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損害賠償の可能性も!? 取締役会を開かない場合のリスクを知る

21.11.22
ビジネス【企業法務】
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取締役会は、株式会社における執務執行の意思決定機関で、会社法により公開会社には設置が義務づけられています。
一方、非公開会社に設置義務はありませんが、会社に関する意思決定を迅速に決定するため、取締役会を設置している会社は少なくありません。
しかし、特に中小企業では取締役会が正しく運用されておらず、形骸化しているケースも見受けられます。
そこで今回は、取締役会を設置するメリットと、取締役会を開催しないリスクについて説明します。
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取締役会を設置するメリット

取締役会は、日常的な業務に関する意思決定を行う重要な機関です。
基本的には、株主総会で任命された3名以上の取締役と、取締役会の業務を監視する監査役で構成されます。
この取締役のなかから1名以上が、会社の代表者となる代表取締役に選出されます。

取締役会の役割は、会社の経営方針や重要事項を決めることです。
会社法362条では、特定の取締役が『重要な財産の処分』や『重要な使用人の選任及び解任』、『重要な組織の設置または変更』、『社債引受人の募集』などについて、取締役会を経ない意思決定を禁止しています。
つまり、取締役会を設置している会社では、1人の取締役が勝手に重要事項を決めることはできないのです。

これは特定の取締役による独断での意思決定を防ぐことになり、経営の健全化にもつながります。

また、株主総会の開催が年に1回なのに対し、取締役会は3カ月に1度の開催が義務づけられており、最低でも年に4回は開催する必要があります。
取締役会では株主総会を開催せずに意思決定が行えるため、緊急のトラブルが起きた際、株主の意向を聞かずに一定範囲の重要事項を決めることができます。

さらに、取締役会を設置している会社は、取締役への監督が機能していると見なされ、金融機関からの融資を受けやすくなるといった信用度の向上が期待できます。

まとめると、『特定の取締役の独断専行を防ぐ』『迅速な意思決定を行える』『会社の信用度が上がる』などが、取締役会を設置するメリットだといえます。

設置や開催には手間がいりますし、役員報酬の負担が増える可能性があるなどデメリットもありますが、会社の拡大を図るのであれば、取締役会の設置は欠かせません。

会社法によって、公開会社には取締役会の設置が義務づけられており、もし、将来的に上場を目指すのであれば、上場前に取締役会を設置する必要があります。
非公開会社に設置義務はありませんが、前述したメリットを踏まえ、取締役会を設置している中小企業も多く存在します。


「開催したことにする」大きなリスク

気をつけなければいけないのは、取締役会を適切に開催しなければリスクを負うことです。
取締役会を設置したにも関わらず、形骸化し、議事録だけを作成して「取締役会を開催したことにしてしまう」企業も存在します。

取締役会は会社の意思決定を司る重要な機関なので、もし、開催に不備や不正があった場合、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
そこで、実際に取締役会を開催していないことが発覚すれば、決定事項が無効になる可能性もあります。
たとえば、特定の取締役が、自分や第三者の利益のために、会社の事業に類する取引を行う『競業取引』や、会社と利益が相反する『利益相反取引』を行う際は、特に注意が必要です。
本来、これらの取引には取締役会での承認が必要になりますが、取締役会を開催せずに取引を行い、損害を出したのちに発覚した場合、損害賠償責任が発生して多額の賠償金を支払わなくてはなりません

また、経営に関する重要な決定事項や代表取締役の選任も、実際に取締役会が開かれていないにも関わらず、決定されていた場合には無効になります。

取締役会は会社の成長・拡大に欠かせない組織ですが、馴れ合いの経営で開催を怠っていると、思いもよらないトラブルが起きてしまう可能性もあります。

開催時期や開催場所に法的な規定はなく、コロナ禍においてはリモートで開催することも可能です。
「開催したことにする」のではなく、実際に開催することが重要といえます。
そして、取締役会を開催する際には、議事録やICレコーダーの音源データなどを残すことも大切です。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。