生きがいラボ株式会社

就業規則の不利益変更を行う際に守るべきルールと注意点

21.03.30
ビジネス【労働法】
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コロナ禍によるテレワーク制度の導入や時短営業などにより、就業規則を変更するケースが増えています。
より働きやすくするための制度の拡充や手当の新設など、従業員の利益になるような変更であれば問題ありませんが、給与の引き下げやボーナスの廃止など、従業員のデメリットとなるような変更を行う場合には注意が必要です。
そこで今回は、『就業規則の不利益変更』を行う際のポイントを解説します。
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合意なしで不利益変更を行う条件とは

就業規則は事業所のルールや労働条件などを記載したものです
常時10人以上の従業員を抱える事業場は就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出る義務
があります。

記載する内容についても、労働基準法に準拠する必要があります。
また、労働契約法第9条で『使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない』と定められている通り、原則的に従業員の合意を得なければ労働者に不利となる就業規則を変更することはできません。

特に、給与の減額や手当・賞与のカット、休日制度・労働時間の変更、福利厚生の変更・廃止など、従業員にデメリットとなる『就業規則の不利益変更』を行う場合には、入念な話し合いが必要です。
就業規則を変更したとしても、従業員の合意がなかった場合は無効になる可能性があり、訴訟に発展してしまう可能性もあります。

ただ、従業員側も自分や家族の生活がかかっているため、合意までたどり着かないケースもあります。

話し合いの長期化は、企業と従業員の双方の負担になってしまいます。
そこで労働契約法の第10条では、特定の条件を満たしている場合には従業員の合意を得ていなくても、就業規則の不利益変更を認めています

その条件とは、不利益変更に『合理的な理由』があり、変更後の就業規則が従業員に『周知されている』場合です。
この二つを満たせば、労働基準法が守られているという前提のもと、従業員の合意なしで、就業規則の不利益変更を行うことが可能になります。


変更を行う際に求められる合理性の判断基準

不利益変更に合理的な理由があるかどうかは、『不利益の程度』『変更の必要性』『内容の相当性』などの条件を満たしているかで判断されます。

不利益の程度については、たとえば給与の減額であれば、変更前と後を比較して、程度が妥当であるか、そうではないかを判断します。
減額の割合が高ければ高いほど、従業員の不利益は大きくなるため、それなりの合理的な理由が必要になります。

また、事業者側がどれだけ不利益の程度を減らすための検討や努力を行ったかという部分も、判断基準になります。
不利益変更を回避する努力をせずに、安易に従業員に負担を強いていた場合には、不利益変更が認められなくなることもあるので注意が必要です。

二つ目の変更の必要性に関しては、なぜ不利益変更をするのかという理由が問われます。
従業員の給与を減額しなければ会社が倒産してしまうなどのひっ迫した状態であれば、必要性があると認められる可能性は大いにあります。
しかし、『同業他社の給与体系に合わせるため』や『従業員を増やしたことにより人件費がかさんでしまうため』などの理由は、不利益変更の根拠にはなりづらいといえます。

三つ目の内容の相当性については、変更後の内容が社会通念上、道理にかなっているかどうかが判断基準となります。
たとえば、一部の社員だけに給与の減額を強いる不公平な変更であれば、相当性は低いと判断されますし、急に大幅な減額を行うのではなく、ある程度の移行期間を設けて段階的に給与を減額していくのであれば、相当性が高いと判断されることが多いといえます。

もし従業員との合意を得られず、裁判になった場合は、これらの合理的な理由と従業員が被る不利益とを比較して、交渉の経緯なども加味したうえで、変更が妥当であるかどうかの判決が下されます。
そして、合理性がないとされた場合には、就業規則を変更することはできません。

一方、不利益変更に合理的な理由があったとしても、変更後の就業規則を従業員に周知していない場合は、不利益変更が認められません。
就業規則を変更する際は、それがどのような変更内容であれ、事業所の見やすい場所に掲示したり、書面で交付したりするなどして、周知の徹底を図りましょう。

事業者側が従業員の合意を得ずに就業規則の不利益変更を行うのは、いわば最終手段です。
会社を倒産させないためであり、従業員を雇い続けるために不利益変更をせざるを得ない場合には、できる限り従業員と協議を重ねたうえで変更しましょう。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。