結果的に、改正案は大幅に修正され、事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
また、その所得の取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(一定の場合を除く)には、雑所得に該当することに留意することになりました。
以前から見解の分かれていた、副業が『事業所得』か『雑所得』のどちらなのかについて、ある程度明確になったといえます。
今回は、意見の公募を経て見えてきた、副業所得の申告方法について解説します。
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目的は、副業による所得を正しく申告してもらうこと

そもそも、今回の改正案の目的は、副業による所得を正しく申告してもらうことでした。
副業をした場合、収入の大小にかかわらず確定申告が必要です。
副業についても、開業届を提出して青色申告事業者となり、その収入を事業所得として申告すると、青色申告特別控除を受けることができます。
控除額は以下の3種類です。

●55万円
●10万円
●65万円

さらに、事業所得が赤字になれば、給与所得と損益通算をして所得総額を減らし、所得税を還付してもらえることもあります。
また、3年間にわたり赤字の繰越も可能です。

このような有利さに加え、コロナ禍では、給付金の要件が事業所得であることに限られていたため、以前よりも副業収入を事業所得として申告する人が増加しました。

今回の通達改正案は、そうした状況に対し、国税局が一旦、意見を募集した形になります。


事業所得と雑所得の線引きは以前からあった

この件について考えるにあたり、まず『事業』とは何かを理解する必要があります。

事業とは、いわゆる『独立・継続・反復して行われる仕事』です。
趣味でつくったモノでたまたまお金を得ても、事業とはいいません。

さらに『営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるもの』という国税不服裁判所の裁決事例があります。
この裁判のコメントにはまた、『自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきという文言があります。

つまり、一回副業をした程度では『反復』はしておらず、商品を仕入れたり、経費をかけたり、労力を費やしたといったことが、事業であるかどうかの判断材料となります。

ほかに、副業やクラウドソーシングでよくあるのが『原稿を執筆したが、取引先名が分からない』というものです。
こちらも、もし事業について調査されたとき、証拠(反証)となるもの(請求書や領収書、支払調書など)がない場合は、事業所得として申告することができません。
このような場合は、はじめから『雑所得』として申告することになります。


取り消された300万円の基準とは?

公募に対しては、多くの意見が殺到しました。
主な内容は

●『主たる所得』の判断基準がわからない
●会社を退職せず起業しているビジネスマンはどうすればよいか
●『反証』の範囲がわかりにくい
●政府の『副業推進』と逆行している

などです。
国税庁の出した改正案は、当初『副業の年間収入が300万円以下なら雑所得』でした。
ただ、修正により『300万円』という記述はなくなりました。
しかし、勘違いしてはならないのは、完全になくなったわけではなく『記述が消えた』だけであるということです。
なぜなら、新しい改正通達案には注釈があり、『なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く))の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する』という記述が残されているからです。
ほかにも変更された部分があり、『帳簿書類の保存』についても言及しています。


副業収入を事業所得で申告するメリットとは

開業届を出して青色申告をしている人が事業所得で申告した場合、雑所得にはない、4つの制度が適用できます。

(1)青色申告特別控除が適用できる
(2)所得が赤字の場合、ほかの所得との損益通算ができる
(3)青色申告の『3年間繰越控除』が適用できる
(4)少額減価償却資産の特例が適用できる

それぞれについて解説します。
(1)については、雑所得には青色申告特別控除という取り扱いが存在しません。
そのためはじめから適用されることがない控除になります。
(2)については、損益通算できる所得は『不動産所得(一部出来ないものもあり)・事業所得・譲渡所得(譲渡するものにより一部除外あり)・山林所得』の4つです。
雑所得には損益通算という考え方はありません。
(3)および(4)について、これは青色申告している場合に適用できる控除であり、雑所得は適用外です。

これらを比較するだけで、『事業所得で申告する方が有利』ということが想像できます。
しかし事業所得とするには『帳簿書類の保存』と所得税法第35条の注釈(業務に係る雑所得の例示)を理解している必要があるでしょう。

副業収入がある人は、確定申告の時期が来てから慌てないよう、やり方についてよく調べておきましょう。
とくに、所得税法の解釈の仕方は難しい部分があるので、自分で判断できない場合には、専門家に相談するのも選択肢の一つです。
正しい申告ができるように、早めに準備しておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。