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税制改正で禁止に!『課税の繰り延べ』などを活用した節税スキーム

22.08.09
ビジネス【税務・会計】
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課税の繰り延べとは、特例措置等を活用して課税を将来に先延ばしにする行為のことです。
一時期、この課税の繰り延べを行うために、建築資材の足場を購入して別会社にリースする節税スキームが流行し、多くの一般企業が足場などを購入しました。
しかし、2022年度の税制改正により、この節税スキームが使えなくなりました。
そこで今回は、これまで行われてきた節税スキームの仕組みと、税制改正による規制について解説します。
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別会社への足場のリースが節税になる仕組み

通常、事業のために用いられる建物や設備、機材などの資産は時の経過によって価値が減少していくため、取得した時に会計上は固定資産に計上し、数年にわたって減価償却の処理を行うことにより費用計上していく必要があります。
また、この資産のことを『減価償却資産』といいます。

一方、一定の条件を満たしている減価償却資産については、一括で費用計上できる特例措置等があります。
その一つが『少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度』です。
この制度は、一つ当たりの取得価額が10万円未満の減価償却資産を取得した際には、取得価額の全額を損金算入できるという措置で、一時期この制度を利用した足場リースの節税スキームが話題になりました。

足場とは、マンションやビルなどの建設現場で使われる建築資材のことで、通常、建設を請け負う建設会社は建築資材を取り扱うレンタル会社から足場をリースします
そこで、足場を一般企業が購入し、足場をリースするレンタル会社に貸し出し、そのレンタル会社から定期的にリース代を受け取ります

このとき、足場を購入した一般企業は、購入代金を少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度を利用して損金算入することができました。
足場の購入には、500万円ほどかかるといわれており、通常は10万円以上の減価償却資産として、数年に渡り足場の購入代金を減価償却処理をしなければいけません。

しかし、足場は複数のパーツで構成されており、一つひとつは10万円に満たないため、パーツごとに少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度が適用され、500万円の全額が損金算入できました。これが、足場リースの節税スキームのしくみです。

たとえば、ある事業年度の利益が3,000万円の会社であれば、足場の購入金額である500万円を全額、費用計上できます。
中小企業者等の場合の法人税は、年間利益の800万円までは15%に減額され、800万円を超える部分は23.2%の税率で計算することとなっています。
足場を購入していなければ、3,000万円がそのまま利益になるので、(800万円×15%)+(2,200万円×23.20%)となり、法人税額は630万円となりますが、足場を購入して全額を損金算入していれば、(800万円×15%)+(1,700万円×23.20%)となり、法人税額は514万円にまで減らすことができるわけです。


今後使えなくなるリースの節税スキーム

足場の節税スキームは、レンタル会社に貸し出したリース代も会社の収益となり、リース期間が終了すれば、売却して売却益を得ることができるのも大きなメリットです。

さらに、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度によって課税の繰り延べが活用でき、リース代や売却益などで収益が膨らんでしまった年度に経費計上することで、利益の圧縮を行なうこともできました。
利益の圧縮は、課税対象額を下げることになり、実質的な節税になります。

そして、この課税の繰り延べを活用するための特例措置等は、足場のほかにもドローンやLEDのリースでも使うことができ、これらの節税スキームは大きな注目を集めました。

しかし、この節税スキームを封じるため、2022年度の税制改正では、貸付用の事業資産について、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度が適用されないことになりました
同様に、一括償却資産の損金算入制度や中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例などに関しても、貸付用の事業資産は除外されます。

ただし、これらのリース業務を主要な事業として行っている場合は、以前と同様に適用されます。
つまり、もともとレンタル会社を営んでいるわけではない一般企業が、節税スキームのために、足場やドローンやLEDなどを購入して、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度などを利用することを禁じるということです。
今後は、足場やドローン、LEDなどを貸し出す節税スキームは使えなくなり、課税の繰り延べも行えません。
別会社にリースするために購入した足場などは、通常の減価償却によって損金算入することになるので注意が必要です。


※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。